あらすじ
武田小春は、十五年ぶりに再会した親友・碓氷優佳とともに、予備校時代の仲間の一人がロボット開発事業で名誉ある賞を受賞したことを祝う会に参加した。出席者は恩師の真鍋宏典を筆頭に、教え子が九名。和やかな宴の中、出席者の一人・神山裕樹が突如ワインボトルで真鍋を殴り殺してしまう。彼の蛮行に優佳は“ある人物”の意志を感じ取り、息詰まる心理戦が始まった……。倒叙ミステリの新たな傑作、誕生!
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Posted by ブクログ
碓氷優佳が初登場した『扉は閉ざされたまま』は、石持浅海さんがブレイクするきっかけになった作品だった。そして、碓氷優佳シリーズも本作で第5作ということになる。
第4作である前作『わたしたちが少女と呼ばれていた頃』は、優佳という特異なキャラクターの高校時代を描いており、シリーズ中ではイレギュラーな作品だった。本作の事件の発端は、実は優佳の高校時代にあるのだが、前作を読んでいなくても支障はないだろう。
高校時代、難関大を目指して横浜市内の予備校に通っていた面々。そこに優佳も含まれていた。彼ら、彼女らはある数学講師の教えを受け、現在でも恩師として慕っていた。予備校の「同窓生」が繋がりを保つというのは、自分の感覚では珍しく感じられる。
この面々というのが、高校時代から明確な目標と夢を持った者ばかり。「意識高い系」ではなく、本当に意識が高い。高校時代、進学後の明確な目標などなく、何となく現在に至っている自分から見れば、実に立派としか言いようがない。自分にはお呼びでない世界である。
そして現在。選ばれしメンバーたちも、全員が夢を叶えたわけではない。当然である。ある者はまだ夢の途上。ある者は安定を選んだ。別に責められるべきことではない。しかし、意識が高すぎるメンバーが一同に会するとき、そこにどんな感情が渦巻くのか。
とばっちりもいいところだが、石持作品であるから、この程度の事件は想定内である。こんな惨事の場でも、クールに分析するのが優佳。好奇心なのか趣味なのか。謎を解いたところで、もはや覆しようがない。誰のためでもない。優佳はきっと、自分のために解くのだ。
大学でも会社でも、以前は自分も同期とつい比較してしまったものだが、今では自分は自分と割り切っている。割り切れなかった故の事件。相変わらず納得できない幕引きだが、何事もなかったように生きていくつもりなのだろうか? 優佳の知ったことではないが。
誰とも競合しない目標を定めた優佳は、賢明ではある。
Posted by ブクログ
最悪の事態は避ける様にの言葉に嫌な予感しかしません。価値観の違いで距離置いた相手が最悪の想定が一緒だと思うのか。
神山、瑠奈、桜子の起こした行動については理解できないし、桜子の思惑でとばっちりを受けた人が可哀想です。仕掛けた桜子はそのまま日常に戻るのに、深い傷を負った人たちは引きずりそうなのも可哀想ですし、理不尽。
第三者視点なのでこれまでの様な追い詰められるスリルはなかったですが、友情が復活したのはよかったです。
小春もしれっと優佳に罪なすりつけたり、友人を犠牲にしたり
似たもの同士かなと思いました。
Posted by ブクログ
成功した旧友を祝うために集まった仲間たち。その席で、仲間の一人が恩師を殴り殺してしまう。事件は単純だった。しかし、そこには別の人間の思惑が絡んでいた。
成功した者の人格の問題ではなく、失敗した者から見たときの話だから、どうしたって同席は無理なのだろう。身につまされる。