あらすじ
2人が出会って多くの傑作ミステリーが生まれた。そして18年後、2人は別れた――。大人気作家・岡嶋二人がどのようにして誕生し、28冊の本を世に出していったのか。エピソードもふんだんに盛り込んで、徳さんと著者の喜びから苦悩までを丹念に描いた、渾身の自伝的エッセイ。ファン必携の1冊!(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
総合評価 ★★★★☆
サプライズ ★★★☆☆
熱中度 ★★★☆☆
インパクト ★★★☆☆
キャラクター ★★★★☆
読後感 ★★★☆☆
希少価値 ★☆☆☆☆
「おかしな二人」は、岡嶋二人の自伝的エッセイである。もっとも、二人の作品ではなく、岡嶋二人のうちの一人である井上夢人の作品である。井上夢人と徳永諄一の出会いから、乱歩賞を受賞するまでのストーリー。そして、職業作家としての苦悩の日々と、岡嶋二人の解散までのストーリー。これらのストーリーが、リアルに、そして生々しく書かれている。
岡嶋二人の出会いから乱歩賞を受賞するまでの「盛の部」は、将来への不安を感じながらも成長していく二人の話である。徳山諄一の貯金を切り崩し、共通の知人であるダダと三人で会社を立ち上げ、わずか11か月で会社をたたんでしまう。会社を経営していたわずかな期間の間に交わされた無駄話が、岡嶋二人の小説作りの土台となったという。乱歩賞の存在を知り、小説を書こうとする二人。どうやって小説を書いたらいいか分からない二人は、小説のタイトルだけ考えたり、連想ゲームをしたり…。その後、本格的に乱歩賞を目指す。「くたばれ巨象」「探偵志願」「あした天気にしておくれ」という作品を経て、「焦茶色のパステル」で、二人は7年かけて実際に乱歩賞を取ってしまうのである。ここまではまさに痛快なストーリー。ここで終わっても「おかしな二人」は傑作だが、ここから、岡嶋二人が崩壊に向かう「衰の部」が続くのである。
衰の部では、乱歩賞を受賞した後、岡嶋二人がプロの小説家としてどれほど苦労したかが、恐ろしいほど生々しく書かれている。
岡嶋二人の不幸の原因の一つは、井上夢人が執筆という作業を担当していたこともあり、メキメキと力を付け、成長していったのに、徳山諄一はそれほど成長できなかった点にあると思う。いっそのこと、徳山諄一が井上夢人のマネージャーのような立場になってしまえばよかったのだろうが、わがままで頑固な井上夢人はそれを許さない。それどころか、デビューするまでのアマチュア時代の岡嶋二人の関係を取り戻そうと必死になるのである。井上夢人のわがまま、頑固、そして理想主義が、もう一つの岡嶋二人の不幸の原因だろう。
徳山諄一から、井上夢人の気持ちが離れていく様を読むのは、岡嶋二人のファンとしては辛い部分もあった。しかし、どういうわけか、井上夢人の方に感情移入をしてしまったので、「おかしな二人」を読むうちに、「もっと早く解散してしまえ」という気持ちがあったのも事実である。
岡嶋二人の作品は、どれも水準が高く、好きなのだが、一番好きな作品は『99%の誘拐』であり、二番目に好きな作品が『クラインの壺』である。どちらも傑作だが、ほとんど井上夢人一人で作り上げた『クラインの壺』という作品より、岡嶋二人の最後の合作といえる『99%の誘拐』の方が好きなのだ。
井上夢人名義の作品も好きなのだが、いつか、岡嶋二人の新作を読んでみたいという気がする。
いろいろ考えさせられ、何より小説を書きたいというような気持ちにさせられる「おかしな二人」という作品は、いうまでもなく名作。★5で。