あらすじ
周到な計画。何重もの罠。
強固な殺意を阻むのは、故意か、偶然か。
成富歩夏が両親を亡くして十年、後見人だった二十も年上の奥津悠斗と婚約した。
高校時代から関係を迫られていたらしい。
歩夏に想いを寄せる三原一輝は、奥津を殺して彼女を救い出すことを決意。
三原は自らの意思を、奥津の友人で弁護士の芳野友晴に明かす。
犯行の舞台は皆で行くキャンプ場。
毒草、崖、焚き火、暗闇……三原は周到な罠を仕掛けていく。
しかし完璧に見えた彼の計画は、ゲストとして参加した碓氷優佳によって狂い始める。
見届け人を依頼された芳野の前で、二人の戦いが繰り広げられるーー
ベストセラー「名探偵・碓氷優佳」シリーズ第6弾!
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碓氷優佳シリーズとしては約4年ぶり、石持浅海作品としても約2年ぶりの新刊である。200pに満たないお手軽な長さ。何だかんだで手に取ってみる。
毎回、たまたま事件現場に居合わせた優佳によって、すべてが白日の下に晒される。人間味を感じさせない優佳という探偵役は今回も健在だが、シリーズ過去作品と一味違った展開が読みどころだろう。この結末にはそれなりに感心してしまった。というより苦笑したが。
ある理由から、中2で両親を亡くした成富歩夏の後見人になった奥津悠斗。それから10年、20歳差の2人は結婚することになった。歩夏と同年代の三原一輝は、奥津を許せななった。囚われた歩夏を自分が救い出さなければ。
奥津の友人である弁護士、芳野友晴に自らの殺意を告げた三原は、2人の入籍前に実行を決意。三原も具体的計画は聞いていないが、積極的に止める気もない。失恋した上に相手がおっさんだった三原の落胆はわからなくもないけどさ、殺害を決意する方も止めない方もどうかしてるぜっ!
しかも、皆が集まるキャンプで実行するのだ。いいねえ、これぞ石持作品だよ。とはいえ、事故に見せかけた殺害など容易ではない。何しろメンバーには優佳がいるのである。優佳が参加することになった経緯は、いちいち説明しない。
んー、三原なりに必死に考えた計画なんだろうけども、手作り感があるというか、ほのぼのしていて緊迫感がない。優佳は沈黙したままで存在感がない。もっとも、このような展開では、優佳が前面に出ようがないのだけど。
なんとまあ、浮かばれない結末であることよ。平然と言い放つ優佳。ようやく優佳らしい冷徹さを発揮したか。こうなったのはあくまで偶然であり、ここまで計算していたわけではないよね? こうなっても仕方ないとは考えていたかもしれないが。
そして、タイトルに込められた意味とは。最後の一文を、どう解釈するか。
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今回の攻防戦も面白かった。
殺害計画を知ったうえで傍観する人間の視点で物語は進む。
犯人の用意した仕掛けを傍観者が推理するという趣向が面白い。
結局のところ、その罠も碓氷優佳によってさりげなく無効化されてしまうから恐ろしい。
いつもながら展開が読めなくて「そんな結末を迎えるのか!」と驚いた。
そして、またもや予想外のオチが待ち受けていた。
もうホント毎回楽しませてくれる。
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なるほど犯人ではないけど語り手なんだと思っていたが、そういうことだったかと。
このシリーズも、いろいろと工夫が。
楽しめる「論理」というのは、浅海さんの特徴である。ヒロインが、AIみたいなところが、良くも悪くも。
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殺人の決意は知っているけど手段は知らないという主人公が、その方法を推理していくのが面白かった。
今回も優佳の冷徹さが怖い。「因果応報」とか、恐ろしいこと言うし。小春との仲がまだ続いていることが少し意外。
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碓氷優佳シリーズ。思いを寄せる女性が二十も年上の男と結婚することになり、彼女を「解放」するためにその男を殺そうと目論む三原。殺意を打ち明けられ、その犯行を止めることなく見届けることにする芳野。犯行の舞台になるキャンプ場で、三原はいったいどんな手段を使って殺人を実行するのか。息詰まるようなサスペンス感が溢れるミステリ。
三原がいかなる手段を用いようとするのかを考察する芳野の視点から描かれた物語。自らが疑われることなく、できれば事故に見せかけて相手を葬る方法にはどんなものがあるのか。キャンプ場ならではの要素を取り入れた完璧ともいえる計画は、なるほど見事です。なのに優佳によって阻止されてしまうその計画……何も知らなければ偶然のように見えますが。優佳だもの。わざとだよね、これ? 三原にしては忸怩たる思いでしょうね。ほんの少し同情しないでもありません。
犯行計画がどうなってしまうのかも気になるけれど、優佳が一体何を考えているのかも気になるところ。彼女の冷徹さも相変わらずで、そして(いい意味で)すっきりしないこの結末も印象的でした。
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碓氷優佳シリーズの新作。このシリーズは毎回楽しみにしているのだが、今回も引き込まれてしまった。
本作は、殺人の見届け人を頼まれた芳野が語り部。奥津を殺そうとする三原の犯行を想像し想定しながら現場を目撃しようとする過程が描かれる。これがまた面白い。こうなのか、いやこれでは無理だ、それならばこうか?たしかにその方法の可能性が高い!なんて思考を読み進めていく感じ。
そしていよいよ!というところで優佳の登場。さりげなく犯行を阻止していく。本シリーズを読んでいた人間であれば、優佳が三原の殺意を感じ取っていることがわかるので、最後の謎解きを心待ちにしてしまう。でも、三原の動機が薄いのもいつもの感じ。それでもこのシリーズのファンをやめることはできない。
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①なぜ視点人物がこいつなのか
②三原は奥津をどうやって殺すのか
③芳野はどういう展開を望んでいるのか
④優佳は三原の殺意をどうやって知ったのか
⑤なぜペグは残っているのか
⑥君が護りたい人は
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今回は視点が大枠としての犯行を知る人物で要所要所で詳細な犯行について推理する際に結局は正解に辿り着くのですが途中蛇足が多く少し辛かった。特に天ぷらのくだりが。
犯人の末路に優佳はどこまで想定していて、動揺の見えない歩夏はどこまで覚悟して相談をしていたのだろうと思いました。
最後芳野の三原の後を引き継ぐような思考に、三原のは恋心と正義感の暴走という感じでしたが、芳野は歩夏が望んでいない事を知りつつ実行しようというのがタチが悪いなと思いました。
きっとその時も歩夏は鋭く察知できるのではないかと期待しています。
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碓氷優佳シリーズ。
きっと私は順番をバラバラに読んでいると思うのですが、特に今回の作品は最後の優佳の独白のところで性格のドライさが出てたなぁと感じた。
でもとにかくかの弁護士の芳野が最低かな…
理解者にみせて友人達、自分の家族を裏切ってるよなぁ。
でも私はこのシリーズ大好きです!
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旅のお供として。2段組みのくせに字が大きくて、あっという間に読み終わった。つーか、同時期に昔の文庫を借りたので、昔の本って字が小さいよなと思う。老眼にはこっちのタイプが優しいよ。碓井優佳、第5の事件だそうだけど、さっぱり覚えてないわ。いかにも石持浅海な、トリックの理屈、理屈。それにしても無理すぎるでしょ、っていう殺害案が多すぎる。そして、こんなことを考えながら、冷静に他の会話もできるって、語り手・芳野も只者じゃないよね。そしてこういうのがそんなに好きじゃないのに、つい読んじゃう石持浅海。
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碓氷優佳シリーズ。もう何作目になるんだろうか。
今回は優佳の人としての感情が薄いというか、クールというかそーゆー部分が比較的少なて、優佳が苦手な私としては読みやすかった。
ことごとしれっと、計画を潰す様はなかなかだった。
けども、芳野にしても奥津にしてもほのかにしてもちょっと気持ち悪いなぁ。
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碓氷優佳シリーズ。
キャンプ場での殺人を企む犯人に見届け人を頼まれた語り手。殺人の意志だけで詳細な計画を知らされていない語り手がキャンプのあいだ中どのように殺すのかと目を光らせ推理を続けるという、この著者らしい変な話だがなかなか面白かった。次々と繰り出す殺人計画を碓氷優佳がしれっと阻止していくのはさすがである。
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ある日弁護士の芳野はキャンプ仲間の三原から、同じくキャンプ仲間の奥津を不慮の事故に見せ掛けて殺害するが傍観だけしてくれ、と打ち明けられる。殺害の理由は仲間の一人、歩夏が両親死亡後後見人だった20も年上の奥津と無理矢理結婚されられそうだから、と。奥津と歩夏の婚約祝いのキャンプが実行日だと聞いた芳野は当日戦々恐々としていたが、参加者の中には碓氷優佳がいて…。結末の気持ち悪さと優佳の相変わらずさはまあ鉄板。今回は傍観者視点のせいか三原の頭の切れがあまり良くないせいか優佳と犯人との丁々発止のやり取りが堪能出来ず消化不良。芳野の読みも中途半端だし。前作の小春視点の時はそんな事なかったのになぁ。
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これまでの「犯人」「被害者」「遭遇者」を越えて「傍観者」という新たな視点。残念なのは犯人の頭のキレの悪さかな。碓氷優佳と対峙するには物足りなかった。回想シーンは登場人物に深みを持たせるようで人間の傲慢さとエゴと薄っぺらさが強調されるから良い。相変わらず突拍子もないような動機だけど、こんな「非論理的な理由」でも人は罪を犯すという、不気味さも内包しているから面白いのかも。
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すれ違う殺害と愛情と… 秀才達の巧みな駆け引き、緊張感が強烈! 傑作倒叙ミステリー #君が護りたい人は
友人から殺人の意思を聞いたしまった主人公。キャンプ場に集まった仲間たちは楽しい時間を過ごすが、意思を知っている主人公は魂がすり減る舞台でしかなかった。友人は殺害するための作戦を脈々と進めていくが、碓氷優佳の洞察力によって想定外の流れに… 人気倒叙ミステリー、碓氷優佳シリーズの第6弾。
殺害実行の闘争シーンがお見事!
本シリーズの見所ですよね~ どうなるどうなるっていう緊張感でしびれました。読む手がとまりませんでした。しかし主人公はさぞ大変だったろうなぁ~、自分なら仮病でも使ってキャンプに行きません。
そして今回も碓氷優佳は切れ味抜群、相変わらず怖い。
しかし年齢を重ねたかしら、優しさがあふれていて少しだけあったかい気持ちになりました。自分としてはもっと怪物的な冷酷さで犯罪者を切り刻んでいただいてもよいですよ。
本作は登場人物の様々な立場や意識のベクトルがとても興味深いです。
主人公は、犯人、狙われている人、ヒロイン… それぞれの護りたい人、まさにタイトルがすべてを語っていますね。ああ切なき愛情と憎しみのすれ違い。
残念なのは、殺害できるできないのヒリついた描写が既存作品と比較してひまひとつかなと。お話の進め方として主人公目線での進行がメインなので、犯人側の謀略や情念がわかりづらいのが原因かしらと。ただ今回戦っているのは、主人公と優佳だからなぁ~ 難しいですね。
本シリーズ大ファンの自分としてはとても楽しめました、次回作の優佳はいくつになって仕事や家庭はどうなっているんだろう。超期待しています!
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アウトドア用品「アンクル・アンクル」の常連たちで結成された「アンクル会」の一人,三原一輝は、奥津悠斗を次のキャンプで殺害しようとすることを弁護士の芳野に告げていた。芳野は、どうやって殺害をするのかをフル回転させて考えるだけだ。
奥津は当時中学生だった成富歩夏を未成年者後見人として、引き取り、歩夏が就職したことをキッカケに籍を入れることに。次のキャンプはその結婚を祝ってのことだ。しかし、三原は奥津への恩で結婚を無理強いされている思っている。助け出そうとしているのだ。
そして、キャンプ当日、三原は何策もの仕込みをしていたが、全て碓氷優佳によって阻まれてしまう。最後の策を試みた結果、三原は自分の命を落とすことになった。芳野は碓氷に言われた一言によって、自分の心奥底の気持ちに気づき、、、
名探偵碓氷優佳シリーズを他にも読んでみたくなった。
Posted by ブクログ
碓氷優佳シリーズ。
殺人の計画を三原から打ち明けられた弁護士の芳野。
殺人の決行はキャンプ場。
三原が思いを寄せる歩夏は、中学生の時に両親を亡くし、成人となるまで後見人を務めていた20歳年上の奥津と婚約をした。
三原は奥津が歩夏に強制的に関係を迫ったと思い込み、彼を殺す決意をする。
キャンプに参加するのは、芳野、三原、歩夏、奥津の他、奥津と共に両親を亡くした直後から歩夏の面倒を見ていた小春とその友人の優佳など。
果たして、三原はいつどのように奥津を殺すのか?
殺人の計画を打ち明けられた吉野の目線から描かれるので、読んでいるこちらもハラハラドキドキする。
そして、ずっとシリーズを読んでいるファンからすると、出番のほとんどない優佳の存在も不気味。
最初に殺人が起きると宣言し、その手段を推理しながら、物語を進めていくのは、なかなか新しい手法で面白いと思った。
優佳の推理がラストで明かされるが、ここは少し強引な部分も…
しかし、初登場の時は横浜の女子高生だった優佳も30代。舞台も自分の地元の茨城に変わり、時の流れを感じる。火山学者と紹介されているが、普段は何をしているのやら…
Posted by ブクログ
奥津悠斗は後見人として、友人夫婦の遺児・成富歩夏の成長を見守る。二十歳も離れている二人だが、やがて婚約。歩夏に思いを寄せる三原一輝は、奥津を殺して歩夏をその支配から助けようと決意し、奥津の友人・芳野に見届けることを依頼する。しかし、犯行を計画しているキャンプに、ゲストとして参加した碓氷優佳により、三原の計画は狂っていく。
小春と優佳の友情が続いているのは面白い。奥津はどうみてもいい人っぽいので、首を傾げながら読み進めて納得。
優佳の内面が描かれないので、(最後に行動について本人の口から説明されるが)クールビューティさが際立っている。ただの親切ではないと読んだ芳野は自負するように頭がいいのだろうが、ラストは副産物か、意図したところか。優佳はわかっていて放置しそうである。