【感想・ネタバレ】未踏峰のレビュー

あらすじ

遺骨の入ったケースを胸に、それぞれに事情を抱える橘裕也と戸村サヤカ、勝田慎二の三人は、ヒマラヤ未踏峰に挑んでいた。彼らをこの挑戦に導いたのは登山家として世界に名を馳せ、その後北八ヶ岳の山小屋主人になった〈パウロさん〉だった。ビンティ・チュリ=祈りの峰と名づけた無垢の頂に、はたして彼らは何を見るのか? 圧巻の高所世界に人間の再生を描く、著者渾身の長編山岳小説。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

『還るべき場所』が8000m峰の公募登山を題材としているのに対して、本作品が題材としているのは、6000m台の未踏峰の一番容易なルートからの登山。尖鋭性はなく、ニュースにもならない、ある意味、自己満足の登山と言える。
登山を行うのは、北八ヶ岳のビンティ・ヒュッテの従業員の裕也、サヤカ、慎二の3人。過去にちょっとした出来心から、不祥事を起こして失職した裕也。アスペルガー症候群で他人から理解されずに苦しむサヤカ。知的障害を持つ慎二。
この作品の最大の特徴は、社会的に疎外され、登山経験の少ない3人が、彼ら3人を結びつけ、理解し、支えてくれたパウロさんの遺志を継いで、力を合わせて、4人の共通の夢である未踏峰初登頂に挑戦する姿にある。障害を持っている人と健常者とが、支え合い、協力する姿を描いたひとつのモデルと言える。
この作品を魅力的なものとしているのは、ビンティ・ヒュッテのオーナーのパウロさんの「ブナの古木」のような人柄だ。
また、作中には、人生や山に関する味わい深い言葉が随所に織り込まれている。
読み進めていくにしたがって、最後に何か大きなアクシデントに遭遇するものと思っていたが、二人パーティーの登場ぐらいで、その二人も悪人ではなかったので、やや拍子抜けした。
情景描写や心理描写に関しては、重複していて、やや冗長に感じる箇所がある。また、サヤカはアスペルガー症候群であるにも関わらず、パウロさんの心情を理解しているような描写があったり、知的障害者である慎二にちょっとしたミスが命取りになる高所冬山登山ができるのかと疑問を感じるなど、リアリティーに欠けていると感じるところもある。

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2017年02月06日

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