あらすじ
生い立ち、家族、病気、身近な人たちの死、短歌、生きるとは……?
穂村弘作品の解像度が上がる「弱さ」を巡る語り(ライフストーリー)
著者の語りを通して「弱さ」「ワンダー」「シンパシー」「生きる」
「生きのびる」といった著者の作品に通底する重要なテーマにも迫る。
穂村弘入門としてお勧めしたい1冊。7月11日、満月の日に発売!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
この本は学術書なのかと思っていたのですが、歌人の穂村弘さんの硬めのエッセイのような内容でした。
穂村さんは42歳の時に緑内障の診断を受けたそうですが、そこを中心に書かれています。
穂村さんは大学は北大で山岳部より安全だという理由でワンダーフォーゲル部に入ったそうですが、北大はすぐ退学されて上智大学の英文科に入りなおしたそうです。
そのころからベンチプレスで筋肉貯金を始め、就職はSE(システムエンジニア)に。
そして緑内障の診断を受けられるのですが、緑内障は完治する見込みがない病気で、「ついに私は不治の病になってしまったんだな」と思ったそうです。
緑内障に自分でできることは目薬のみ。
あとはお医者さんに言われて本気のラジオ体操を一日四回されているそうです。
目がみえなくなると思ったら物欲がなくなったそうです。
あとは眼科医の後藤克博先生との対談。
精神科医の春日先生との対談もあります。
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私もコロナ前ですが市の健康診断で眼圧検査か何かで引っ掛かり「緑内障の疑いがあります」と言われ再検査に行きました。
再検査では特に異常はなかったのですが「二年に一度は検査を受けてください」と言われましたが、その後行っていません。
私は子供のころから就職の時の健康診断まで、眼だけは丈夫で視力は両眼とも1.5だったのでまさかの緑内障疑惑でした。失明してしまったらという恐怖は、私も再検査前に味わい穂村さんの恐怖はわかるような気がしました。
Posted by ブクログ
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私の若い頃には世界が滅びるとか日本がダメになるとか、そういう感覚はありませんでした。当時は、世界はとても広く、ポテンシャルがまだまだあると思っていました。そうした条件下においては、他人と傷つけあっても互いに別の場所で生きていけばいいだけで、無数の選択肢があると考えることができました。
でも、時代の流れの中で近年感じるのは、全員が方舟に乗って危うい運命を共有しているような感覚です。そんな状況だと、方舟の上で喧嘩するとか焚き火をしちゃうとかいったことは、非常にリスクが高くなってしまいます。加害性について全員が敏感になる必要がある。かつてのようにそこにポテンシャルがあれば互いに傷つけあってもいいだろう、といった考え方は今は成立困難に思えます。
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ここ10年で、どんどん世界のほうがぼくらに向かって迫ってくるような感覚がある。だからぼくらは、そのことが恐ろしくなって似たような仲間と必死にコミニュティを築いているんだと思う。方舟の中で、グループごとにフェンスやバリケードが作られ、それぞれの生活圏が生まれていくように。
Posted by ブクログ
穂村さんが眼の病で悩んでおられたとは知りませんでした。小さな頃からメガネ生活で、ご親族も失明を経験された方がいらっしゃるそうです。目に関する歌(ほむらさん以外の詠み手も)や主治医との対談など、盛りだくさん。いつもの軽やかなほむほむさんとはまた違う一面を知って、ますます詠まれる歌にも深みを感じます。
Posted by ブクログ
短歌自体はあまり読まないし詠まないのですが、穂村弘さんの短歌に対する優しいコメントが好きです。
はじめて穂村さんのエッセイを読んだけど、面白かった。
穂村さんはけっこうダメ人間な感じで四十代まで来て、「社会の片隅で、役に立たない自分が役に立たないことばかりを考え続けた結果が、現在のものを書く職業につながっているのかもしれません」と書いてある。
「けれども人間の最終的な目標は生きるのほうのはずです。多くの人が死ぬときに後悔するのは生き延びることに資源を割き過ぎたということなんですね。「もっと純粋に生きることに熱中すれば良かった」と思う。」
ゆっくりと考えさせられました。
Posted by ブクログ
親友が緑内障で、少しづつ進行しているので心配していたところ。
本を勧めるよりは、読んだことを伝えようという使命感も相まって。
穂村さんは、明らかな症状がでていないご様子であったが、遺伝性であり家族の状態を知っていることもあり、ここに綴られた想いや不安はいかほどかと察する。
第4章「満月が欠けている—瞳を巡る短歌—」
それぞれが心に沁みます。
Posted by ブクログ
緑内障になったと同時に自身の弱さを吐き出し
不安なこと、いまの思いを正直に書き
読者に届けてくれた。
眼科医の後藤先生、精神科医の春日先生との対談は
わかりやすく、読者が疑問に感じていることを
種村さんが代わりに問いかけて安心感を与えてくれる。
P.078
〈究極的には『どうせ死ぬんだから何でもやればいいんだ』
という話になりますが、
そうは言ってもなかなか踏ん切りがつかないものです。
『恥をかいたら嫌だ』という気持ちも絶対あるわけですから〉
その一歩が踏み出せない。
そういうことは多々あるけれど
エッセイを読み、少しだけ勇気をもらいました。
Posted by ブクログ
歌人・穂村弘さんが、自身の緑内障や家族、これまでの半生のことについて語った本書。
著作をコンプリートしていない穂村ファンとしては、穂村さんの上半身が(エッセイのなよなよしている印象とは裏腹に)しっかりされている理由がわかって嬉しかった。
そうか、若い頃のベンチプレス!
「シンパシー/ワンダー」、「生きる/生きのびる」のおはなしも改めて聞かせていただき、再確認した。
緑内障の主治医の後藤克博先生、長年のご友人で共著も出されている春日武彦先生との対談も興味深かった。
調べると、後藤先生は短歌好きで、歌集も出されているようだ。読んでみたい。
瞳を巡る短歌、という、瞳に特化した他の歌人の短歌の短い紹介はあるが、穂村さん作の短歌は紹介されていない。
歌人・穂村弘の短歌を、他の歌集である程度深堀りし、彼の人生観や価値観に沿って楽しみたいひとや、緑内障について少しでも知りたい患者さんや近しいひと、ほむほむのことなら何でも知りたいファンに。
語り起こし、という形態なので、緑内障がだいぶ進行したのかと心配したが、「そんなに怖いことになってない」そうで、一安心した。
Posted by ブクログ
いつものホムホムの面白エッセイではなく、緑内障と診断されたことの付随しての人生の振り返り?みたいな内容だった。
お父さんは90過ぎても山登りをしてたというからすごい。
死ぬまえに髭を剃ったエピソード、宮沢賢治がはやり死ぬ前に全身をオキシドールで消毒してから逝ったというエピソードを思い出したよ。
清めてから逝きたかったんだね。
Posted by ブクログ
穂村弘のエッセイが好きで。
この本はエッセイではなく、語りを編集者がまとめたものと、医師との対談。
エッセイのような洒落や落ちはないが、語りからはそういうものを削ぎ落とした芯のようなものが垣間見えて面白かった。
怖がりで臆病で鈍感、を自認する穂村弘の、家で過ごす普段の姿というか。それを見せる強さや励ましへの優しさも。
Posted by ブクログ
『まず巨大な不定形の死があり、それをひと切れちぎってできたものが生というイメージがあります。その間にのみ一時的に生の個別性が発生して、またそれが不定形の死の中に戻っていく』
この一文が良かった
Posted by ブクログ
緑内障によくないこと
息を止めるのと重いものを持ち上げるのを同時に
戦闘機に乗ること
緑内障になり、41歳で結婚を提案され、会社勤めをやめる
目薬の処方
料理に似ている 薬の組み合わせと相性
医師にとって困る患者=治療方針に合意しない 副作用がいやで薬を勝手にやめる
Posted by ブクログ
自分は穂村弘が「書いた」ものが好きなんだなと改めて思った。対談はどちらもよかった。
自分も近視が強いのでかかりつけ眼科の勧めで年一回視野検査を受けていて、今のところは視野には変わりなしで毎回「今年も逃げ切った……」みたいな気持ちでいる。そういう意味では将来への心構えになるというか、実用的な本でもあった。