あらすじ
両親を早くに失った私は、幼い頃から祖父を一人で介護していた。私が十六歳の時に祖父が亡くなり、火葬され……。自伝的な「骨拾い」のほか、「伊豆の踊子」の原形をなす「指環」、謎めいた高貴な少女が馬車を追いかける「夏の靴」、砕け散ってしまった観音像を巡る「弱き器」など、四十年以上にわたり書き続けられた豊穣なる掌編小説122編。神秘、幻想、美的感受性等、川端文学の粋が凝縮されている。(解説・吉村貞司、小川洋子)
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Posted by ブクログ
短編集がたくさん。
掌におさまるような小さな短編、という意味でのタイトルだけれども、掌なんかに収まらない光が溢れてくるような日本語の美しさに魅了された。
気に入ったものを残しておきたいと思う。
『木の上』
子ども目線の独特の雰囲気、大きな世界の中のちっぽけな世界で、でもここなら安心だと強く生きる描写が素敵。
『日向』
なんともいじらしい。
夕陽に照らされる人物が浮かんできて、その尊さに胸がきゅっとなった。
(夜一緒に過ごすようになるのだから)顔も見なれるわ、というセリフがとっても刺さった。
『ざくろ』
出征していく男子と偶然の間接キス。ざくろの実にその歯形を見つけて自分も齧る描写が細やかで、心理描写も鮮やかでとても好き。
『化粧の天使達』より「花」
かの有名な台詞、「別れる男に、花の名を一つは教えておきなさい。花は毎年必ず咲きます。」
私もこんなこと言ってみたい!
その花の咲く時期が来たらその女性のことを思い出してしまうように仕向ける。悪い女の人だよ…