【感想・ネタバレ】教育格差の真実 どこへ行くニッポン社会(小学館101新書)のレビュー

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Posted by ブクログ 2013年06月23日

2008年に出された本なんだよね。かれこれ5年前。5年後にも関わらずあのころよりはますます状況が悪くなって行っている気がするんだけど。
本当に教育格差って恐ろしいんだってことを実感した。こわすぎる。こんな格差社会の中で生きて行くなんて、人間不信になっても仕方ないかもって思う。
そして、教育と経済がこ...続きを読むんなにもぴったりとくっつき合っている分野だってこともわかった。
これをふまえた上で、私は博物館教育という分野から何ができるんだろう?

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Posted by ブクログ 2011年06月29日

現実に教育を受けていても、受けさせていても、
その評価は良く分かっていなかったことを実感。
習熟度別クラスの真実を知って、怖くなった。
教育とは、流し込むことではないことが分かった。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2011年07月19日

二人の対談が面白い。自分の中の葛藤を内面化することを阻害するものの一つとして、ホームパージや掲示板を挙げている。深く格差社会が進行していることへの視点が的確。そう!’自分の頭で考え、心で考える’人生を過ごしたいものです!’事実の本質を見抜く力量を子どもたちに身につけさせたい’に同感。経済への説明もい...続きを読むい。

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Posted by ブクログ 2023年07月10日

本のタイトルが表している以上に、色々な要素が入り組んでいて、学校教育の枠を完全に超えていたという点で良かった。
森永氏は話しすぎるきらいがあるけれど…。
もう15年前の本だけど、すべて現状にも言えることだった。
はっきりものを言うけど物腰が柔らかい尾木ママ、とても良い。

P.79 森永
日本のエリ...続きを読むートは、みんなオックスフォードとかハーバードとかシカゴとか、そういう米英系の大学に留学するんですよ。9割以上というか、99%ぐらいかもしれないな。留学当初は、それなりの人が行ったとしても、耳が慣れていないので、講義を聞いていても英語がわからないんだと思うんです。その最初の授業では、重要な仮定の話をしているのに、「えっ?何を言っているんだろう」という感じだと思うんです。それで二回目、三回目になって耳が慣れてきたころには、もう理論が始まっちゃっているわけですよ。それを勉強しているうちに、「ああ、こういうのが正しい社会なんだ」というふうに大きな勘違いをして、そのまま日本に帰ってくる。そして、日本をみると、日本は違う社会なんですね。和をもって尊しとなすという社会です。それを見て彼らは何と思うかというと、「あれ?理論と違うぞ」と。そこで二回目の勘違いが始まるんです。「日本社会が、新古典派の理論に合わないのは、日本社会が間違えているからだ。だから、この日本社会を新古典派に合わせよう」という発想で行われているのが構造改革なんですね。今の教育政策にしても、経済政策にしても、社会政策、医療福祉政策も、全部同じ思想なんです。強い人だけが良ければいいというもの。

P.103 尾木
それこそ偽装請負じゃないですけれども、"見せかけだけの達成"なんですよ。だから習熟度別授業というのは、悪く言えば「偽装学力向上授業」なんですよ。下の子は頑張っても学力自体はたいして上がらない。学力が上の子も下の子も共通の教室で、それぞれの多様な生活体験と個性的な想像力を働かせながら、一つの心理や真実に向かってハシゴ段を上るようにみんなで上る。同じ正解に達しても、その質が違うんです。立体的で実に豊かな認識を獲得できるのです。これこそ本当の学びなんです。ただトレーニングを積んで答えが合えばいいのではないのです。そんなので「できる子」はちっとも優秀でも何でもない。条件反射能力に長けているだけで、今日の不透明な時代を切り拓く力は育っていませんね。今、日本は"習熟度別神話"のとりこになってしまっています。早く脱出しないと子どもの学力が低下するだけでなく、教師の教え方の技量も落ちて取り返しがつかなくなる危険がありますね。

P.106 尾木
今、国際社会では、2000年から三年ごとに、読解力と数学的リテラシーと科学的リテラシーの3分野に及ぶOECDによる「生徒の学習到達度調査(PISA)」を実施していますが、そういう国際社会が求めてくる学力の理念と、日本は大きくずれてしまっているわけですよ。PISAのブライアン事務局長が日本で記者会見したときに、「日本の学力観は古い。これは違いますよ」というように明確に批判しているんですが、あまりメディアに乗らなかった。しかし、文部科学省は分かっているんです。わかっているからこそ、2007年から始まった全国一斉学力テストの中に、「活用」という領域を入れました。「活用」とは、実生活の中で「活用する力」、リテラシーのことなんです。つまり、活用の育成とは、言葉を言い替えれば、"市民教育"でもあるののです。現実生活のなかで諸課題を解決していける力の育成を目指すもので、マスコミ各社が言う「応用」ではないんです。文科省は、活用の力をつけないと国際学力調査では上位を占めることができないので、今、活用ブームみたいになっているんですね。ところが実は、それは"市民教育"の視点が欠落した「活用ごっこ」にすぎないんです。
現場の優れた教師の実践を聞きますと、習熟度別ではなくて、「アプローチ別」授業を展開しているところもある。先日、多摩の中学校に視察に行ったときには、具体物を使ってアプローチをする授業と、抽象的に一気に入っちゃうよという授業と、好きな方を選ぶようになっていました。

P.110 尾木
一人の教師が三つとも(すべての習熟度のクラスを)担当するという時間割のやり方でやっている学校があるんですね。その教師に言わせると、最も質の高い学習ができているのは一番落ちこぼれのこだまコースだというんですよ。例えば、時間と距離の関係の学習だとか、小学校5年生ぐらいでやりますね。そうすると、のぞみコースは硬式が頭に入っていますから、瞬時にして、それこそ一秒そこそこで答えが出ちゃうわけですよ。ところが、こだまコースの子は、「先生、そんなこと言ったって、その道はひょっとしたら砂利道かもわかんないし、つるつる滑ってなかなか進まないかもわからない。坂道だったらもっと時間がかかる」とかね。つまり、自分の生活体験、生きてきた僅か10年程度の体験をフル動員しながら一生懸命考えるわけですよ。そういう発想をするこの姿を、実はのぞみコースの子にも見せたいというんですよ。「あんたたち、それにこたえられるのか」というのはすごく重要な課題で、だから学習の質は、こだまコースが最も高いと。「点数では開きがあっても、発想の分野では、あいつのほうがすごかった」とか、そういうひとりひとりの多面性を"学び合い"と現場では言いますけど、それができる。それが日本の学校教育の良さだったんですよ。それが今、解体されてきている。

P.119 尾木
恣皆調査を全国規模で実施すると、必ず学力が落ちるというのが私の持論なんですが、それは、どの学校も、本気で全範囲の学力アップを目指さない。出る問題を分析して同じ傾向の予想問題を集中してやらせるからです。そこの領域の問題に関しては強くなるんですよ。だけど、文科省も言うように、学力調査は学力のほんの一部分にすぎないのです。そんな数値が上がろうが、下がろうが何のことはないのです。そうすると、国家全体でやっているときには、「何番になった」「今度はうちが抜いた」とか言って喜んでいますけれども、諸外国と比較したり、学力のそもそも論から言えば、バカみたいなレベルで競い合って、みんながバカになっていくだけという感じがすごくするんですよね。

P.127 森永
一番必要な学力とは何かというと、興味を持てる能力だと思うんです。
それは、支配者の人たちの考え方からすると、水から興味を持って考えるような労働者をつくりたくないんだと思うんです。どうしてかというと、そこで反発が起こっちゃうからですよ。

P.132 尾木
2011年から新しい学習指導要領に移行するんですけれども、その中で三つの学力を打ち出しているんです。それは、「思考力」、「判断力」、「表現力」の3つですね。日本と学力世界一のフィンランドとの学力観を比較してみると面白いんです。フィンランドは1994年に教育改革に取り組んだんですけれども、ちょうどその直前、91年にソ連が崩壊して、輸出ができなくなって、失業率が20%になるなかで、教育から立て直しを図るしかないと、教育に賭けて国家を再建しようとしたんですね。そのときに、ヘイノネンという29歳の若き教育大臣ですが、「洞察力」を一つのキーワードに据えるんです。「洞察力」をつけるために、いかに知力を体系だ立て行くかを考えた結果、"5つの力"を標榜した。そこで言われているのは、表現力は一緒なんですが、思考力の捉え方が全く違うんですよ。フィンランドのそれは、"批判的思考力"と言う。批判的に施行しなければ物事は前に進んでいかないし、現状を打開する力にはならないと考えるわけです。

P.141 尾木
教育の世界というのはものすごく特徴的におかしくて、完全な一方通行なんですよ。閉鎖された独立王国のようなものです。そのなかでヒエラルキーが確立している。文科省の指導や評価には下の都道府県は全然逆らえないし、都道府県の教育委員会は、市町村だとか一人の教員レベルまで完全に掌握しちゃうわけですね。校長とか副校長、教頭の評価というのは教育委員会が握っているんですよ。教育委員会が評価するのは、私は間違いではないと思うんですけれども、では、教育委員会の指導主事や教育長の評価は誰がしているのかというと、誰もしていないんですよ。完全な一方通行で、そこで自分の職位やいろいろなものが決まるものですから、言われた通りやっていくため、創造的な学校をつくろうとする校長もいなくなってきた。今や都立学校の校長は、「私はコンビニの店長です」と自嘲して仰いますよ。何から何まで全部本部の指示通りに動かされているからです。

P.144 尾木
現場の教員は権威というものを徹底して守らされていますけれども、反対に文部科学省の役人のほうは、「それはおかしいのでは」と笑っています。文部科学省にとってはおかしいんですよ。「何をそんなに持ち上げているのか」という。しかし、教員や校長に対する評価システムが構造的に上意下達の一方通行で成立しており、しかも透明性がないわけです。評価に関する情報公開についても、東京ではやっと2年ぐらい前から申請の期間が決められて、そこで本人が書類手続きをやってはじめて自分の評価をみられるようになったんですよ。でも、「見たい」というだけで校長は、「自分が疑われているのか」と思うらしく、嫌な顔をし、次年度からは請求した教員の評価を下げるんです。だから、気楽に見せてもらうことも改善することもできない。したがって、どう評価されているかもわからない。そんなことで教育現場の業績が上がるわけがないでしょう。改善点も見つからないんですから。民間企業なら倒産ものですよ。つまりは、管理強化や権限強化にしか働かないのです。そういう世界に例をみない評価制度を導入している。

P.172
森永:格差社会の行方について話そうと思うんですが、僕は、経済格差の是正も教育格差の見直しも両方ともやらなければいけないと思うんです。経済の世界で、まず格差を縮めていく。最低賃金の引き上げと同一労働同一賃金の原則を適用とするという、この二つの方策だけで、日本の社会は革命的によくなると思うんですよ。
今は、正社員と非正社員で、ボーナス込みで計算すると、大体時給が10対4なんです。同じ作業をしているのに、非正社員というだけで4割しかお金を貰えないというんです。それはどう考えたっておかしいんですね。
それは経済界がそうしようとしているんです。1995年の当時の日経連が、『新時代の日本的経営論』という報告書を発表して、長期能力蓄積型社員というのだけに終身雇用を適用してエリート層だけ今まで通りにし、あとは専門能力活用型と雇用柔軟型に任せようという提言をした。雇用柔軟型というのは、派遣やアルバイトがこれに該当します。うんと低い賃金で、しかも簡単に切り捨てができるようにしましょうということにしたんですね。なぜかというと、アメリカにしても、ヨーロッパでも、国内に外国人労働者を主体にした低賃金労働層がいっぱいいるんですよ。彼らを使うと全体のコストが落ちるんですね。ところが日本はもともと一億総中流階級で、そこそこ給料が高い。前に経済企画庁で委員会があって、そのときに東京大学の教授と東京清掃局の職員の年収が一緒だという話題が持ち上がったことがある。調べてみると、どうもそれは正しいらしい。プロフェッサーとガベッジコレクターが同じ給料の国など、世界中どこにもないということで、ものすごく言い合いになったことがあるんです。低賃金の人たちというものをつくっていかないとならないという意見が多かった。国内に途上国をつくる、低賃金労働層をつくるというのが、競争力の源泉だとあえて考えているんですね。そうしないと、グローバル競争を戦っていけないと思い込んでいるんですよ。
尾木:ああ、だから「多文化・個性化」という美名のもとに選別的な教育、つまり高校の多様化や全県一学区にしてスライスハムのように偏差値で高校を輪切りにランク付けし始めたのかもしれませんね。義務教育課程における習熟度別授業の導入も、学力向上のためなんかではない。子どもたちの早期選別のためのような気がします。いわゆる「低賃金層」づくり政策といえるかもしれない。

P.189 尾木
実はオランダは、教育のほうでも特筆すべきなんです。ワーキングシェアリングなど大胆な政策で協力社会を目指しているだけでなく、教育の領域でも大きな成果を上げているんですよ。
その一つが、2007年2月にユニセフのイノチェンティ研究所が発表した報告です。それは、OECD加盟国21か国の青少年の幸福度調査なんですが、オランダの15歳の子供が「孤独を感じる」のは、2.9%で最も少なかったのです。ちなみに日本は、第一位でなんとオランダの10倍。多くの国は5~10%ですから、いかに日本の子土間たちの心が孤独で自己肯定感に満たされていないかということですよ。オランダでは、さらにWHOの「学校の課題にストレスを感じているか」という調査でも北米、ロシア、ヨーロッパ35地域の中で最下位。つまり、最も学校ストレスがかからない国なんですよ。
にもかかわらず、PISAの「生徒の学習到達度調査」では、2006年度は少し下がったものの、2003年度などは、読解力や数学的リテラシーでは、オランダのほうが日本より上位なのです。のんびり勉強し、一人一人の個性と自立(自分で判断する力)がとことん大切にされるから自己肯定感が高く、協力し合う心が豊かに育っている。

P.195 尾木
今日の若者がひどく右傾化しているのを感じます。第一に、権力に対する批判的なまなざし、感覚をあまり持っていませんね。現状肯定的な感性が極めて高い。それは、学生のリポートや論文にも感じます。これでは、学問研究の前提にある批判精神の意義から解かなければならないと思ってしまうほどです。先日など、ネット上で私も「権力批判で評論活動している」みたいな批判をされたので、びっくりしましたね。頭のどこかに「若者=反権力」のような認識があったものですから。非正規労働や引きこもりなど、現代の若者の生きにくさと社会の閉塞感を一気に「解決」させるための戦争願望がどこかにあるように感じます。

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Posted by ブクログ 2017年12月06日

2007年のリーマンショック前に行われた尾木ママと森永卓郎さんの対論。題名には教育格差とありますが、それ以上に小泉政権が打ち出した構造改革による新自由主義経済政策を徹底的に批判する内容。
それから10年、さらに格差が広がった現代日本を、改めて二人に論じてほしいです。

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Posted by ブクログ 2013年10月08日

尾木先生と森永さんの対談集で読みやすかったです。とくに森永さんはテレビとの印象が違って、いっていることが勉強になりました。

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Posted by ブクログ 2013年02月03日

何かが おかしいと思っていたことを
社会のしくみを踏まえて 説明してくれています
明るい未来につながりますように

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Posted by ブクログ 2012年07月30日

「格差」、よく聞く言葉です。
その格差について、尾木氏は、
"自然現象"でも"歴史的必然"でもないからです。きわめて人為的、政策的、つまり政治が主導して生んだ格差
だと指摘しています。

そう指摘されて初めて気がつきました。
そういうことに気がつく人材を育てて...続きを読むいくことが大切だと思うし、
「政治が主導して生んだ。それはおかしいではないか、そんな社会はおかしいではないか。」と「権力者の行動を看破できる教養や知性」を持つ人材を育てていくことが大切。
そこに、今の教育界に蔓延している競争原理主義は必要ないと私は思う。
政府は一握りのエリートがいればそれで十分、あとは物申さぬ国民を作ろうとしているけれど、そんな政策に騙されることなく、考えることのできる子どもを育てていきたい。

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Posted by ブクログ 2011年02月03日

現在の教育問題(学力格差、いじめ、不登校など)を
政治の観点から考察する本であった。

教育に対して政治が影響するところは大きいものであるということを感じた。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

小中を卒業し 高校を卒業し 数年
大学からも卒業して数年 すっかり教育の現場から
離れている

自分の世代はゆとりと言われる前
個性を尊重というはしりだった

ゆとりの弊害が社会に出てきている
そのゆとりの現場では 競争原理というものが
始まり 新たな問題が 格差という言葉で表に出始めてきた

その...続きを読む格差とは どういった物か
対話形式で 理解できる展開でした。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

10/1 格差社会ってことについてピンとこない人生を送っていたので読んでみた。東京に限られる気もかなりするけどわかりやすくてよかったよ。みんなも読むといいよ!政治の嘘や欺瞞が見えてきます。

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Posted by ブクログ 2010年11月14日

森永; おバカな学者たちが、少子化対策として保育所の支援をしろとか・・・現実に、30歳代前半の男性の非婚率は50%を超えているんですよ。
尾木: 中学や高校の現場の教師を長年やってきた私の経験から言うと、今の大学一年生の精神的な発達程度はちょうど中学3年と言う感じですね。
森永:年収200万円台の人...続きを読むが1000万人を超えたのは21年ぶりですよ。その一方で、働かずに暮らせる人が、どんどん増えているんですよ、我々は豊かで、暮らしやすい社会を目指したんではなかったんですかね。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

2008/10
お馴染みの経済学者と教育評論家による、現在の格差社会と教育改革についての対談。お互いの立ち位置がはっきり出た内容になっており、多くの意見のひとつと割り切って読めば、そこそこ参考になるかもしれない部分もある。

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