あらすじ
あなたが映画の「魔法」を信じたいなら、この本を読まないことをお勧めする。上級テクニックを紹介することによって、銀幕の魔法を解体してしまう。手品を見て感激したあとで種明かしをされるようなものだ。 (本文抜粋より)
私たちが、映画や小説の世界にのめりこんで時も忘れて楽しめるときかかっている「魔法」、その正体とは、物語の始めから終わりまで心を揺さぶる「感情的インパクト」のこと。人は感情を動かされるために、映画のチケットを買い、数時間を費やすのです。
本書の原題は「Writing for Emotional Impact」、つまり「感情的なインパクトを起こすための書き方」です。読者や観客の感情を掻き立て、心をつかんで離さないためのあらゆる設計を、あますところなく伝授します。
脚本の基礎を身に着け、テクニックも駆使しているのに、なぜ自分のホンが採用されないのか。それは「魔法」がとけてしまう瞬間がどこかにあるからです。1ページ目から大事なのです。一瞬たりとも、一行たりとも気は抜けないのです。著者は数々の脚本家の卵たちを教えた経験から、物語がつまらないのではなく語り方が下手なのであり、求められているのは「読者に感情的な体験を提供することだけ」と解きます。本書では、名作の脚本を徹底的に解体し、語り方を分析しながら、キャラクター造形や構成など大枠はもちろん、場面(シーン)でのやり取り、一つ一つの台詞、単語ひとつに至るまで、細かく具体的な技巧を指南。二度と同じ目線で同じ作品・脚本を観られなくなるはずです。
脚本の基礎は大事ですが、他の本で学んでください。基本から最高の1本までの長い道のりにおいて、もう一歩を抜け出したいときに、本書は必ず役立ちます。合わせて、同著者の『脚本を書くための101の習慣』もぜひご一読ください。
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
いわゆる「ハリウッド脚本術」の決定版。
本の厚みを見れば分かる通り、ものすごい労作。
人口に膾炙しているハリウッド脚本術(いわゆるプロットポイント、ターニングポイント、ミッドポイントといった、プロット構成で書くこと)を否定して、一貫して「読者・観客にどういう感情を呼び起こさせるか」というテクニックについて語っている。
曰く、そういう脚本術にそって書かれたものでもつまらないものはつまらない。脚本にとって本当に大切なのは、感情、それだけだ。(意訳)
なので、そういう脚本用語が知りたい人は原典のシド・フィールドとかを読んだほうがよさそう。
内容としては、脚本に関する実用的なテクニックを集めた「辞書」と言っていい内容で、これ一冊読めばだいたい他の本で触れられている脚本術については網羅できる。
ただ、それ故に、正直これをマトモに頭から順に読んだら頭がパンパンになって逆に何も書けなくなりそうだ。
それに、有名なブレイク・スナイダーの『SAVE THE CATの法則』やヒックスの『ハリウッド脚本術』、シド・フィールドの脚本術本などに比べて、正直情報量が多すぎて、読み物としてはあまりおもしろくない。
(個人的には『SAVE THE CATの法則』が読み物としては一番おもしろいと思うが、実用性はかなり低いと思っている。なんせ各チャプターの説明が雑)
使い方としてはむしろ、それこそイントロダクションの部分だけ読んだら、あとは自分が取り掛かっているところに対応するチャプターを参照するのが一番良さそう。
これを一読しただけで覚えられる人はまあいない気がする。
個人的には、チャプター2の「コンセプトをおもしろくする12の方法」、チャプター4の「主人公の4類型」、チャプター5の「好奇心でそそる、驚かせる」のところが非常におもしろかった。