あらすじ
ようやく手にした記者の職を手放すと決めた井沢恵子。彼女の耳に飛び込んできたのは、美人作家ともてはやされた梶村久子の訃報だった。ところが、真相を確かめようとすると、次々と不審な点が浮かび上がる。
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Posted by ブクログ
頼りにならない夫と別れた恵子が魑魅魍魎とする出版業界で味わう受難を描いた長編の後編。本作は女流作家梶村の失踪を扱うがお馴染みの殺人とはならない。殺人でないが故に警察も介入せず薄汚い工作が行われている。恵子の義侠心は涼とすべきだが相手も方法もまずかった。ここは現実社会でも参考になるだろう。
昭和30年代の古き良き世界を描いた『三丁目の夕日』という漫画があるが本作はその真逆で昭和30年代の弱肉強食世界を描いているように思う。セクハラだけではなく全てのハラスメント要素があるオールハラスメントともいうべき酷さ。男達の獣欲に閉口しそうになるが悪い意味でもエネルギーには満ちていて高度経済成長(本作は1962年の作品)の何%かの要因と言えそうではある。
ネズミの嫁入りみたいなラストだが、どういう結末かは実際にお読みいただきたい次第である。