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Posted by ブクログ
初夏のある日、部活帰りに友達が「これ、面白いから読んでみて」と貸してくれたのが「ざ・ちぇんじ(前編)」。そう、昔は前編と後編に本が分かれていたのだった。夕暮れどきの薄暗い部屋で電気も点けずに読み耽ったのを思い出す。当時、私は中学一年生。この本で「直衣」や「御簾」の読み方を覚えたのではなかったかな。
平安時代の登場人物たちが現代の言葉で生き生きと話し、恋に悩み嫉妬に狂えば、人生に迷う。私たちと大して変わらないじゃんと歳の近い彼らに親しみを覚えた。一気に読んで翌日、後編も貸して欲しいと友達にお願いしたのは言うまでもない。
10代前半で読んだ時は80年代当時の感覚として特に引っかかることもなかったけど、ジェンダーで役割分担がガッツリ固定化されていた平安時代は姉綺羅のように能力ある者にとっては、さぞかし窮屈で生きにくかっただろうなと同情する。初版から40年近く経った令和の現代ではジェンダー役割が流動的になってきているから、今の子供達が読んだら何と感じるだろうか。そして、十人並の容姿でこれといった特徴もない三の姫が宮中で姉綺羅と人気を二分する宰相中将をしっかり射止めるところが昔の少女マンガの王道的展開(読者の少女達の夢を壊さない著者の優しさ)のようだなぁと微笑ましく思った。
空蝉の術や、あらぬ人の恋の恨みを買う夕顔や葵の上、といったような源氏物語に由来する例えがちょくちょく出てくる。とりかへばや物語を下敷きにした小説だけど、氷室先生は設定に源氏物語からヒントを得たところもあるのではないだろうか。
セリフに「おたんこなす」と出てくるあたりが昭和の作品らしいと、ふと懐かしくなった。