世界初のプログラマが「詞」を理解するアーティストであったように、AIを使った創造に関する研究者がDJなどを自分で行うアーティストというところが本書を象徴している。
①AI(人工知能)に対する世間の誤解、②クラブ音楽やその周辺に関するテクノロジーから見た視座、③絵を描く等のヒトの創造と機械によるも
...続きを読むのの対比が分かる。
とても乱暴に総括すると、AI技術が発展し人の能力を超える点「シンギュラリティ」により仕事が奪われるということが言われておりコンピュータには「創造性」がないのだから「アート思考」が大事だという風潮があるように思われる。個人的には全く逆だと思っている。創造と言われる活動の多くがディープラーニング等が得意にしている似ているものを探すことと異なる点を分別することにほかならないからである。ある意味のエラーとして発生したイレギュラーに対して意味を見つけることがアーティストの役割だと思う。
このことから分かるのはアーティストの一部は積極的にこの技術を活用し、より効率的にこれまで見たことがないものを生成(創造)することになるのだと思う。本書はそこに至る歴史について工学的な検知と各芸術に関する知見を組み合わせて編まれた優れた作品だ。
大量の過去の知見や実験等から得られた情報から一つのインサイトとして結晶化するのが研究だとすると、知識や論理的な思考はもちろんだがアーティスト的な才能によりうまく切り取っていくという行為が大事ということが改めて分かる。それを言語化しているとい意味で本書は貴重である。