【感想・ネタバレ】南京事件 新版のレビュー

あらすじ

1937年,日本軍は中国での戦線を拡大し,戦争の泥沼に突き進んだ.その一大汚点としての南京事件.殺戮・略奪・強姦の蛮行はいかなるプロセスで生じ,推移し,どんな結果を招いたのか.日中全面戦争にいたる過程,虐殺の被害の実相,推定死者数等を旧版より精緻に明らかにし,事件の全貌を多角的に浮かび上がらせる増補決定版.

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Posted by ブクログ

南京事件での新版では、海軍の役割が新たに付け加わっていた。それは南京に陸軍が包囲する前に、海軍が爆撃をしたことと、南京占領時にアメリカの領事館代わりであったアメリカの船を攻撃したことであった。
 時間が切羽詰まって行われる占領式典のために、民間に入った兵士を必死で探して殺すということが行われていたことも具体例に基づいての記載がある。
 強姦の例だけではく、1日1000人もの強姦の数の報告もある。
 また、南京大虐殺を報道したジャーナリストが共産党員であったから、殺した人数を大幅に水増ししたというような意見を掲載して南京虐殺はなかったという記載をしている本もある。しかし、虐殺を目撃したのは、ジャーナリストだけではなく、アメリカ人の領事やドイツの領事も南京事件を本国に連絡していて、そこから世界中で大問題になり、松井石根司令官が更迭された事実が示されている。
 アウシュビッツと同様に南京虐殺の場所についても世界中の人が訪問しているのであろうか?

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2025年11月15日

Posted by ブクログ

広大な国に対して一部を叩けば短期で勝利できるという愚かさ、維持する能力もないのに国境を拡大しようとする愚かさ、国民の運命と自分の野心の区別もできない愚かさに支えられた鬼畜的行為が明瞭に説明されている。そして日本は戦後その事実に向き合わず、今では事実を否定する愚かさを露呈し、それを先導するのが政権与党という状態である。数々の書籍で言われている通り、事実に向き合い責任を果たさなければならない。

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2025年11月14日

Posted by ブクログ

 本書の旧版を出版して28年になるが、戦後80年を迎えるにあたり、新たに加筆をほどこし新版として岩波新書より出版された。著者は中国近現代史の研究者であり、関連書籍も多数出版しているが、南京大虐殺について歴史的経過を踏まえて、その期間、規模などを含め、被害者数についても詳細にあぶり出す。また、歴史修正主義者による欺瞞の論破も読みどころとなっている。1937年7月7日の盧溝橋事件から1937年8月15日以降の第2次上海事変、海軍航空隊による南京などの戦略爆撃、南京近郊の農村からはじまった虐殺と蛮行は、1937年12月13日の南京陥落以後も中国の首都を陥落させた歓喜、支配者としての軍の蛮行は筆舌に尽くしがたい。食料などの略奪、虐殺、放火はもとより、女性に対する強姦・輪姦と虐殺が顕著であったと著者は指摘する。中国人被害者の人数についても詳らかに考察するが、この間の国際的研究成果と同様に20~30万人が犠牲になったとする。歴史修正主義者は被害者数を少なく見積もることで論点のすり替えを行うが、本書を読めば記録、日記、兵士や中国生存者のエゴドキュメントから被害の悲惨さが明確となる。今現在でも、世界の各地で戦争や紛争により、非戦闘員である住民が犠牲を強いられている。なんとしても非戦を貫き、話し合いと国際協調で世界の平和を願う。願うが故に過去の歴史の事実に目を向け、自虐史観から自省史観の立場に立つことこそ重要だと考える。

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2025年10月13日

Posted by ブクログ

とても読みやすく、わかりやすく、勉強になる。

南京事件は陸軍参謀本部の想定外で中支那方面軍の独断で始まった作戦だったこと、上海での長い戦闘を戦った師団がそのまま転戦を命じられるなどしたこと、それゆえ疲弊し軍規が乱れていたこと、補給の後方部隊がなかったため進軍しながら略奪しなければ食べるものが確保できなかったこと、日本側司令官の松井石根は非主流派おいぼれ爺さんで功を急いでいたこと、中国側司令官も非主流派、かつ逃げる際に残る中国軍に絶対防衛を言い渡していたために、城内から逃げようとする中国兵が味方に撃たれまくったこと、国民の戦意を煽りたいマスコミが南京陥落前に「皇軍が南京入城」などと大誤報を打ったせいで日本軍は余計に焦って無茶苦茶な殺戮をしたこと、入城以降も実際はいない「便衣兵」を探して少しでも疑わしければ殺戮をしたこと、そもそも例え本当の便衣兵だったとしても国際法上は裁判で確定してからでないと処刑できないこと、松井石根らは南京が陥落すれば中国に勝てると思い込みそれをこの作戦の大義名分としたが、実際は目論見が外れて政府が重慶に移っただけで戦争は全く終わらず続いていったこと……。

とりあえず印象に残った事実を思いつくまま書いてみたが、これだけでも本書の収穫の多さがわかる。
きちんと資料の裏付けも示されていて、かなり勉強になった。

そして、南京に住んだことのある私からすれば日本軍が入場するどの門も馴染みがあり、城内から逃げ出した人々が長江を越えようとする埠頭ももちろん鮮明に記憶しており、いちいち当時の写真を見返しながら「ここでこんなことがあったのね…」と読んでいたのでなかなか進まなかった。
こんなことを乗り越えて美しい街に戻ってくれた南京に感謝したいし、本当にあの素敵な素敵な街が懐かしくて身悶えしていた。

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2025年09月23日

Posted by ブクログ

学生時代だっただろうか、ちょうど水道橋にて南京大虐殺に関する写真展を開催していたので、実際に起きたかどうかで今も揺れているこの事件について触れる機会を初めて得た。たぶん本書でも名前の出てくる村瀬守保さんによる展覧会だったと思う。そこに記録された凄惨な写真や、撮影者が現地民から得た衝撃的な証言の数々を目の当たりにし、私自身本当にこんな恐ろしいことが起こったのかと疑問を感じずにはおれなかった。しかし、日中戦争に関する資料の多くや、本書『南京事件』を読んでみて、この人間の所業とは思えぬ残虐行為の数々が、実際に我々の先祖によって行われたのだなと確信するに至った。

日清戦争、日露戦争と勝ち進んできた日本であるが、日露戦争に関しては英国の援助はあったが、殆ど準備不足という状態で開戦に踏み切ってしまった。対外戦争に慣れていない上に、物資輸送において障害となる海に囲まれた島国である日本はこの戦争の終盤において補給線が伸び切ってしまい、絶体絶命の危機に陥っている。東郷艦隊による天才的な戦術や米国の仲介もあってなんとか勝利することができたが、この兵站に関する問題は無視できないもので、今後の対外戦争においての教訓にすべきだったはずだ。

果たして日中戦争においてその教訓は活かされたのであろうか。否、前回の失敗からまったく学んでいなかったのである。
盧溝橋事件をきっかけとして、大山事件を起こし、戦時国際法やハーグ陸戦条約に違反する形で通告無しの戦略爆撃に踏み切る海軍も酷い有様だが、参謀本部が不拡大の路線をとり、上海制圧後兵站機関や軍紀を取り締まる法務部を置いていなかったというのに、南京攻略を独断実行した司令部に関しては恐ろしさすら感じる。兵站を無視し兵士の疲労も完全に無視する形で、たった一人の男が軍功を上げるためだけに南京侵攻に踏み切ったことに、この事件の原因の多くがあったと思う。碌な計画も立てず現地徴発に頼るとなれば、戦地で死ぬ思いをしている兵士たちがどんな行動にでるかなど火を見るより明らかだったはずだろう。当然起こった後のジェノサイドを「勝利」と扱い、目を背けたツケが太平洋戦争になって返ってくるのだが、それはまた別の話だ。

しかし極限状態に追い込まれた人間というものは本当に恐ろしい。10代前半の少女から老婆まで強姦されまくり、若い男性は敗残兵の嫌疑をかけられて略式裁判すら行われずに処刑された。食料徴発のために日本軍兵士に襲われた近郊の村々でも同じような殺戮と強姦・略奪が行われ、放火までされた始末だったという。皇族が現地にやってくるとのことで、もしものことがないように、と城内では徹底的な敗残兵の処刑が行われたが、その大多数はただの民間人だったという。これが嘘だと私も思いたかったが、外国人宣教師や、同盟国であったドイツの書記官ですらこの事件に関しての情報を公開しているし、1938年のニューヨークタイムズにおいても取り上げられている。
どれだけ日本人の一部の人々が目を背けようとしたとしても、誰も事実から逃れることを許してはくれない。

本書の一部にも記載があるが、全ての日本人がこのような残虐行為を行ったわけではない。しかし、一部の人々が行ったとしても、同じ日本人として責任を感じなければならないと思う。今後、このような歴史と被害者に回復不能な傷跡を残す戦争犯罪を起こさないためにも、我々はこういった資料をよく読み込んで反省していかなけばならないと私は考える。

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2025年09月15日

Posted by ブクログ

膨大な資料をもとに書き上げられた、南京事件の背景から虐殺の手口、一切軍紀を守らない日本軍、おぞましい強姦、ここまでの資料があって、「南京事件はなかった」などとヘラヘラ言えるはずがない。
南京事件の実在が確証でき、もう読み進めるのが苦しくてたまらなかった。目を塞いでしまいたくなる気持ちもあったが、なんとか最後まで読み切りました。
最後の章で、なぜ「南京の人口は20万人」などというデマが市民権を得ているのかも分かりました。当時、複数のデータが南京には100とか150万近い人口があったと示している。(周辺地域のどこまでを含めるかとか、ちょっとややこしい)
自民党が国会の中で汚い手を使い、安倍政権の元、「20万人」を議事録に書かせ、「政府が否定しなかったから公式見解」と身勝手なやり口で事実かのようにしてしまった。
また、「死者数については諸説あり、確定していない」とまるで全く概数も出ていないかのように、ともすれば南京事件があったのかなかったのかあやふやなように教科書にも書かせているという。許すべからざる愚行である。

日本人がいくら自分達に耳障りのいい歴史だけを選んでも、都合の悪い歴史を改竄しても、世界は覚えている。
いつか日本が、「あの国は検証も反省もしない。信頼できない」と言われる日が来るように思えて仕方がない。

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2025年08月28日

Posted by ブクログ

膨大な資料を元に南京事件の全体像を客観的に書いた歴史書ですが、あまりの惨たらしさに心が真っ暗になります。具体的な殺戮、暴行内容は恐ろしくてここには書けませんが、日本陸海軍の普通の兵士がここまで残虐な悪魔になっていたとは信じられない思いです。ですが事実です。証拠は数多くあります。殺害した人数も驚愕ですが、その方法や状況、笑いながら等、殺人者の心理もおよそ人間の仕業とは思えません。これだけの悪行の事実に目を背け、被害者たちにしらを切り続ける自民党日本政府とは一体何なのでしょう。日本人であることが恥ずかしく、中国や諸外国の方々に怖くて会えません。おそらく南京以外でも同じ犯罪を犯していたのではないかと思います。敗戦後80年、心ある日本人ならぜひ読むべき本だと思います。

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2025年08月14日

Posted by ブクログ

ただひたすら惨い、過去の日本軍の一大汚点。中国で南京事件を取り上げた映画が公開されて、日本人の多くが、また中国が反日感情を煽ってるよと思ってる可能性があるが、そういう次元の話じゃない。
被害国は絶対に忘れないだろうし、原爆の話ばかりで加害者側の話は日本の歴史の授業でほとんど触れられないけれども、日本側も汚点をきちんと理解・反省した上で対話しなければならない。

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2025年11月24日

Posted by ブクログ

南京事件をもっとも進めた張本人は、天皇裕仁そのものである。我が国が敗戦国となったのは、裕仁に大きな責任があり、それを今からでも問わなければならないかと。

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2025年09月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

あまりに、凄惨でひどすぎる。日本人は、兵隊になったら、殺人と強姦好きになるのか?もし、兵隊になったら、当時兵隊だったらと思うとゾッとする。
 何万という女性が強姦されたこと。十六歳と十四歳の姉妹、三人くらいの日本兵に輪姦され、虐殺され、一人の女性は局部棒切れを押し込まれていた。一歳の子は、刀で頭を二つに切り裂かれていた。
 虐殺・強姦した兵士の顔が見えない。帰国できた兵士はどんな生活をしてきたのか?彼らは、靖國に集うのだろうか?
 これだけの資料があるのに、南京事件をなかったものにしたい人たち。強姦を繰り返す日本兵。これが皇軍、日本の大和魂、英霊の真実。日本兵の真実をなかった事にしたいから、認めたくないのだろう。
 このことをないことにするから、何も変わらなくなる。現在にも通じる女性を男たちの性の傀儡と思う男たち。彼らの系譜。男は、刃物を持って女性を刺し殺す。俳優に、女性アナを性接待で献上するテレビ局。クスノキを歌いながら、女性に卑猥な言葉を投げかけて楽しむ歌手。
 本当に悪いやつは誰だったのか?
コントロールできない将校、後追いで承認する大本営。
ミスリードするマスコミ。踊らされる大衆。熱狂的な大衆が大本営の背中を押す。 
 大衆が一番悪いように思えてならない。大衆の無関心。南京事件も日本が犯した過去の過ちも見ないようにしている。考えないようにしている。だから、靖国で笑って集合写真を撮る政党が人気を博す。みんななかったことにしているから、あの頃と何も変わらない日本。

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2025年08月29日

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