あらすじ
炎上、不謹慎狩り、不倫叩き、ハラスメント…
世の中に渦巻く「許せない」感情の暴走は、
脳の構造が引き起こしていた!
人の脳は、裏切り者や社会のルールから外れた人など、わかりやすい攻撃対象を見つけ、
罰することに快感を覚えるようにできています。
この快楽にはまってしまうと、簡単には抜け出せなくなり、罰する対象を常に探し求め、
決して人を許せないようになってしまいます。
著者は、この状態を正義に溺れてしまった中毒状態、「正義中毒」と呼んでいます。
これは、脳に備わっている仕組みであるため、誰しもが陥ってしまう可能性があるのです。
他人の過ちを糾弾し、ひとときの快楽を得られたとしても、日々誰かの言動にイライラし、必要以上の怒りや憎しみを感じながら生きるのは、苦しいことです。
本書では、「人を許せない」という感情がどのように生まれるのか、その発露の仕組みを脳科学の観点から解き明かしていきます。
「なぜ私は、私の脳は、許せないと思ってしまうのか」を知ることにより、自分や自分と異なる他者を理解し、心穏やかに生きるヒントを探っていきます。
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Posted by ブクログ
本書の内容とは関係ないですが表紙の中野先生が美しいです。
本書を読んでも他人を許せるようにはなりませんが、昨今散見する正義中毒についての考察・解説が興味深いです。
「実は人間である以上正義中毒はどうしようもない」そうですよ。でもそれを激しく表明する人とあんまり表明しない人と全く何しない人は結構分かれる。
本書を読んだほうがいいだろう人ほどこういう本は手に取らないですよね多分。そこが残念w
脳の成人年齢は30歳、脳を吹けさせないためにできることは、など他にも興味深い話題が盛り込まれています。
Posted by ブクログ
「正義」を振りかざし他者を攻撃するとドーパミンが放出し快楽を感じる。
その快楽に浸ってしまわないためには自己を客観視するメタ認知が重要である。
メタ認知能力は脳の前頭前野の機能であり、その機能は30歳をピークに劣化するので、いかに劣化させないかが課題。
前頭前野トレーニングには、新しい要素のインプットとフィードバックが有効なので心がけよう、そのためには余裕が必要なので、タイムマネジメントや心身の管理を怠らないこと。
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自分を省みても、余裕が無い時にはついイライラしてしまうことがあったので、本当に余裕は大事だなと痛感。
過去の自分の感情に「あのとき自分は傷ついていたんだ/怒っていたんだ」などと遅れて気づくことがあったが、なるだけリアルタイムあるいはそれに近い形で自覚できるにこしたことはない。
メタ認知は意識的に訓練していかないと育たないので心がけよう。
年齢を重ねるほどに保守的になりがちだが、新しい要素を意図的に取り入れて行くようにしよう、と思った。とはいえ「しなければ!」ではなく、自分の好奇心や気分をのぞき込みつつ楽しんでいきたい。
また、本書で得た知識により、
ネガティブな感情を不当に周囲にばら撒く他人のことを「好きで怒ってるんだなあ」
と俯瞰して見ることができる、というのはストレス回避策として有用かも。
落語でいうと「小言幸兵衛」「かんしゃく」など。
説教、小言、愚痴、批判が趣味や楽しみになってしまっている人っているよね。
そうならないように気をつけようっと。
<箇条書きメモ>
・人の脳はそもそも他者と対立するようにできている
・「正義」を振りかざして他者を攻撃する時ドーパミンが放出=快楽
・自分は正しい(確証バイアス)の危うさ(自分のバイアスを疑おう)
・自己の感情コントロールには「メタ認知(前頭前野の機能)」が重要
└客観視することから始まる制御
・自分にも他人にも「一貫性」を求めない
・安易にカテゴライズやレッテル貼りをしない(理解が止まる)
・前頭前野は30歳をピークに老化が始まる
・前頭前野のトレーニングには「新しい要素のインプット」と「フィードバック」が有効
・余裕(時間、体力、睡眠)が大事
・マインドフルネスも有効
Posted by ブクログ
そもそも脳の構造として他人を罰することは快楽になるドーパミンが発生する。
逆に相手を許せない自分を許せない自己矛盾も抱える。
【日本における正義】
・正義は国により異なる。
欧州のように人や文化が往来してきた国では、対等な人として意見を議論させてきた。
→一方日本は単一民族であるからこそ、和を乱す事を極端に避ける文化があり、「優秀な愚か者」の国と言える。
【なぜ人は他人を許せないのか】
★結論をいえば、脳の構造がそうだから
・脳のドーパミン受容体により異なるものの、基本的には安心安全な現状維持を好むもの。
→よってリベラルは保守に勝つ事が難しい。
★他人を受け入れるのは、前頭葉の一部が発達する25〜30歳でなければ難しく、また衰えも早い。
★脳は白黒ハッキリつけたがる
・物事の良し悪しをハッキリさせることは、脳の省力化に繋がる(逆に言えば、脳がズルをしている)
→しかも、相手を罰すればドーパミンが出て一石二鳥!
★イングループバイアス
自分が所属する集団に好意的・協力的になること。
→逆に所属するしない集団に非協力的になることも。
→外集団からの批判を攻撃と見做して、内集団の結束を高めることもできる。
※「一貫性の原理」の罠
人間は今までの自分と同じように振る舞わなければならないという「根拠なき思い込み」に無意識に縛られる。
→★人間自身、本当は一貫した生き物ではない。
→矛盾を抱え、自己嫌悪するくらいなら割り切ろう。
【正義中毒への対処法】
★まず、自分が中毒状態にあるかを把握する。
→どのような場面で怒りを感じるか列挙しておく?
→気づいたらひと呼吸置く。
→他人に構えるだけの余裕があると理解する。
★自己批判は不要。そもそもヒトはそういう生き物。
→「自分にはこの傾向があるから、今後こうしよう」という肯定的な反応をする。
★新しいこと良さを知る。チャレンジをする。
→「昔は良かった」は脳が衰えてきたサイン。
【正義中毒からの開放】
・正義中毒からの開放においては、30歳前後をピークとする前頭前野の成長が不可欠。
→それには相応の刺激が重要であり、また衰退も早いことからも成長・老化防止のためのトレーニングが必要。
(脳を老けさせないトレーニング)
①新しい体験をする
道、店、食べ物、本などなんでもOK!
※マインドフルネスもメタ認知に繋がる
②不安定・過酷な環境に身を置く
安定した環境では「維持」が目的となってしまう。
※致命的でない失敗をどれだけできるか?
③安易にレッテル貼りしない
→「自分の偏見(判断)だけどね」を口癖に?
④余裕を大切にする
理性的になるにはそもそも余裕が必要。
→時間、睡眠、心身の余裕、選択のメリハリなど
※通勤時間は短いほど良い
(生活習慣)
①食事:オメガ3脂肪酸を積極的に摂る
→前頭前野の髄鞘化に欠かせない!
②睡眠 :✗睡眠不足、スキマ時間に昼寝を
→年を取るとメラトニンの分解が効率的にできる
→元となるセロトニンを増やすため日光浴や運動を!
③考え方(メタ認知)
★まずは「人を許せない、馬鹿にする自分や他者はヒトという構造上仕方ない」と認める!
★自分も他人も一貫性はない。
★結局人間は不完全で、永遠に完成することはない。
→遺伝的要因よりも、実は環境要因の方が大きい。
→白黒ハッキリつけず多くの人と共存。
→★答えよりも他人と思考するプロセスが大事。
★その人にあまり関心がない人が、スキャンダル等あった瞬間に憎悪を向けるのは正義中毒の典型!!
→「どうでもいい」が他人との最適な距離?