【感想・ネタバレ】齋藤孝のざっくり!世界史――歴史を突き動かす「5つのパワー」とはのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

知人に薦められ、借りる予定をしていたが、その知人が渡英し1年間帰ってこないというので、我慢できずに購入した本(笑)

レビューに入る前に。
2008年に発売された本なので、まだアップルがマイクロソフトに完全に負かされたと表現されている部分があり、現代における変化のはやさを感じた。だって、いまはアップルという巨大モンスターが人々の潜在的ニーズを探り当て、見事に大成功しているじゃないですか!たった4、5年前とこんなにも情勢が変わっていくのは、グローバリズムの象徴か。つまり、これと同じ原理でいけば、4、5年後の世界がどうなっていくかは、わからんということですな。

では、蛇足から入ってしまいましたが、本編全体の感想を。

文庫本であるという読み易さも加味して、面白い内容でした。
世界史は昔から好きだったのですが、やはり暗記科目であるという趣が強く、○○年にこんなことが起きて、○○という人が●●という場所を征服して、、、と、ということを覚えることが重要。

そんな世界史を、もっと横と縦のつながりを重視して5つのキーワードでまとめたのが本書。学問としては、社会や文化や経済は区切られていますが、実際には人間社会の中では一緒くたになっているもの。それぞれが影響し合うのは当然のことで、プラス、様々な国が交流していくことで、世界史のダイナミズムがうまれていく。そんなことを感じさせてくれる本でした。世界史がそもそも好きな人にとっても面白い本だと思います。

その中でも特に面白かったのが、第3章「欲望の世界史」内のコーヒーの話と、第4章「世界史に現れたモンスターたち」内の資本主義と社会主義の違い、についてです。

コーヒーの話ですが、そもそもコーヒーを飲み始めたのはイスラム圏でした。そこから17世紀ごろヨーロッパへひろがっていくのですが、その広め方として、人々の持っていなかった欲望を商人たちが「理性のリキュール」「理性を目覚めさせる飲み物」といったことばで、コーヒーへの欲望を意図的につくり出し、その後コーヒーはヨーロッパ世界を席巻します。この理性ということばと結びついた飲み物を飲みながら人々が語らうことで、近代的な考え方や発想とつながっていった、理性的であることの象徴となったのです。これがフランス革命につながっていったなんてことも言い過ぎではないと感じました。どうしても政治・経済・文化で語られがちの世界史ですが、実はこうした「モノ」が人々の意識や行動に変化を起こすことで、世界史的にも大きなインパクトを残すことがあるんですね。実に興味深い。

では次に、資本主義と社会主義の違いですが、齋藤氏は簡潔にこう述べています。「自然発生的なものと人工的なもの」。分かり易すぎて目から鱗でした。これまでざっくりと感じていたものを見事に分かり易く、表現しています。社会主義というのは、あまりにも理想的過ぎてしまい、理論上は上手くいくとしても、実際に人間が運用し始めると全く上手くいかなくなってしまう。結局人間は、理想的なシステムをつくれたとしても、それを実現することはできないのです。一方、だからといって資本主義が完璧な社会体制かというとそうではないですね。どちらかというと、「これしかないから」という消去法的な選択なのではないかと。現状においてはこの資本主義で進んでいくことがベストなんだろうけど、その資本主義という網目の中から、こぼれ落ちてしまった、「弱っている人たち」をどう考え、どう救っていくのか、といった視点は少なくとも持っていたいと、改めて感じました。

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2012年03月18日

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