あらすじ
世界史の中で封印され続けてきたタブー「同性愛」。古代ギリシアから、ルネサンスの禁欲、帝国主義と二つの世界大戦、性意識の増大した二十世紀に花開いた美と多様な価値観。その裏側には、知られざる壮大なホモセクシャル・ネットワークがあった。女性嫌いのルイ13世、英国の同性愛文化の開花、ホモセクシャルの夢の島、ゲイの王国、ホモ狩りの50年代、ナチの同性愛etc.衝撃エピソード満載。
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Posted by ブクログ
海野弘さんて、どういう人なんだろう……。
数年前に購入した彼の本は「千のチャイナタウン」という今はなきリブロポートから出た本で、ちょうど今から10年ちょっと前、香港が中国に返還される直前、自分の中でちょっとしたチャイナタウンブームが起きていた頃だった。その時もいろいろな引用でモザイクのように彩られた著作にワクワクさせられたものだが……。
で、同性愛。
それも、女性よりはむしろ男性の側に比重をかけたこの世界史は、なんかとにかく凄かった。
ギリシア哲人の「天上の愛」みたいなのはドンと来い、な感じで読み始めたが、世紀末(この場合は1800年代末期)になると、あれもこれもどれも彼も、文学者、芸術家、映画俳優(は、もう少し後代か)を問わず、みんな、ホモセクシャルです。
というか、世界には「ホモソーシャリズム」というものがあって……と、読めば納得なのだが、好きな画家、音楽家、文学者が漏れなく(フォースター辺りは最初から同性愛者だとわかってはいましたが)「ホモです。」というのはなかなか受け入れ難いものが。
まあ、仕事柄、どうしても世の中で言うところの「ホモ」(本当はホモじゃなくてBLなんだけど)と無縁ではないので読んではみましたが、でも実際に、社会性と男性性はちょっと切り離せないものがあるような気がします。
オススメ度が高いのは、目からウロコの面白さと、強引さ、網羅する世界の広さに圧倒されたせいかもしれません。でも、面白いですよ〜。
Posted by ブクログ
以前にハードカバーのほうを書店で見かけたとき、えらい背表紙の上部が痛んでいて、かなりの人が手に取った痕跡が見られた。あんたら好きね〜、と思いながら棚に戻した私も同類ですか、そうですか(笑)。
そんな気になるあの本が、このたびお求め安い文庫になりました!
私はBL好きではないし、腐女子というわけでもありませんが、まあ、どちらかというと「隠しておきたい、人に知られたくない性癖(最近この言葉の意味が違ってきてるよなー、と思いながら)」の話というのに興味があるので読んでみたいと思いました。
【買いました!】
面白かった!麻薬のように面白かった!
著者の海野弘さんは美術史が専門なので、この本に心理学的・精神分析的な同性愛についての掘り下げを求めてもあまり意味がない。むしろ、これまでの美術史・文化史では見えてこなかった、あるいはなにか納得のいかなかった部分が、「ホモセクシュアル」というフィルターをかけることによって、隠されていた繋がりが鮮やかに浮かび上がってくることに、著者自身が欣喜雀躍している様子が伝わってくる。文章も読みやすく、「一刻も早くこのことを人々に伝えたい」という意志が感じ取れる。
白眉は後半20世紀に関する記述だが、それを語るのに古代から19世紀末までの同性愛を巡る歴史を俯瞰しなければならなかったので、ずいぶん長い前段になってしまった、とあとがきに書かれている。でも、十分に面白かったです。
それにしても、ホモセクシュアルの男性たちの多くが、恋愛関係が終わってもその後友愛の絆を長く保ち続けたり、結婚して家庭を持ったかつての愛人と家族ぐるみの付き合いをして、深い絆で結ばれ続けていたりするのを知って、静かな感銘を受けました。著者の眼差しも暖かく、好感が持てます。
とにかく登場する人物の数が夥しく、百科全書的な要素もあるかもしれませんが、基本的な世界史、文学史・美術史・文化史に関心があって、ある程度の知識があれば読み進めるに苦労はしないでしょう。(カタカナの名前に混乱しなければ大丈夫)。
文学や美術を語る上で「ホモセクシャル」という新たな視点で読み直すことが、今後タブーではなくなってくるでしょうから、論文を書こうとしている学生さんや研究者の人にはよいヒントを与えてくれているような気がします。
Posted by ブクログ
ヨーロッパ王侯貴族のバイセクシャルの多さ、その中でもタブー視されてきたホモセクシャルの歴史的事情が描かれている。ナチズムの遠因となったオイレンブルク事件は、盛んではあったが隠さねばならない上流社会の同性愛の在り方を象徴している