あらすじ
霧の街・オスタス。人間族の少年、リッツ・スミスは理由あって「マルタ・サギー名探偵事務所」の助手となる。ズボラで頼りない所長のマルタに不安を覚えるリッツ。しかし、マルタにはとんでもない秘密があった――
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久しぶりに再読。
ご都合主義万歳な展開が楽しい。(09.07.20)
軽いのが読みたくなって引っ張り出した。
登場人物がみんなあったかいから
読むとほっとする。
(11.06.01)
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シリーズ短編集第1巻。助手であるリッツ・スミスとの出会いやらジョセフィーヌ(ジョセフ犬)との出会いやらが書かれています。リッツとマルタの関係が本当可愛くて大好きです。
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推理しない探偵マルタ・サギー(鷺井丸太)シリーズ短編集第一弾。雑誌掲載短編+αを収録。ある意味「探偵M氏の愉快な日常」とか言い換えてもいいような(苦笑)。暢気な日常とシリアスな背景のバランスが絶妙です。
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“今日から助手のリッツは茶を淹れてやりながら、食事の間も婉曲にさんざん言ったことをまたぶつぶつ言う。マルタがカード使いであったことは、未だに少し複雑だ。
「カード使いならそうって言えよ。つか、あんなん推理も捜査もあったもんじゃないじゃん。ドクトル・バーチのお陰じゃないか……って、ドクトル・バーチってどんなんだろ。会ってみたいなー」
温めたカップにお湯を注ぐと、脳の奥まで届く様な香りが辺り一面に広がる。ご満悦で匂いを嗅ぐリッツは、リッツの寝床を作っているマルタを呼ぼうとしてふと気がつく。
雑然と物が置いてある棚の上に同じ文字らしきものが書かれている紙があった。
「なんだこれ。呪文かな」
リッツはそれきり興味を失って、マルタを呼びに行った。
リッツにはわからなかったが、それには漢字でこう書いてあった。
鷺井丸太。
自分の名を忘れない様に、といくつも書かれた言葉だったが、その文字が意味を持つのはまだまだ先のことである。”
短編集。
オルタスに馴染んできたマルタがいかに怠惰な生活を送っているかがわかったり。
ただこのマルタの性格はすごく好きだ。
嘘が吐けなくて自負責任が何気にある。
苦労人なリッツも人柄が良すぎて困る。
探偵と怪盗と探偵周囲の人物の愉快ともいえる人間関係。
読んでて思わずにやけてしまったり。面白い。
“「ドクトル・バーチからの予告状がきたぞ」
トーリアス警部がマルタ・サギー探偵事務所の扉を開けて言ったのは、冬の気配のする午後の早くだった。
「おお、久しぶりだなぁ」
マルタはぼんやりとそう言い、ジョゼフ犬はお行儀良くトーリアスを見上げて細い尻尾を振り、リッツ・スミスは窓を大きく開けて通りに向かって叫んだ。
「ありがとう、バーチ!!これでパンと紅茶が買えるよー!!」
「リッツー寒いー」
マルタの言葉にリッツは窓を閉め、靴音高くマルタに詰め寄って、額をごりごりと音がするほど合わせて、睨みつけると歯ぎしりをする様に言った。
「ここには立派な暖炉があるというのにだな。薪を!買う金もないのは誰のせいだ、言ってみろマルタ!」
マルタは顔を青ざめながら引きつり笑いを浮かべる。
「あっ、でっでも、ジョゼフはおなかいっぱいだと思う……」
「あたりまえだ。ジョゼフが飢えるくらいならお前が身体を売れ」
瞬きもせずにリッツは喉の奥から響く様な声を出した。
マルタは口の端に引きつった笑みを浮かべ、視線を外せないまま呟く。
「う、売れるのか僕」”
20141115 再読