あらすじ
店を開くも失敗、交通事故死した調理師だった父。女手ひとつ、学食で働きながら東京の私大に進ませてくれた母。―その母が急死した。柏木聖輔は二十歳の秋、たった一人になった。全財産は百五十万円、奨学金を返せる自信はなく、大学は中退。仕事を探さなければと思いつつ、動き出せない日々が続いた。そんなある日、空腹に負けて吸い寄せられた商店街の惣菜屋で、買おうとしていた最後のコロッケを見知らぬお婆さんに譲った。それが運命を変えるとも知らずに……。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
何も知らず、先に読んだ『まち』が好みだったため、第一弾に戻ってきた。高校生の時に父を単独交通事故、大学生の時に母を突然死で亡くした聖輔は大学を中退して、砂町銀座商店街の惣菜店「おかずの田野倉」でバイトを始める。辛くて心細い状況にも関わらず、聖輔はどんなときでも優しくて素直で真面目で、自然と応援したくなる。そして、周りの人たちも温かい。タイトルでもあり、テーマでもある『ひと』との出会いを通して、謙虚で基本的に執着しない聖輔が譲れないものを見つけ、自分なりの道を切り開いていく姿が頼もしくもあり、力をもらえた。
Posted by ブクログ
久しぶりに穏やかな本を読んだ。
父も母も亡くなり、大学もバンドもやめた聖輔。
ひょんな事からお惣菜屋でバイトすることになる。
そこでの人と人との関わり合い。
最後の1行が素敵だった。
Posted by ブクログ
鳥取から上京して
大学に行ったけれども
やめてしまう
やめざるを得ない
書きかけていたのが、
運命の話
決めることって案外少なくて、
勝手に実は決まっていたということの方が多いのではないか、ということ
選択しているようで、
選べる選択肢は一つだったりして
実はほとんどのことは、選択決断の前にすでに決まっている、ような気がしたり
何が運命を形作って要るかとか、人生を決めていくのかを考えると、
それは本当に日々の倫理観だったり、物事への向き合い方、みたいな部分なのかもしれない、とか。
信号無視について触れられていたところは
ちょっとぎくっとしつつも、
当たり前のことをできるひとってすごいなーと思ったり、
少し釘を刺された感もしつつ、
その都度少し考えるようになったり。
親戚にお金をせびられるというか脅迫じみたことになっていたけれど、
私だったら完全に人間不信になるような、
大学の友人の入り浸りも含めて、
それでもアルバイトとしてお惣菜屋さんで働き始めて、
店主からは後継を打診されるまでも信頼関係を築き、
その後はそこに留まるふうではなさそうだけれども、
その時々で隣にいる人を大事にしていくこと、
そんな姿を感じる作品だった。
コロッケとメンチカツ、
そして
そして鳥取、焼き鳥、ニトリ、と
ひと、という作品ではあるけれど、とり、もたくさん混ざり込んでいた。
Posted by ブクログ
聖助が両親を亡くし、大学を中退し、一人になっている時から、バイト先の店主、店員たち、大学時代の同級生、高校時代の同級生、などいろんな人たちの暖かさを感じながら少しずつ自分の将来を形にしていく姿に、人間関係の大切さを学んだ!
聖助が人として出来ている所に周りの皆が惹かれるのだとも感じた。
こんな状況なのに、物を譲ったり、部屋を貸したり、お金を貸したり、人間の嫌な部分が身近にあるのにも関わらず、人の気持ちに察して、優しく出来るところが魅力的なのだと思う。
Posted by ブクログ
「神様が見ている」じゃなくて、「人が見ている」。この作品に合うのは、きっとそのニュアンスだと思う。
「両親を亡くした幼い子どもの成長物語」は世に多いけれど、本作は少し違う。20歳の主人公は父を亡くし、さらに3年後、今度は母を突然失う。しかも同時ではなく、別々に、突然に訪れる。この設定って、ありそうで意外とないと思った。
父を失い、続いて母も急逝する。親戚づきあいも頼れる大人もいない。突然のことだから蓄えもなく、数年後・数十年後のために通っていた大学を、明日の生活のために辞めることになる。それでも東京に残り、考えたこともなかった料理人の道に進む。
物語の途中で描かれる母の突然死と、それに対して主人公がどう感情を動かし、どう行動するか——その一連の流れが、「もし自分だったらどうするだろう?」と深く考えさせられるきっかけになった。
本来なら考える必要のなかったことばかりを、その場その場で丁寧に向き合って決めていく彼の強さは本当にすごい。私だったら「悲しいから」「難しいから」「面倒だから」と決断を先送りにしてしまいそうだ。
惣菜屋での出会いに身を任せた時、若い頃の父を追って日本橋に行ってみた時、「言うべきか黙るべきか迷って、結局言わないことにした」ような場面。ひとつひとつの判断が良い方向へ向かったのは、彼が誠実に、真っ直ぐに生きているからこそなんだと思う。
それは神様のご褒美みたいな話じゃなくて、彼の普段の振る舞いが周りに伝わっているから、いざという時、人が自然と手を差し伸べたくなる——そんな「ひと」の力だ。タイトル通り、すべては「ひと」なのだと感じた。
目立つタイプではなく、口数も多くないけれど暗いわけでもない。他人に頼るのが苦手なところには、長女として共感する部分が多く、読みながら何度も自分に引き寄せて考えてしまった。
セリフも多く、文体がとても読みやすいので、一気に読み切れた。読んで良かった。
Posted by ブクログ
バスの中では『ひと』小野寺文宣著を読んだ。本屋大賞を受賞した本である。本屋大賞の本は信用できる。そう判断したから旅に持参したのだ。読み始めたら止まらなかった。一気に読んだ。バンコクからパタヤの距離が丁度良かったからでもあるのだろう。孤独をテーマにした作品だ。誰もが突然孤独なることがある。事故で災害で戦争でだ。僕も孤独を味わった。だから分かるのだ、人は誰でも突然孤独に襲われる。その時、孤独とどう対峙するかだ。難しい問だ。その場に出会わさなければ答えなんか出せない問いだ。だからこそ、このような本を読む価値があると思う。物語ではあるが突然孤独なって茫然としながら生きていく若者の生き方を描いている。読むと少しは元気が出てくる。孤独になっても生きていけると思えるようになる。
解説で中江有理さんはこう書いている。物凄く感動したので紹介したい。
「孤独は人生において本当に大切なものを浮かび上がらせる。孤独は自分との対話を促し、孤独は自分に問いかける。その時間が孤独を深め、さらに孤独な時間を研ぎ澄ましていく。
独りだから、そばにひとがいるありがたさを知る。」
Posted by ブクログ
悲運な一人の大学生が懸命に生きる物語。
でも悲運といってもフィクションを感じさせないくらい、いつ自分に起こってもおかしくないもので、そのつらさがグサグサと刺さった。主人公はいろんな人に助けられることもあれば裏切られることもある。様々な「ひと」の物語。