あらすじ
慶応四年三月。鳥羽・伏見の戦いに勝利した官軍は、徳川慶喜追討令を受け、江戸に迫りつつあった。
軍事取扱の勝海舟は、五万の大軍を率いる西郷隆盛との和議交渉に挑むための決死の策を練っていた。
江戸の町を業火で包み、焼き尽くす「焦土戦術」を切り札として。
和議交渉を実現するため、勝は西郷への手紙を山岡鉄太郎と益満休之助に託す。
二人は敵中を突破し西郷に面会し、非戦の条件を持ち帰る。だが徳川方の結論は、降伏条件を「何一つ受け入れない」というものだった。
三月十四日、運命の日、死を覚悟して西郷と対峙する勝。命がけの「秘策」は発動するのか――。
幕末最大の転換点、「江戸無血開城」。命を賭して成し遂げた二人の“麒麟児”の覚悟と決断を描く、著者渾身の歴史長編。
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Posted by ブクログ
舞台は幕末の江戸大決戦の前夜から江戸の無血開城がなされるまで。幕末ものの物語が多い中、これだけ短い期間を描いている小説は他にないのではないだろうか。登場人物も勝海舟と西郷隆盛という2人の麒麟児を中心とするだけで、そこまで多くを登場させていない。が、それによって、この江戸無血開城という一連のストーリーにより深みを与えている気がした。また、所々で出てくる過去編も無血開城へ向けた交渉の流れを崩すことなく掘り下げられており、とっても面白かった。
勝海舟と西郷隆盛という敵同士ながら思考回路が共通している2人だからこそ、江戸の無血開城がなったのだ。ということを納得させられる小説になっている。
この2人や彼らを取り巻く人物のように現状を理解し問題とその解決策、そして、その次案と言った基本的な物事の解決策、であろう手順の思考をできる人が現代の今の日本にどれだけいるのだろうか。
Posted by ブクログ
勝海舟を主人公に江戸城無血開城を成し遂げた彼と西郷との会談に焦点を当て、その後の成り行きを描いた歴史小説。
うん、えっと有名なエピソードであり、その困難さと偉業はよくわかるのだけど、小説としてここだけを取り出すのは、ちょっと難しかったなあと思った。
なんと言うか、幕末のそれまでの色んなことがあって初めてその場の困難さと、それ故の感動が起こるのだと思うのだよね。
それを端折ってしまうのは、さすがに無理がある。
それこそ長い長い物語の果ての感動が欲しい所だ。
とは言え、江戸無血開城後の細々した出来事にはあまり知らなかったこともあり、興味を持って読み進められた。
まあ、作者には一度幕末を腰を据えて描いてほしいと思う。