【感想・ネタバレ】宮本武蔵「五輪書」 ビギナーズ 日本の思想のレビュー

あらすじ

29歳で佐々木小次郎に勝ち天下一の実力を示した武蔵。「ふかき道理」の追求の果てに達した境地を「地・水・火・風・空」の5つの兵法とともに記す。近年発見された数々の資料も取り入れ、武蔵の実像に迫る。 ※本作品は紙版の書籍から挿絵の一部が未収録となっています。あらかじめご了承ください。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

宮本武蔵の「二刀一流(二天一流)」について、自ら没する前に記し残した兵法書。武蔵は、13歳から29歳までの間に戦った真剣勝負において、一度も負けなしという。

吉川英治の「宮本武蔵」は、何度も通読し、その剣へのひたむきな姿に、感動と尊敬の念を覚えたものだ。

本書は、「地」「水」「火」「風」「空」の五つの巻から構成されている。全体を通じて、テーマは「必ず勝つ」ということ。「勝つ」ためにどうすればよいか、それを合理的に考えられたのが武蔵の兵法なのだろうと思う。

当然、斬るか斬られるかの真剣勝負であり、現代のスポーツやゲームなどの世界とは違い、リアルに命がかかっており、負け=絶命を意味していたのであるから、勝てない兵法は無意味ということかもしれない。

ただ、武蔵は他の流派についても研究している。他の流派を批評し欠点を論じている。それらの他流に置いて、型を重んじて居たり、美しさを求めていたりしていることにには否定的であり、徹底した合理主義であると感じた。実践で役に立たない兵法は不要ということだ。ただし、どの流派がどうと、名前を出していないし、出す意味もないとしている。

武蔵の兵法は、固定的なものはない。変幻自在というか、相手によって、環境によって、状況によって、戦い方を変化させる。いわば、相手の心理を読み、環境を自分の味方につけ、状況を自分の有利に導き、いかなる不利をも有利に変化させていく兵法であると感じた。「構えあって、構えなし」というのはこのことを良く表現している。

また、技の部分もさることながら、心理戦をも重視している。そしてそれらテクニックの部分の根本となるとなるのが「空の巻」で述べられている「心に曇り、迷いがない」という点ではないかと思う。

以下、心に残った点を記しておきたい。

「地の巻」
その後なおもふかき道理を得んと朝鍛夕錬してみれば、をのづから兵法の道にあふ事、我五十歳の比なり。夫より以来は尋入べき道なくして光陰を送る。兵法の利にまかせて諸芸諸能の道となせば、万事におゐて我に師匠なし。

「水の巻」
兵法の道におゐて、心の持やうは、常の心に替る事なかれ。常にも兵法の時にも、少しもかはらずして、心を広く、直にして、きつくひつぱらず、少もたるまず、心のかたよらぬやうに、心をまん中におきて、心を静にゆるがせて、其ゆるぎのせつなもゆるぎやまぬやうに、能々吟味すべし。

「火の巻」
朝から夕まで鍛練を続け、磨き果せて後、一人自由を得て、自然と不思議な力を身に得、万事に通じる力があるようになる。これが兵として法を行う心意気である。

「風の巻」
此道を学人の智力をうかゞひ、直なる道をおしへ、兵法の五道六道のあしき所をすてさせ、おのづから武士の法の実の道に入り、うたがひなき心になす事、我兵法のおしへの道也。

「空の巻」
心のまよふ所なく、朝々時々におこたらず、心・意二つの心をみがき、観・見二つの眼をとぎ、少もくもりなく、まよひの雲の晴たる所こそ、実の空と知るべき也。

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2025年08月18日

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