あらすじ
世界に真剣勝負を挑んだ「最初の男」は、寄せ集めの代表チームを、いかにして闘争集団「ジャパン」へと変革したのか――。戦場から生還後、母校・早大のラグビー復興と教育に精力を注ぎ、日本代表監督としてオールブラックス・ジュニアを撃破。ラグビーの母国・イングランドに初めて臨んだ代表戦では3対6の大接戦を演じた、戦後ラグビー界伝説の指導者・大西鐵之祐。闘争のただなかから反戦思想を唱え続けた男の79年の生涯を描いた傑作。第12回「ミズノスポーツライター賞」受賞作。カバーデザイン/Kotaro Ishibashi。解説/釜谷一平
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Posted by ブクログ
(2016/12/31)
2015年にエディジャパンが成し遂げたワールドカップでの活躍の大本となっている理論は、
実はそれより数十年前に大西鐵之祐が構築していた、ということがわかる。
海外の理論をそのまま取り入れても、体格の劣る日本人が海外勢に勝てるわけがない。
日本は日本の特性である勤勉性や重心の低さを活かして、敵に勝つ方法を考えよ、
エディのいうジャパンウエイを、大西はとっくに実行していた。
それが1971年のジャパンの伝説のイングランドとの死闘であり、
1968年のオールブラックスジュニアへの勝利だった。
かつて日本は世界に通用していたのだ。
もう一人、世界に通用した監督は1989年にスコットランドを破った宿澤広朗。
大西、宿沢、エディ。
ここにもう一人、今年亡くなった平尾を入れたかったが、、、
ジェイミーがここに加わるのだろうか。
あるいは今後、清宮が入るのだろうか。
どうすれば勝てるか。
そのためには必死に相手を研究、分析して、
狙いを定めたら今度は自分のチームを構築する。
ここにはこういう選手が必要。
必ずしもエースである必要はない。
いやむしろエースはいらない。数人いればいい。
これだけが出来れば、という専門職がいればいい。
そこを鍛え上げて、対戦する。
そして最後は気合。
これがなければどんな準備してもだめ。
そのあたりが著者、私が好きな藤島大さんがタイトルにした「知と熱」に現れているのだろう。
しっかり知的に分析しつつ、熱い!
ジェイミーはそういうタイプではなさそうだが、
来年、ハイランダーズとの契約を終え、日本代表コーチとして定着してくれるトニー・ブラウンに期待する。
ところで、、、
戦前は日本代表=早慶明に法政が中心だったことが描かれている。
社会人スポーツがまだ立ち上がっていない時代、国内スポーツの中心は大学だったのだ。
まだその栄光が忘れられない人たちが御存命。
プライドがあるのだろう。
しかし今はもう違う。
多くの学生にとってラグビー部は就職の一手段。
大西氏も悩んだ「プロ化」の正反対で、
地獄の特訓などノーサンキューなのだろう。
ローソンの玉塚氏はラグビーの経験が今のビジネスの基本的考えになっているという。
そうなんだろうなーと想像する。
スポーツと人生。
必要なものだと思う。
スポーツを通じて平和を築く。フェアネスでなくジャスティス。やっていいこと悪いことを判断する。。
大西氏の考えに賛成だ。
藤島さんもどこかのコーチになるといいと思うが、、。
インゴール組―楕円球にしがみついて
戦前のラグビー―「ゆさぶり」対「押しまくり」
ま、銃で撃つんだが―「闘争の倫理」の原点
「展開、接近、連続」―オールブラックス・ジュニア戦勝利まで
歴史の創造者たれ―母国イングランドとの死闘
接近の極致―横井章
テツノスケに教わったんや―小笠原博
デューイを突き抜ける―勝負の哲学
大西アマチュアリズム―決闘の渦中から
体協の名場面―モスクワ五輪ボイコットをめぐって
鉄になる―ドスの青春
愛情と冷徹、信頼と独断―魔術の実相
Posted by ブクログ
「幸せでした。早稲田のキャプテンやって優勝た時は幸せすぎて死んでもいいと思った」
柯子彰
文中にある言葉です。
この瞬間、自分は世界で一番幸せだと思えたらこんな素晴らしいことはありませんね。
好きな箇所
早稲田大学スポーツ社会学の教授でもあった大西鐡之祐の講義の1場面
『今日文学部のスロープを上がってくるとき、授業を終えて坂を下りてくる女子学生に声をかけたやつはおるか?』
ざわつく教室。
『そこで、ええ娘やなあ、思うたら声をかけるんや。それで、お茶でも飲んで、語り合って。もう、みんなの年齢なら、はっと、いいなあ思ったら決まりだ。それをする人間と、しない人間では、全然、人生が違うんだ』
早稲田大学や、日本代表のラグビーの名監督 大西鐡之祐を描いた熱血の書。
『信は力なり』も大西さんの言葉
何度も読んでる名著です。
Posted by ブクログ
日本ラグビーの功労者として、どうしてもエディさんと比較しながら読んでしまう。
2人の偉大なコーチには共通点が多く、大変興味深かった。
教え子が大西鐵之祐を評した「100の理屈を教え込んで、101番目に『理屈じゃない』と断言できる人」という言葉が印象的。
Posted by ブクログ
日本ラグビーの黎明期にラグビーを始め、当時は大学対抗など国内での試合がメインであった日本ラグビー界に日本代表チームの存在を打ち立て、海外の代表や大学チームとの試合にも実績を残した指導者、大西鐵之祐氏のラグビー人生と、ラグビーに対する哲学をまとめたノンフィクション。
ラグビーに限らず、スポーツとは何か、なぜ勝ちにこだわるのか、といったスポーツに纏わる普遍的な問いに対する大西氏の哲学が、様々なシチュエーションでの大西氏の言葉で綴られいます。以下、本書抜粋
「スポーツにおける闘争を教育上重要視するのは、ラグビーで今この敵の頭を蹴っていったら勝てるというような場合、ちょっと待て、それはきたないことだ、と心の葛藤を自分でコントロールできること、これがスポーツの教育的価値ではないか」、「ラグビーは楽しく愉快にやるべきものだが、それは散歩やハイキングの楽しさではない。それはエベレストを目標として辛苦を耐え、頂上を極める楽しさである」
”勝つ”ための心構えとしての提言にも興味深い発言が。
「戦法に絶対はない。だが、絶対を信じないチームは敗北する」、「優れた理論を有し、厳しい鍛錬を重ね、チームワークを整えても、闘志を欠けば敗れる。”野獣的闘志”をたぎらせても、こうすれば勝てるという理論が無くては勝利にありつけない。さらに、闘志に満ちて、理論にも優れ、技術と体力に長けようとも、モラルを欠いては勝者にはなれない」等々。
勝つためには「科学(理論面)と非科学(精神面)の統一」が重要であるとの事で、大西氏の指導を受けたOB氏が「百の理屈を教えこんで、百一番目には理屈じゃないと断言できる人」と評されています。
オリンピックを含め、スポーツとお金との結びつきが非常に複雑に絡んでいる今、改めてスポーツをすることの意義など原点に戻る視点が挙げられています。スポーツに関わっている学生の人たち、社会に出てから行動する上で指針となるべき考えを再確認したい人にも、お勧めできる1冊と感じました。本書は『第12回ミズノスポーツライター賞』受賞作です。