あらすじ
幼なじみ・サヨの死の秘密を抱えた17歳の私は、ある女性に夢中だった。白い服に身を包み自転車に乗った彼女は、どこかサヨに似ていた。想いを抑えきれなくなった私は、彼女が過ごす家の床下に夜な夜な潜り込むという悪癖を繰り返すようになったが、ある夜、運命を決定的に変える事件が起こってしまう――。幼い嘘と過ちの連鎖が、それぞれの人生を思いもよらない方向へ駆り立ててゆく。最後の一行が深い余韻を残す、傑作長編。
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Posted by ブクログ
最近読んだ中小説の中で一番好みな作品。
実に美しく物語が展開され、また収束していく。
終盤ギリギリまで本当に救いようが無い息苦しさを感じさせ、最後は読者に任せる形を取っていたのも良かった。
小賢しい人間に特に刺さる傑作だと思う。
Posted by ブクログ
自分が殺した人。
自分が殺す原因を作った、あの人。
罪なき失敗を殺人と見なし、殺してしまった自分。
そして、誰かを守るための嘘。
少し沈んだ調子で物語は進むが、読後感は爽やか。彼らの明るい未来を祈らずにはいられない。
Posted by ブクログ
ナオは嘘をついているの?
わからないままお話は終わるけれど、わからなくてもいいかと思える。
嘘かもしれないと考えるのは主人公のトモくんの考えであって、何が真実かは結局わからない。
今回は登場人物の誰にも共感はできなかった。
他の道尾さんの作品のように容赦なく不幸な出来事が続くけれど、悲しさにどっぷり浸ることもなく真相が気になって読み進めてしまった。
小説の中だけでいいかなと思う場面もちらほら。
平凡な現実のありがたみを感じる。
Posted by ブクログ
就活が終わり、久しぶりにどっぷりと読書ができてとても嬉しい!ミステリーで非日常を味わいたいと思い手にとった一冊。初めはあたたかい家族小説かと思いきや、途中から様子がおかしげに。姉のサイコパスな言動に惹かれる青少年主人公は、自らの「かわいそう」という同情を向けることで優位に立っていた。同情と優しさって紙一重だと感じた。私もかわいそうからくる行動はよくしてると思うけれど、自分をよく理解するために自分なりに考えた。同情はスノードームでいう内に閉じ込める行為、優しさはスノードームの殻を破るような行為だと思う。同情と依存関係は共通部分があるとも思った。相手の人生を広げるようなコミュニケーションをとりたい。
この物語の根幹は、真実は誰にもわからないということではないか。最後のナオに対する主人公の考察も本当かどうかはわからない。自分に都合のいい解釈だったら、、、。
思春期にこれほどまでの苦しい思い出を増やしてきたから救われてほしいと願う。
Posted by ブクログ
似た人に出会ったことで、忘れかけていた初恋の人を思い出した主人公の昏いいまが描かれる。初恋のサヨを「ある意味」殺した主人公が出会った智子の存在。性的倒錯をもたらす智子はサヨの過去と繋がりがあった可能性があり、彼女の罪もサヨの罪も「あったかもしれない話」として描かれていて、誰が「悪」かはっきりさせないところが魅力的だ。しかし事件を最も複雑にしているのはナヲ(サヨの妹で主人公の同居人)の存在であり、一番「真人間」のような彼女の正義感、(想い人が主人公なら自然な感情としての)嫉妬が絡まることで真相にモヤがかかる部分が皮肉めいていて面白い。