あらすじ
失踪中の辣腕弁護士が射殺死体で発見された。被害者の息子ワークは、傲慢で暴力的だった父の死に深い悲しみを覚えることは無かったが、ただ一点の不安が。父と不仲だった妹が、まさか……。愛する妹を護るため、ワークは捜査への協力を拒んだ。だがその結果、警察は莫大な遺産の相続人である彼を犯人だと疑う。アリバイを証明できないワークは、次第に追いつめられ……。
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Posted by ブクログ
遠田潤子を作品を読むと、この人はブルースを奏でるような小説を書くなぁと思う。で、ジョン・ハートだが、彼の作品にはいやブルース・スプリングスティーンを感じてしまうのである。
本作は彼の初期の作品。さすがにまだこなれていないせいか、「ラスト・チャイルド」「終わりなき道」に比べるとちょっと荒っぽいかな。それでもこの後の作品群に連なる「あがいてもどうにもならない不幸と向き合って生きていく悲しさと美しさ」というテーマは、本作にもしっかり流れている。
当たり前の話だが、小説家ってのも成長していくんだなと思う。この作品も駄作ではないが、やはり既読の、後に刊行された作品の方が、味わい深い。
「流暢にスピード感があって、ページを繰る手が止まらない!」…的な小説ではなく、むしろ読めば悲しくなったりツラくなったりするような描写が続いたり、情景描写も美しくなかったり、美しくても冷たかったり…。むしろページを繰る手が止まりそうになることも度々。でも、その気が重くなるような文章のリズムの中に小説のだいご味が隠されている。
重く流れるリズムに身をゆだねて、ジョン。ハート作品のだいご味を味わう。1冊読むとズシンと心に響くが、これもまた至福の読書体験なのである。