【感想・ネタバレ】創るためのAI 機械と創造性のはてしない物語のレビュー

あらすじ

Artificial Intelligence(AI)=人工知能を用いたアートや音楽など創作に関する取り組みを題材に、人間の創造性とAIの関係、その未来像について考察した一冊。

社会における注目度が急速に増し、日常の何気ない会話の中にも登場するほど、私たちの生活に浸透しつつあるAI。一方で、AIの実像について理解できている人はそう多くありません。「近いうちにAIが人間の能力を凌駕する」、「AIが仕事を奪う」といった話がマスメディアでまことしやかに囁かれ、「AI時代」を生き抜くために必要な能力を議論する書籍をよく目にするようになりました。機械的な計算を超人的なスピードと正確性でこなすAIに対して、「人間のアドバンテージは機械にはない創造性にある」、「AI時代を生き抜くためには創造性を養う必要がある」、そんな議論もよく耳にします。

本書はこうした話とは、趣旨が大きく異なります。創造性を持つ人間と、持たないAIという二項対立で捉えるのではなく、まずは「機械は創造性を持ち得ない」という先入観を疑ってみることとします。その上で、「AIも人とは違う創造性を持ち得るのではないか」という仮説に基づいて議論を進めます。

AIとは何か。ただの道具か。AIによって人の能力、特に創造性をどのように拡張できるのか。そもそも、創造性とは何か──。機械による模倣が人の創造性を拡張してきた歴史を紐解きながら、世界中で行われている現在進行形の取り組みに注目し、より豊かなAIと創造性の未来を照らし出します。

創造性という極めて人間的な心の働きを、新しい人工物の上で模倣することで、私たち人間の創造性について、新しい視座を得ようとする試みともいえます。AIというレンズを通すことで、創造するという行為が全く新しい姿を見せてくれることに驚くはずです。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 世界初のプログラマが「詞」を理解するアーティストであったように、AIを使った創造に関する研究者がDJなどを自分で行うアーティストというところが本書を象徴している。
 ①AI(人工知能)に対する世間の誤解、②クラブ音楽やその周辺に関するテクノロジーから見た視座、③絵を描く等のヒトの創造と機械によるものの対比が分かる。
 とても乱暴に総括すると、AI技術が発展し人の能力を超える点「シンギュラリティ」により仕事が奪われるということが言われておりコンピュータには「創造性」がないのだから「アート思考」が大事だという風潮があるように思われる。個人的には全く逆だと思っている。創造と言われる活動の多くがディープラーニング等が得意にしている似ているものを探すことと異なる点を分別することにほかならないからである。ある意味のエラーとして発生したイレギュラーに対して意味を見つけることがアーティストの役割だと思う。
 このことから分かるのはアーティストの一部は積極的にこの技術を活用し、より効率的にこれまで見たことがないものを生成(創造)することになるのだと思う。本書はそこに至る歴史について工学的な検知と各芸術に関する知見を組み合わせて編まれた優れた作品だ。
 大量の過去の知見や実験等から得られた情報から一つのインサイトとして結晶化するのが研究だとすると、知識や論理的な思考はもちろんだがアーティスト的な才能によりうまく切り取っていくという行為が大事ということが改めて分かる。それを言語化しているとい意味で本書は貴重である。

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2021年07月23日

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