【感想・ネタバレ】スウィング・ジャパン―日系米軍兵ジミー・アラキと占領の記憶―のレビュー

あらすじ

砂漠の中の強制収容所でサックスを覚え、占領期の日本でジャズを広め「神様」とまで称えられた日系二世。差別の中に育ち、長じてGHQ語学兵として赴任したジャズマンは、荒廃した「祖国」で何を見たのか。後に日本文学者の道を選んだその生き方から、戦中戦後の日米の姿に光をあてる。従来の占領史に一石を投じる傑作評伝。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

本書は日系アメリカ人ジェームズ・T・アラキの評伝。太平洋戦争で強制収容された一人であり、陸軍情報部日本語学校の教官。惜しまれつつ除隊し、戦後日本にビ・バップを伝えたJAZZ奏者(ジミー荒木)。そして古典学者の顔も持つ。驚いた。

有刺鉄線を経て合衆国に忠誠を誓い陸軍へ。敗戦による来日後、昼は連合国翻訳通訳部、夜はジャズメンとなる。日本人ミュージシャンたちは、フレンドリーなアラキを敬愛した。軍でのエリートコースも保障され、高名な楽団からの誘いもあったが、別の道を選ぶ。

アラキが選んだのはUCLAバークレー校で日本中世文学を学ぶ道だったのである。信長で有名な幸若舞をおいかけ、研究は能、文楽、芭蕉へ広がる。井上靖の作品の英訳も手がけている。研究で何度も来日する姿は、自身を探る旅でもあったのではないか。

筆者は、日米のゆかりの地に足を運び取材を重ね、資料を丁寧に発掘している。本書は一人の北米移民の軌跡から現代史を複眼的に捉えた秀逸な一冊である。筆者の前著『ワシントンハイツ GHQが東京に刻んだ戦後』(新潮社)と併せて読みたい。了。

0
2012年12月28日

「学術・語学」ランキング