あらすじ
闘争と潜伏に明け暮れ、気がついたら二十年。活動家のおれも今や40歳。長い悪夢からようやく目覚めるが、まだ人生はたっぷり残っている。導かれるように向った京都で、おれは怪しげな神父・バンジャマンと出会い、長屋の教会に居候をはじめた。信じられるものは何もない。あるのは小さな自由だけ。あいつの不在を探しながら、おれは必死に生きてみる。共に響きあう二編を収めた傑作。
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Posted by ブクログ
軽妙な文体で読みやすい。この世代の人はこういう時代を生きて、みたいな世代感が全然分からないためになんとなくぼんやりと霧の中を行くように読み進めていたんだけど、何にも信じられないから神様だけは信じられる、毎日謝ってるっていうバンジャマンの話はすごくわかるなあと思ってしまった。
江崎は大人は生でぬるついて気持ち悪いっていうけど、私は子供の方が生で怖い。神様は人の罪なんて聞かずに応援しろ、祈れって言うけど、ただ聞いてくれるのってむしろすごい応援だと思う。なんか根本が違うんだろうな。江崎はちゃんと人が好きな人というか、結局のところそうだからセクトみたいな活動だってできるんだろう。そう考えると「愛がない」バンジャマンとは正反対の人なんだろう。
Posted by ブクログ
遅すぎた中年、福岡に向かい、ふと京都に降りる。
そこには現在を把握していない、双子がいたが、今はどうやら。
コスプレ神父バンジャマンと交流。
結局双子に会うことはなかったが、その不在こそが隠れた透明の背骨である。
それは作中に形を変えて言及される。
「不在は、美化される。キリストだってそうだ。」
キリストなんかより歌子婆さんみたいな人が今現在生きているってことを美化したいね、という独白や、
なんで大人ってドライでソリッドではなく、生、なんだろう、といった感覚やに、
大いに共感。ずっとそう思っていた。
ちなみに「アブセント」はその双子の片割れ。