あらすじ
幽霊を見るのには、科学的な理由があった!
脳神経内科医の著者のもとには時に「幽霊を見た」と訴える患者さんが訪れる。認知症やパーキンソン病による幻覚である。近年の研究によりそうした症状は「睡眠」と深く関わっていることが明らかになりつつあり、最新の診断基準に基づき古今東西の怪談や幽霊譚を分析すると、それらはまったく別の顔を見せ始める! 「タクシーから消える髪の長い女の乗客」は高速道路催眠現象? 「神隠し」はてんかんによる記憶障害? なぜ「夏の夜」によく出るのか? それは決して非科学的な存在ではない──。
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Posted by ブクログ
幽霊という非科学的な現象を科学的に分析し、人類最後のフロンティアとも言える脳の不思議を探る野心的な内容。
個人的には、古くから伝わる神隠し現象の正体が、一過性全健忘症、あるいは一過性てんかん性健忘症ではないかとの考察は舌を巻きました。脳って不思議。。。
Posted by ブクログ
幽霊を見る、金縛りなどの心霊体験を脳科学の分野で解釈できないかと試みた一冊。
要はそれは夢だ幻視だと解釈してしまう話ではあるのだが、それがどういう脳疾患によって起こるのかというのを、医学に明るくなくても読めるように分かりやすく噛み砕いてくれている。
それでいて、その解釈を押し付けてくる書き方をしてはいないので、そういう意味でも読みやすい。
「脳科学で説明するならこうなるだろう」という提案なので。
また、例え脳に疾患がなくても極度のストレスや深酒、睡眠不足でも起こりうるのだとなると、霊感がないと思っている自分でも体験しうるのだと説得力もあった。
それでも科学的に解釈可能なのは、遠野物語の話を例にすると2/3らしく不思議な話は残るとのこと。
今の科学も決して万能ではないのだ。
この点からも、この本が心霊体験全てを否定しているわけではないことの証左になるだろう。
Posted by ブクログ
「今の時代、私たち脳科学者は「ゴーストバスター(Ghost Buster「幽霊駆逐人」)」ではなくて、幽霊と高度な脳機能をつなぐ「Matching Maker(仲人)」なのかもしれません。」
と、筆者がエピローグで記す。要は、古来から言われる、幽霊の正体見たり枯れ尾花、を脳科学の知見を基に解き明かした明解な一冊。
8月末、まだ暑い頃の日経新聞で書評を見たのがきっかけ。
暑い季節、「夏」というのも、怪談、幽霊話の必要条件であるという話も展開される。要は、夏って寝苦しいでしょ、睡眠障害も起きやすいよね、という話だ(それだけではないのだけどね)。
今年は、自身の健康管理のため、ウェラブル健康ウォッチを導入して、睡眠の質改善に取り組んでいることもあり、幽霊、幻覚を見ないで済むように、しっかり質の良い睡眠をこころがけたいと、そのモチベーションにもなった。
人類が獲得した高次脳機能の話も出てきて、ユヴァル・ノア・ハラリの言う「認知革命」にまで話が及び、なかなか面白かった。
理屈で分かっても、それでも怪談話は、この先もなくならないのだろうなと思う。あることを教える、教訓として後世に残す。そんな役割を物語は有しているからね。それ故の、高次脳機能なんだな。
サクッと、2時間未満で読めてしまうお手軽さも良き。