あらすじ
21世紀、世界連邦食糧機構の海務庁牧鯨局は、食用の鯨を海で放牧し、人類の食糧需要量の一割以上をまかなうほどになっていた。その海底牧場で、牧鯨者として鯨を管理する一等監視員ドン・バーリーは、新人として配属されてきたウォルター・フランクリンの訓練をまかされることになった。だが、フランクリンにはひとに言えない過去があった……海に生きる男たちの波瀾に満ちた運命を描く巨匠クラークの感動的な海洋SF
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Posted by ブクログ
フロンティアを宇宙ではなく海に求めた作品。クジラを食料とすべく海を牧場として育てている。現在から見ると複雑な気分になるが、この事の是非が問われることになる。また、クジラを守るための調査過程で現れる、正体不明の巨大海洋生物の謎が加わる。挫折した元宇宙航空士の再生と、彼の同僚であり親友の死などのドラマも描かれる。このドラマ部分はとってつけたというような感じがするが、海を舞台とするハードSFの単調さを補う助けとなっている。
もっとも興味深いところは、物語の後半で仏教の最高位の人物と主人公の元宇宙航空士とのやり取りだった。人間のためにクジラを殺し続けるか否かという問題である。未来に出会うであろう人間より高等な生物からの視点を示すことでまったく新たな見方が現れる。