あらすじ
君が亡くなり独り残された僕は、君の最期の手紙に返信を書き始める。それは、二人の出逢いから別離までを描いた小説とも読めるものだった。僕はその文章に「世界の終わりという名の雑貨店」と題名をつけ、出版社の知人に送った。それが編集者の目に止まり、僕は小説家としてデビューすることに。 処女作は予想外に売れ、新作を期待されたが、いつしか僕は、以前にも増して死を思うようになる。そして洗礼を授かり訪れた教会で「彼女」と出会うのだが…。
『ミシン』所収の名作「世界の終わりという名の雑貨店」の続編として描かれた切ない純愛長編。
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Posted by ブクログ
“続・世界の終わりという名の雑貨店“ということで、『ミシン』に収録されていた『世界の終わりの雑貨店』の続編として書かれている。
「君」が亡くなり残された主人公は茫然自失の日々を過ごしていたが、ふと「君」に充てた手紙を書こうと思い立つ。その手紙を思いつきで出版社に送ったところ、ある一人の敏腕女性編集者の目に留まり、単行本として異例の新人小説家デビューをすることになる。ひとり残された世界で目的もなく暮らしていた主人公にとっては、社会と繋がる、まさに希望の手が差し伸べられた出来事であったと思う。
順調に思えた生活はある一人の少女との出逢いで一変する。とある教会のバザーで、「あなたと私は魂の双子なの」という、「君」を彷彿とさせる少女と出逢ってしまう。主人公は流れでその少女の家まで送っていくことになり、少女の神懸かり的な儀式を目撃する。普通であれば、誰かに相談したり病院に連れていくなどすると思うのだが、主人公はなぜかそういう行動を取らない。彼女と共に過ごす時間が増えていくことで、主人公の心と体は疲弊していく。
女性編集者はそうした主人公の変化を敏感に感じ取り、大切で守るべき存在をもう2度と失いたくないとの想いで主人公と彼女を離れさせようとするが、最終的に元鞘に収まる形となって、物語は終焉する。
主人公の「魂の双子」として現れた少女。「君」を救えなかった主人公の心に残る原罪のような呪い。最後のままであれば、きっと少女も主人公も、肉体も精神も疲弊し衰弱し、死にゆくだろう。果たしてそれで嶽本野ばらの描きたかった“純愛”は完結するのだろうか。救えぬと分かっていても誰かを一途に愛し貫き通す美しさを描きたかったのか。それを美しさと呼んでいいのか。
だが、物語はこれで終わりではないだろう。先の女性編集者にも覚悟があった。共通するのは、守るべき存在のそばに居続けることの尊さではないだろうか。どんな結末を迎えようと、そういう「ツインズ」に出会えたのであれば、主人公は幸せだったと言うべきだろう。いや、ツインズなのだとしたら、それは禁断の愛。決して堕ちてはいけない愛。
周りは絶対に止めるだろうが、最終的には本人の意思。あなたは、命を賭してまで守りたい愛すべき存在に出逢えていますか?そう最後に問われている気がした。
ただ、主人公の関係者ならば、何が何でも彼を止める。それも愛だ。