あらすじ
人口100万を数え、近世では世界最大の都市といえる江戸。膨大な日常消費は草の根レベルの活発なリサイクルで支えられていた。藁、竹、灰、みな太陽エネルギーの有効利用でよみがえる。現代では忘れられ、失われてしまった江戸庶民の合理的でムダのない暮らしの知恵を描いた「大江戸事情」シリーズ第4作。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
江戸時代の社会が非常に上手く循環していたことを表す一冊。ただ、全ての章に筆者の意見が組み込まれていることがよくないと感じた。
江戸の社会において、多くの物は植物を元にしている。つまり太陽エネルギーから生まれたものである。そしてそれを利用する人間もまた太陽エネルギーから生まれた植物や動物を摂取する。この生活から生まれる生活ゴミは全て自然に帰るか再利用される。自然に帰ればまた植物に吸収される。このように全て循環しているのである。現在と比べれば効率的とは言えないが250年続いたという結果がこの生活スタイルの有用性を表している。今の生活は短期的な合理性ばかり求めており長期的には続かない。だからこそ江戸時代の生活を見直すべきである。
以上のようなことが様々な分野を通して伝えられていた。江戸時代の生活は長期的に続けられ、人という生き物に適していることはよく理解できた。しかし、だからといって今の技術全てを放棄するのは違うと思う。特に医療分野である。今でこそジェネリック等大量生産が整っているがこれを支えているのは本書で否定されている一方通行の技術である。どんなに健康的な生活を送っていたところで病は発生する。その時に対応できないと待っているのは死である。そのため、江戸時代の生活から取り入れることができることを考えることが大切なのではないかと考えさせられた。そんな一冊である。