あらすじ
小説家の織部妙は順調にキャリアを積む一方、どこか退屈さも感じていた。そんなある日、“美人作家”として話題の新人、橋本さなぎの処女作に衝撃を受ける。しかし、文学賞のパーティで対面した橋本の完璧すぎる受け答えに、なぜか幻滅してしまう。織部の興味を惹いたのは、橋本の秘書である初芝祐という女性だった。初芝への気持ちを持て余す織部は、やがて「橋本さなぎ」の存在に違和感を抱くようになる。その小さな疑惑は開けてはならない、女同士の満たされぬ欲望の渦への入り口だった……。「第13回エキナカ書店大賞」受賞作家の最新作。
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面白くてスラスラと読み進めた。
女性の三角関係を描いた物語は初めてだったので新鮮でドキドキした。
作家の才能に溢れいるのに、自分の容姿に自信がない初芝は、咲子というアバターを利用して本当の姿を隠しながら作家活動をしている。自分の姿を曝け出せずにいる蛹だった。
物語が進むうちに、咲子も自分の容姿のせいで辛い人生を送ってきたことが明らかになる。美しい容姿を有しているが他に才能なさがないと思っている彼女は、誰かに依存(寄生)しないと生きていけない。自分がしたいことをする、自由な生き方がわからない蛹だ。
一方主人公の妙は容姿端麗、本も売れ続けていて作家として活躍している。彼女の目線で蛹たちがどう変化していくかが描かれている。そして読み手からすると、この3人の対比が面白かった。
個人的には妙に本当に愛せる人が見つかって、幸せに生きてほしいと思う。
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こんな話だったとは。レズビアンサスペンスだった。レズビアンである小説家の妙は、美貌の新人小説家さなぎを紹介される。妙は、美しいさなぎよりも朴訥とした彼女の秘書、祐に一目惚れする。祐と親しくなりたい妙だが、やがて彼女たちに違和感を持ち始める。期待していたミステリー要素は途中で雲散霧消してしまったものの、かなり好きな話だった。妙・さなぎ・祐の3人の女性陣の対比に惹きつけられたし、始めは存在感の薄いさなぎが、最後まで読むとしっかり巻き返してきたのが意外で意表をつかれた。人を選ぶかもしれないが私は面白く読めた。
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小説家2人とその秘書との女3人の恋物語。
主人公、妙の素直な心情が痛く切ない。
「いつも、わたしが誰かを本当に愛しはじめるのは、すべてが手遅れになってからなのだ」
この気持ちはすごく分かる。
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最後まで、読んでしまいたい
そう感じて、一夜で読み進めてしまった作品
まるで妙自信が書いた、自伝のような。
そう思わせるほど、入り込まされた。
生きているだけで、難しい。
人はみんな無い物ねだりをしてしまう。
自由に。望んだままに生きられたら。
純粋に。人を傷つけあわずに、生きられたらいいのに。
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サラッと読み始められるが、しっかりと物語に入れて好きなタイプのお話だった。
主人公は、容姿にも恵まれ小説家としても成功してる「織部」を巻き込んで起きるお話。彼女、恋愛対象は女性。彼女の恋心が、一人の美人で異性受け抜群の新人作家の秘密に巻き込まれていく様が、読んでいて「あ〜」という感想の元進んでいった。
小説の内容は興味深かったが、何より登場する料理の描写がたまらん!
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誰もに勧めるものではないけれど、私は面白く引き込まれた。
レズの話だけれど、生々しさはなくサクッと読める。主人公に北川景子か菜々緒、主人公が好きになる赤ちゃんみたいな白いぷくぷくした初芝は富田望美、美人過ぎて薄幸な速水は今田美桜かなぁ。トリリオンゲームに引っ張られてるかなぁ。
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小説家である織部妙は、新人小説家の橋本さなぎという綺麗な女性を紹介される。
織部は、橋本さなぎの本に夢中になるが、紹介された橋本本人が、本の印象とは違うことに違和感を抱く。この人がこの本を書くのか?という違和感、わかる気がする。
暗く不条理な、そんな小説を書いている女性がホステス風だと、なんかイメージ違ったなってなりそうだ。この本では、織部以外の人は橋本さなぎに違和感を抱いていない様子なのは、単に「美人だからいっか」と美人は許されるということなのか、橋本さなぎの文体を初芝祐のような太った女性が書いていることを笑うのが主流だからなのか…。私には分からない。
でも確かに、小説家について見た目と作風をからめて嘲笑する人々がいることは知ってる。私の家族がそうだったからだ(某氏の美女シリーズとか、中身読んだこともないのに色々言ってた)。
橋本さなぎを構成するふたりの女性の間で揺れ動く織部。
レズビアン女性の恋愛観についても、知らない世界を読ませるのがとても上手な近藤史恵さんだ。
織部が初芝と親しくしているときは、初芝が謎めいて見えたし、その後速水と親しくなりつつあるときは速水が謎めいて(ぬるりと生活に入り込んでくる感じが…)感じた。
でも実際には、本当はふたりともそんなにミステリアスな存在ではなかったのだろう。読み終わったあと、織部が、ふたりのことを思いたいようにフィルターをかけて思っただけだったような気がした。
難しく考えすぎてはいけないのだ、何事も。私自身にとっても、教訓のような、戒めのような。
でも恋愛となると、冷静になるの難しいよね。
好きな人が何を考えているのか?あれってれどういう意味だったのか?と、ついつい、深読みしてしまう。
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全部わかったように他人にアドバイスしたり判断したり委ねたり出来るのに自分の事が一番わからない。
最後の一文が全てだと思った。
見た目も性格も才能も見る角度で随分と変わるもんだな。
人の持つそれぞれの傷をきちんと受け止める織部さんはいいと思う。
初芝さんのようなこちらの内面を静かに抉ってくるような本は実は苦手です。
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小説家のわたし、織部妙。「虫が好きな子供だった」から始まる。だから「橋本さなぎ」というペンネームの作家に興味を持ち、会う機会にも恵まれる。橋本さなぎの作品『やさしいいきもの』を夢中になって読み、その作品と、会った本人に違和感を感じる。こういう勘は当たるもので、読み進めるうちにやっぱりと思う。やっぱりとは思うのだが、話がどこにいこうとしているのかはわからず、最後の文章も、「いつだって、自分のことがいちばんよくわからないのだ。」で終わる。
それにしても、素敵な表紙だ。装画 平野実穂。淡い色の髪に花や蝶を描き、虚ろな表情の女性のなまめかしさ、ずっと見ていたくなる絵がこの本を物語っている気がする。
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ひとは完璧を求める。自分には無いものを欲張る。その狭間で生きる女性の苦しさを考えさせられました。
複雑な関係や気持ちにどこか惹かれてしまうお話。
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楽しめて読めた。皆無いものねだりだが、咲子と祐は自分自身を受け入れ、飛び立つ事を選択出来て良かったと思う。主人公は自身が容姿も、ある程度の才能もありながら器用貧乏なのかも。
個人的には祐が織部のレズビアンを聞いても驚きもせず、冷静なキャラクターに見え、1番芯がしっかりして好きだ。
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他の本を読んでたけど、合間に少しだけ読もうと思って読み始めたら、引き込まれてというか、引きずり込まれたように読み切ってしまった。決して楽しくはないけれど気になっていられない感覚。
3人の女性たちのそれぞれに共感できたりできなかったり。
「いつだって、自分のことがいちばんよくわからないのだ」
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文学賞のパーティで新人作家のさなぎとその秘書・祐と出会った。レズの妙は祐に一目惚れし、なんとか近づこうとする様が面白い。中盤で実はさなぎがゴーストであり祐が小説を書いていた。あまりドロドロの関係にならず、わりとスッキリしてた。
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ほぼ全部の著作を読んできて、今回少し引っかかったのは、坂下のアカウントの件が宙ぶらりんなままで終わった(はっきり決着が着くような描写がなかった)ところ。
今まで伏線回収されなかったことなどなかったのになぁ。
あと、みんな「レズビアンの話」って書いてるけど、違うと思う。これは「作家の話」。
近藤先生は容姿の整った女性の心理を描くのがあまり得意ではないのかなと前から思っていたけど、今回もその傾向が。ちょっと勿体無い。
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近藤さんにこのようなタッチがあるんかと意外性を感じた。
けれど、まさに蝶の蛹∼軽やかで妖しげで、可愛くもあり、いじめたくもあり・・なんて。
最期への持って行き方、まぁ、速水は最初から本音としてはプランA で行きたかったんだろうなと思わせられる。
だって力があって、行ける人だし。
好き嫌いの出そうな作風、中身でした。
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同性愛は苦手です
差別だとは思いますが、特に男性は。
このお話は女性だから読めました。
主人公がいい性格をしていて、時折心の中で出る暴言に冒頭はスカッとしました。
近藤さんの新たな挑戦?にように思います。
なかなか面白かったです。
でも、好き嫌いはありそう。
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近藤史恵さん、たぶん初読みです。「夜の向こうの蛹たち」、2020.6発行。女性作家織部妙と女性作家たち(作家初芝祐と秘書速水咲子)のレズビアン(三角関係?)を扱った作品でしょうか・・・。読みやすかったですが、女性心理は難しかったです。
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主人公の織部妙が文学賞のパーティで新人作家・橋本さなぎと、秘書・初芝祐と出会う所から三人の女性の物語が展開して行く。
小説家として順調にキャリアを積み容姿に恵まれたレズビアンの妙と、新人ながら処女作『やさしいいきもの』が話題になり凄い美人と称される橋本さなぎ、この二人に対して顔面にも体型にもコンプレックスを持つ初芝祐の存在が不穏な空気を作り出している。
さなぎと祐に隠された秘密、妙の恋愛感情、其々が其々の欲を満たす為に行動するも少しずつズレが生じ誤解を生む。
黒でも白でもないアンニュイな空気感を醸し出していた。
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小説家の織部妙は、今話題の小説"やさしいいきもの"を読み、内容の面白さや、美人という事にも"橋本さなぎ"と言うペンネームも、やけに目についてしまった。
ある日妙は、文学賞のパーティーで、対面した橋本さなきの完璧すぎる受け答えに、幻滅した。
反対に、興味を覚えたのは、決して美人とは言い難い、橋本の秘書の初芝祐という女性だった。
やがて妙は「橋本さなぎ」の存在に違和感を抱くようになる。
同性愛者で、不器用な恋しかできない女性。
才能はあるのに、容姿に劣等感を持つ女性。
誰かに寄生しないと生きられない女性。
三人の女性が繰り広げる物語。
ちょっと、理解できない世界だった。
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小説家でレズビアンの織部が、新人賞を取った橋本さなぎに興味を持って関わっていく様子。
パーティーで出会った橋本さなぎは誰が見ても美しく、明るい愛想で溢れていた。
同じ場所にいたのは橋本さなぎの秘書という、橋本と容姿が真逆の初芝だった。
華やかな橋本よりも、地味だけど自然な本音を言ってくれる
初芝に織部は惹かれていくが
橋本と初芝には二人だけの秘密があった。
ネタバレ。
小説を書いているのは初芝で、橋本さなぎを外で演じているのは速水という名前。
二人とも外見にコンプレックスを持ちながら生きている。
最後が清々しい感じ。
自分らしく生きていくと決めた二人の決意が気持ちい。
同性愛者の人がすぐいろんな人を性的な目で見てるみたいな感じが強くて、大丈夫かなあとも思ったのです。
Posted by ブクログ
容姿が人に与える印象って大きいんだなぁ。
たしかに、この本書いてる人ってどんな人だろう〜
と気になって調べて、エッ!?なる事たまにあったな
レズビアンな女子の複雑な関係の話だった
Posted by ブクログ
近藤さん、ブランドの『はなれわざ』は意識してるのかな。
大人の肉体的関係を伴った百合は、初めて読んだかも。海外なら、捜査官ケイトシリーズとかあったけど。
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キャリアを積んだ中堅どころの美人小説家
魅力的な小説を描く美人新人小説家とその秘書
少しずつ満たされない女たち
女が3人
2人が美人で1人が才能豊か
誰かが何かを仕掛けてくるんじゃないかとハラハラしながら読み進めるも案外平和的に終わった
ドロドロしたイヤミスを勝手に想像してしまったから少し拍子抜け
同じ設定で湊かなえ目線のも読んでみたいなぁとやっぱりドロドロさせたいらしい
Posted by ブクログ
もっとドロドロした展開なのかと思って、かなり身構えて読んだけど(笑) みんな案外良い人で、素直な人達だった。容姿をとやかく言うなって言うけど、結局、容姿で判断されがちだよねぇ。みんな頑張ってほしいなぁ。
Posted by ブクログ
女同士の愛憎模様を描いた物語です。カラッとした性格の主人公が、新人作家とその秘書に動揺し振り回されていくさまがどこか生々しく描かれています。
作者らしいさっぱりとした筆致なので、実情の泥沼さよりも随分受ける印象はからりとしています。
容貌が持つ利益不利益をからりと暴き、性癖がもたらす選択のいびつさを描き出して、恵まれているようでそうではない部分を抱えつづける、生きにくい彼女たちの姿が印象に残りました。どんな人でも、100%の満足を抱えて生きていることなんてありえなくて、どこかでなにかに折り合いをつけつつ日々を進むしかない。その諦めを受け入れることも、生きる上で、人それぞれが日々繰り返していることなのだろうか、と思ったのでした。