あらすじ
「将来の夢」を思い出せない全ての大人達へ
「才能を持った人間なんて、実はたくさんいる。でも、天才は違う。天才は、才能を見つけた連中が、一方的にそう名づけるんだ」
デビュー10年。爆発的に売れることはないけれど、きちんと締め切りを守り、編集者に無理難題を押し付けずに着実に仕事をこなす作家・星原イチタカ。一方、同期デビューの釘宮志津馬は偏屈で横暴であることを自覚しながらも、大人気作家であることから周囲に丁重に扱われることに対し憤りを感じている。イチタカの才能を軽んじる向きもある中、釘宮だけが彼の「天才」性を”観測”していた。
藤井聡太七冠の記録を塗り替え、史上最年少でプロ入りした中学生棋士、タピオカミルクティーの味もマカロンの味も知らない、かつての「氷上の妖精」、気がつかぬままに抜群の歌声を持ち、オーディションを駆け上がる天才中学生……。
描かれるのは5人の天才たち。彼らと、彼らを観測し続けた人々の姿が紡がれる連作短編集。
【目次】
星の盤側
妖精の引き際
エスペランサの子供たち
カケルの蹄音
星原の観測者
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
将棋、フィギュアスケート、歌、競走馬、作家などの様々な分野の天才や元天才たちと、彼らを観測し続けた人々を描いた連作短編集。天才だけでなく、観測者によって光と影も伝わってくる。好きなだけでは才能に直結しないし、実力以外の運に振り回されることもあり、その中で競い合って勝ち続けたものだけが天才と呼ばれる。自分とは別次元の存在だと思ってしまうが、どんな天才も苦悩しながら、ここぞという大舞台で最高のパフォーマンスを発揮して歴史に名を残すからこそ、天才に惹きつけられる。所々で登場人物のその後が見えて、微笑ましかった。
Posted by ブクログ
色々なジャンルの天才の苦悩や裏側を垣間見えて斬新でした。
お気に入りは「エスペランサ〜」
ボランティア塾で指導する七音(リズム)はシングルマザーの親を持つ勇仁の歌の上手さに貧困層からの脱却を勧める。だが、勇仁はそれを受け入れるか迷っていて…
家が裕福だから幸せとは限らない。でも、貧困層の子供達の未来は決して裕福ではないのが世知辛い。
勇仁がオーディションに受かったのか?気にはなりますが、親ガチャに抗う七音の姿が爽快でした。
Posted by ブクログ
天才になれたらな、なんて、幼い頃はよく思っていた気がする。でも確かに、天才なんて勝手に周りが呼び始めるのだ。周りが囃し立て、才能ある者を天才として作り上げる。本人が天才を背負うことの大変さも考えず、プレッシャーに押し潰されてしまうことだってあるかもしれない。もしそうなったときには簡単に忘れて、次の天才探しを始めてしまう。無責任だと思うけれど、自分もそれに乗っかってしまっている一人だと思う。
才能が開花したのが遅ければ、それを見つけてもらう機会がない。才能を伸ばす経済力がなければ、それを諦めるしかない。たとえ才能があったとしても、タイミングや環境、誰かとの出会いなど、いろいろなものがうまく重ならなければ才能なんて簡単に見過ごされてしまうものなんだろうな。