【感想・ネタバレ】「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。のレビュー

あらすじ

性暴力被害、痴漢犯罪、年齢差別、ジェンダー格差、女性蔑視CM、#metoo...多くの人がフタをする問題を取材し、発信し、声をあげ続けるライター・小川たまか初の著書。2016年から2018年に起きた、性犯罪やそれにまつわる世論、性犯罪刑法改正、ジェンダー炎上案件などを取り上げ、発信してきた記録です。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

勉強になりました。私の過去を思い出しながら読み進めてました。

特に共感した言葉が「「ほとんどがいい人なんだから、一部の過剰反応を気にして対処を行う必要はない」ことにするのは大人の責任放棄」です。ジェンダーレストイレの件についてたまたまテレビでコメントしていた人が似たようなことを言っていて「何言ってんだこの人」と怒りや悲しさ、悔しさを感じました。たった一部の異常な心理によって性被害に遭っている人たちがいるのに「そういう事件は滅多にないことなので気にする必要がない」というようなことを言ってました。この人やこの人と同じような考えをする人たちには被害者の存在が「ほとんどない」ことにされているんでしょうね。

何度も読めば今以上に理解が深まると思うので時間をあけて再読予定です。

0
2023年09月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「年齢の話」
25歳を過ぎると女の価値が下がってしまうことが当たり前と受け取れるような広告についての話があった。

私も年を重ねることに恐怖を感じていた。
子供がいない、この先やりたいことも特に無いのに、年ばかりとって自分の価値が無くなっていってしまうような気がして、誕生日を迎える度にタイムリミットが近づいてくるような焦燥感があった。
だけど幸運なことに、心から尊敬できる年上の女性達にたくさん出会うことができた。
彼女たちは人生を目一杯楽しんでいて、もし過去に戻れるなら50代に戻りたいと言う。
「物事の分別がついてきて、しかも体力がまだあったから一番楽しい時期だった」らしい。
そして、自分に合ってると思える仕事に就けたこともあって、年を取りたくないという気持ちは無くなった。
尊敬する先輩たちのようにかっこよく年を重ねていきたいと思えるようになった。

この前、25歳の女性に年齢を聞かれ33歳だと答えたら、申し訳なさそうに「そんなに年上だと思いませんでした。若く見えますね」と言われた。
私自身は33歳に見られる事が嫌ではないし、若く見られたいとも思っていない。
だけど私も25歳の頃は、年上の女性に対して悪気無く同じような言動をしていたかもしれない。
「歳を取ると女の価値は下がる」という呪いは社会だけがかけてくる呪いではなくて、自分自身でも無意識かけてしまっているのだと思う。
申し訳なさそうにしていた25歳の女性はまだ呪いにかかっているのかもしれない。
結局私は彼女に何も言えなかったけど、いつか先輩たちのようにかっこいい女性になって、年齢を重ねることに恐怖を感じている若い後輩たちの呪いを解いてあげたい。



「半分だけわかる、でもいいと思う」
欅坂46の「月曜日の朝、スカートを切られた」という歌の話。
この曲は、

月曜日の朝、スカートを切られた
通学電車の誰かにやられたんだろう
どこかの暗闇でストレス溜め込んで憂さ晴らしか
私は悲鳴なんか上げない

と続く。

スカートを切られるという理不尽な性被害にあいながらも、大人になるにはこれくらい仕方ないと社会を冷めた目で見ている女の子。
そんな女の子がカッコいいというメッセージまでは無いにしても、この歌を国民的アイドルが歌うことで、こんな状況に共感する女の子が多いという事が社会で当たり前になってしまうのは悲しいと感じた。

私自身痴漢にあった時、大声を出した方が良いのか、でももし逆上されたら?相手がナイフを持っていたら?なんて考え始めると怖くなって、結局何もできなかった。
それに、痴漢くらい女なら皆あってるし、そんなに特別なことじゃない、と正直そこまで大事に捉えていなかったし、通報もしなかった。
何もできなかった自分を責めてはいないけど、この本を読んで、やっぱり「悲鳴なんかあげない」のが当たり前な世の中はおかしいと、改めて思った。



「男女平等の話」
【あるとき、私よりも若い女性が、こんな風につぶやいたのを聞いたことがある。
「セクハラでもパワハラでも残業代が払われないのでもそうだけど、やられた方がそれを言った途端、会社は態度を変える。『お前、そういう面倒くさいことを言い出すヤツだったのかよ』って」】(p159)

この部分、確かにそうなんだよなぁ。
私も前職でパワハラ、セクハラにあっていた時、上司に相談したら、「だけどあの人はあの人にしかできない仕事があるし、辞められたら困るでしょ?」と言われたことがある。
私自身は全然困らなくて、困るのは上司なんだろうけど、もう上にいくら言っても無駄だ、と戦う気力が無くなってしまった。
職場内でもなんとなく、大事にすると面倒だからうまくいなすのが仕事ができる人、みたいな雰囲気も出来上がっていた。
適当にかわしたり我慢する能力ばかりが長けてしまって、そんな自分が時にどうしようもなく嫌になった。
うまく対処できなかった時は、私は社会不適合者なんだろうかと悩んだりもした。
そんな環境から離れてみると、おかしいのはセクハラ、パワハラをしてくる人だったと一目瞭然だけど、当時はそんなことにも気付けなかった。
もし今後同じような状況になったら、今度こそ私はきちんと戦いたい。
そして理不尽な事に対して戦っている人がいたら、ちゃんと味方になりたいと思う。

0
2023年02月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

日常にある隠れた視点からエッセイ形式で語るので著者の感情がダイレクトに伝わる。読み進めていく中で、絶望を感じる部分もあって日本が性に関してどれだけ無情なのかを思い知らされた。また自分でも気づかなかった視点があったり、モヤモヤしていたことを上手く言語化してくれていてスッキリしたと同時に自身のジェンダー観を問い直すきっかけになった。個人的には8月29日の「女の人の体が好き」が印象的。私も著者と同じように「男の身体が好きじゃなく、女の人の身体の方が好きだ」と考えていることに初めてはっきり気づいた。

0
2022年12月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

性暴力被害、痴漢犯罪、年齢差別、ジェンダー格差、女性蔑視、等をテーマにした記事を書いている小川たまかさんの本。ブログを加筆修正、一部書下ろしたもの。

興味のある分野の本だけに、とても良かった。
全部の問題を、全部考えていたら、なかなかしんどいなぁと思うけど、ちゃんと見つめて、時々はちゃんと考えなくちゃと思わせてくれる一冊。
有名人の名前とか作品名とか、実名で掲載されていてわかりやすかった。反論とかもあるかもだけど、これは大事な視点だと思う。

0
2021年08月03日

「ノンフィクション」ランキング