あらすじ
「私はケイト・モスというより、キングコングみたいな女だ。誰も妻にしたり、一緒に子どもをつくったりしないタイプの女。常に自分自身でありすぎる女。そういう立場から私は話している」
■概要
#MeToo運動をきっかけに再注目され、フランスで20万部のベストセラーとなったフェミニズムの名著がついに邦訳!
人気女性作家が17歳の時に経験したレイプ被害と、その後の個人売春の経験をもとに、性暴力、セックスワーク、ポルノグラフィについての独自の理論を展開するフェミニズム・エッセイ。自分自身を、男性でも女性でもないカオスな存在としての「キングコング」にかさね、ジェンダー規範にとらわれない女性の在り方を、力強く、小気味いい文体で模索していく。
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Posted by ブクログ
フェミニズムについて、フランスの本。
気になったところ覚書とつらつら感想。
「無理やり足を開かれても絶対に男を傷つけるなと教える一方で、レイプという犯罪から立ち直ることは絶対にできないと私に吹き込んだ社会に対して怒っている」
本当に、性被害について、社会は、被害者はこう感じるべきを押し付けすぎ。
「傷ついて恥と思って人前で語れる訳が無い」とか。
うるせえクソやろう法の裁きを受けろ、と感じて、全然良いじゃない。
むしろそう感じられる人が増えるよう、社会が変わるべきでは。なぜ被害を受けたのが恥なのか。
「女性の性サービスは無償でなければならない。金は自立を意味する。売春がモラルを乱すのは、女性が家の外で自分で金を稼ぐからだ」
これ、愛あるセックスに至上の価値がある、って価値観にも繋がるかな。合意があれば悪では無くない?
「愛のないセックスは、女にとって常に品位を落とすものだから」
と社会で認識されてるの、それが婚姻制度の中にある夫婦間であれば、愛が無くても、完全な合意すら無くても、問題無い扱いされるのもイヤだよな。
「婚姻は合法的な売春」な話もあって。
表紙も素敵だし、一読をお勧め。
Posted by ブクログ
第3章 堕落しきったこの女をレイプすることはできない
p46
逆に、1960年代のアルジェリア戦争以来フランスの男が戦争に行っていないせいで、「民間人」へのレイプは確実に増加している。
p49
警官どもの法律は、男の法律だ。
p67
レイプはなによりもまず、「男の性欲は本人にはどうすることもできず、男はそれを制御することができない」という認識を伝える媒体の役割を果たす。
p71
本で読んだ通りなら、これはレイプのトラウマよりも戦争のトラウマに近いものだ。死の可能性、死との距離の近さ、非人間的な憎悪を他者から浴びせられること。
第4章 敵と寝る
p115
小説のなかにはたくさんの娼婦が出てくる。モーパッサンの『脂肪の塊』、ゾラの『ナナ』、『罪と罰』のソフィア・セミョーノヴナ、『椿姫』のマルグリット、『レ・ミゼラブル』のファンティーヌ……。彼女たちは人気のある登場人物で、宗教的な意味における反・母だ。
第6章 キングコング・ガール
p160
すべての議論が、私が言ったことが言っていいことだったのかどうかに費やされていた。
第7章 女の子たち、さようなら。よい旅を
p197
女は永遠の外国人だ。
訳者あとがき
p203
「特権とは、そのことを考えるか考えないかの選択肢を持っていること。私は、自分が女であることを忘れることはできないが、自分が白人であるということを忘れることができる。それが白人であるということだ」
著者の来歴、バックグラウンドに触れる前に本を手に取りました。頻繁に取り沙汰される『ベーゼ・モア』も未読、未視聴でしたが楽しく読むことができました。
そもそもエッセイは作者が好きな人や作者の考えに共感する、強く頷きたいという人が読む、というイメージ。あとは自分のようなフェミニズムに興味関心がありつつも色眼鏡で読み始める人。そういうのをすべて蹴散らすような容赦ない暴力的な文章。パンクというのか、それでいてときおり引用される作家や作品名には舌を巻く。
日本国内では生まれにくいものを読んでいることを感じながらも、こうして邦訳されたことに強い意味がある。エッセイは、作者の言動すべてに同意するのではなく、こういう考え方もアリなのだ、という気づきが重要だと感じています。ことフェミニズムやBLMなどの社会問題では、アリナシ以前に今までの男や女や社会の醜さ、愚かさを書き殴り、語られています。
最近言われがちですが、今はアウト、という言葉があって、実際は最初からずっと前からアウトだけどと思わなくもない。ヘラヘラせず、ただ理解を示すだけが何かの免罪符にならないように。忘れることの愚かさを私は覚えていたいと強く思いました。