あらすじ
やあ。よかったら、ここにおいでよ。気に入ったら、ここが君の席だよ。
染織家の叔父ノボちゃんから「コペル」とあだ名された十四歳の「僕」。親の事情でひとり暮らしをしている。ある朝、土壌生物を調べに行った公園でばったり会ったノボちゃんを連れ、小学校以来疎遠になっていた友「ユージン」を訪ねることになる……。そこから始まる長くかけがえのない一日を描く青春小説。
現代の「コペル」は考え続ける。──モラルが失われたこの時代に、周りに流されず、友との信頼を築いて生きるには──?
電子化にあたり、植物等について後注26項目(著者監修)を追補しました。
*梨木香歩
一九五九年生まれ。作品に『西の魔女が死んだ』『裏庭』『からくりからくさ』『家守奇譚』『村田エフェンディ滞土録』『沼地のある森を抜けて』『この庭に』『f植物園の巣穴』『ピスタチオ』『海うそ』『岸辺のヤービ』、絵本に『ペンキや』『蟹塚縁起』『マジョモリ』『ワニ』、エッセイ集に『春になったら苺を摘みに』『ぐるりのこと』『水辺にて』『秘密の花園ノート』『渡りの足跡』『不思議な羅針盤』、 翻訳書に『哲学と子ども』『ある小さなスズメの記録』などがある。
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
少し前に映画化されて話題となった『君たちはどう生きるか』原作の主人公の名前はコペル君です。この物語の主人公のあだ名もコペル君。色々思い悩む14歳です。
一見正しいと思われる大人の理論に違和感を覚えたとき、自分でよく考えて反論をすることができますか?コペル君は周りの大人達にも助けられながら、自分の感性を信じ、見過ごしていたことに気づき、意見をまとめる方法を学んでゆきます。
この本が少しでもあなたの生き方の手助けになること、そして頼りになる大人が見つかることを願って、おすすめします。
Posted by ブクログ
人がいかに簡単に周囲に流されるか、ということ。
この物語の中に、流れに流されたくなくて一人になることを選んだ三人が出てくる。
戦時中徴兵されることを肯じなかった人。
命の授業という名目で自分のかわいがっていた鶏を絞めて食べることを強制された少年。
心ならずもAVに出ることになってしまった少女。
もう一度、書く。人はいかに簡単に周りの圧力に抗しきれなくなるものなのか。その結果を受け止められなくなったとき、いったん群れから離れて一人で生きることを選んだ。
一緒に命の授業を受けていて、ペットを殺されることになる友達の気持ちに気づけなかったコペルが述懐する。「何かがおかしい」って「違和感」を覚える力、ひっかりに意識のスポットライトを当てる力が、なかったんだ。
この表現は本当に的を得ている。
そして、さらにこの小説の深いところ(梨木果歩のすごいところ)は、同じ教室にいたコペル君が自分の行動、感情を洞察するところ。友達の気持ちに気づいていなかったのではなく、気づいていてそれをごまかしていたというところまで省察するところだ。
Posted by ブクログ
色々な現代にある問題が、
コペルの周囲や、友だちなど身近な存在の問題として語られ、コペルがそれらについて考えていく。
中心としては、集団の考えに個が押し潰されてしまう状況下(集団の圧力)に耐えきれず、そこから距離をおいてひとりでならざるをえなかったコペルの周囲の人たちの話。
徴兵制、性的搾取、学校での安易な屠殺教育、ジェンダー、環境汚染など身近な問題からコペルは考えていく。そのなかで、自分が向き合えなかった問題に向き合い、自分の弱さを知る。
最後はやっぱり人には人(群れ)が必要なのだと思うにいたり、群れの温かさを必要としている人を受け入れられる人でありたいという思いで締め括られている。
感想
コペルや友人のユージンは中学生のはずだが、しゃべり方や思考の仕方が高い次元すぎてびっくりする!もちろん物語の中なんだけど!
最近よくニュースでも聞く問題が多く、身近に感じられる内容も多かった。ニュースで聞いているだけだと、その問題の表面しかわからないが、この本では、その渦中にいる人がぞくぞくとでてくるので、もし自分だったらどうするか、周囲にそういう人がいたら自分はどういう行動がとれるのかという視点でも考えることができた。
Posted by ブクログ
中学生のコペル、叔父と一緒に野草をとりに、ユージンの家を訪れる。
かつて子供の頃、何度も訪れたユージンの家。
広大な庭に広がる草木とのふれあい、不登校になったユージンに、そのわけを聞ける勇気もなく核心には触れずに接する二人。
ユージンの従姉妹のショウコも加わって、食べられる野草を探し、料理して食べる。
ショウコが話してくれたのは、この庭に人生に休憩を必要として一人でキャンプしている傷ついたインジャの存在。
迫害されたユダヤ人たちの過去と、自分が当事者だったとき集団の正義に目をくらましていたかもしれないという不安。
ユージンが不登校になるきっかけになった出来事。
教師がかざした教育の間違い。
嫌だと思ったことには、声をあげなければならないということ。
生きる術。中学生、高校生になったら子供に勧めたい作品。