【感想・ネタバレ】介護未満の父に起きたこと(新潮新書)のレビュー

あらすじ

82歳の父が突然ひとり暮らしに。幸い健康だが、家事がほとんどできないため、その生活に黄信号が灯る。唯一の家族である娘は、毎食の手配から大掃除までをあえてビジネスライクにサポート。それでも日々体力と記憶力が衰える父に、「ペットボトルが開けられない」などの難題が次々とふりかかる。「老人以上、介護未満」の身に何が起きるのか? その時期に必要な心構えは? 父のケアに奔走した娘が綴る、七転八倒の5年間。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ジェーン・スー氏の前著で破天荒な父親の世話をする話の本を読んでいた。

その後齢を重ねていく父親の世話をどのようにこなしていったかを赤裸々に描く。

要介護度で言えば介護未満。もっと重篤な高齢者はいっぱいいる。(私が見送った両親も最後期は結構重篤だった)ジェーン・スー氏の父親は介護未満なのだが、

フレイル防止のためにちゃんと食べさせる、汚部屋になりかけた居室をなんとか綺麗に保つ、というような課題を著者は遠隔操作で行う。そのためにまずは行動計画書だ、と計画を書き始めるところ、コンサルタントとしては深く頷ける。

しかし、ジェーン・スー氏の父親は手強い。面倒なことはしない。怒られると思えば、「やった」「できた」と平気で嘘をつく。かといって「写真を撮って送って」と言っても「チェックだな」と察して画像は送られてこない。何もしないで過ごしてきた昭和の男。使えない…

介護は要介護になったら始まる、ということではないことがよくわかる本。

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2025年10月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ジェーン・スーさんというとエッセイストの印象です。ただ、本作のタイトルだけを見るとルポ・ドキュメンタリな雰囲気。

やや癖のある父上の弱りつつある現状とその対処への奮闘を綴ったのが本書であります。介護認定を受けるには元気、でもいつ倒れても・弱ってもおかしくない。そんな親を支える一人娘。父親の資力も多くはなく、娘も自営の一人暮らし。片方が倒れると共倒れとなりかねないなか、筆者は父親の健康な独り暮らしを引き延ばすべく奮闘する。

・・・
これまで介護に関する類書を少しは読みましたが、この本はもうユーモアあふれるエッセイ、という感じで暗さが余り見受けられません。

むしろ光るワードチョイスで、父親への怒りが笑いへと昇華されます。

親の面倒(汚部屋の片づけ)を「フジロック」になぞらえ、父親は外タレ(ミック・ジャガー)、娘(筆者)はプロモーター。イベントを成功裏に収めるため、我儘なタレントにへいこらしつつ、イベントを終わらせるように奮闘する娘。

また、父の体重が減らぬよう、現状維持を目指すさまを「カーレース」に例えるのも良かった。父親はドライバー、娘(筆者)はメカニック。パフォーマンスは体重の上下、といったところ。パフォーマンスが悪い(体重がへる)時、それはドライバーの責任か、メカニックが悪いのか。もちろん時々で原因は異なりますが、目的はパフォーマンスの向上(この場合は体重維持)。

たとえ話をすることで、感情論に走りがちな親子関係を冷静なめで捉えなおすことができるのでしょう。

・・・
その他、LINEでの食事状況の確認や、お取り寄せ系の食品で父親の食欲を「釣る」など、フィットするしないは各家庭であろうかとは思いますが、食事のとらせ方としては参考にはなりました。

また、父親の病院のスケジュールを娘のグーグルカレンダーかなんかに入れ、父の家にアレクサみたいなのを導入し、父親のスケジュールを朝に読み上げさせるとか。

持てるテクノロジーを可能な限り使い、一人っ子と一人親の沿革介護を行ううえでのひとつの解となりうる話かと思います。

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ということでジェーン・スー氏の介護系エッセイでした。

重たくなく、というかむしろ笑いつつ読める良書でした。

親と離れて暮らす方、親御さんが70代80代以降の方にはおすすめ出来る作品かと思います。

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2025年10月23日

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