あらすじ
幼い一途さで答えてしまった「待っているわ」という一言によって、一生を左右され記憶喪失にまで追いやられてしまう“おせん”の悲しい生涯を描いた「柳橋物語」。愚直な男の、愚直を貫き通したがゆえにつかんだ幸福を描いた「むかしも今も」。いずれも、苛酷な運命と愛の悲劇に耐えて、人間の真実を貫き愛をまっとうした江戸庶民の恋と人情を描き、永遠の人間像をとらえた感動の2編。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
江戸時代中期、17歳のおせんは幼なじみの大工の庄吉から「上方へ修行に行くが、戻ってきたら一緒になってほしい」と告げられ、思わず「待っているわ」と答える。庄吉には恋敵がおり、同じくおせんと幼なじみの幸太も彼女を嫁にほしいと思っていた。
翌年、江戸の町を大火が襲い、逃げ遅れそうになったおせんを助けに来てくれたのは幸太だった。燃えさかる火の中を逃げまどい、とうとう隅田川の川岸に入るが、幸太は「おまえだけは何としても守ってみせる」と言い残して精根尽き果て溺れ死んでしまう。無事に生き延びたおせんは大きなショックを受けて記憶を失い、炎の中で置き去りにされていた赤ん坊ともども親切な夫婦に引き取られる。
関東大震災、東京大空襲を経験した著者の描く火事の情景があまりにもリアルで、刻一刻と迫る火の手がとても恐ろしく感じる。また、庄吉の求婚を受けたこと、赤ん坊を拾ったことでおせんの人生は大きく変わってゆき、一瞬の判断が彼女の運命を狂わせたことが冷徹に描かれていく。
艱難辛苦を乗り越えて庄吉と結ばれる物語かと思いきや、上方から戻ってきた彼はおせんが幸太の子を産んだという噂を真に受けて彼女を信じなかった。しばらくして庄吉が別の女と結婚したことを知り再び正気を失ったおせんは、友人のおもんと子どもと3人で暮らすうちに徐々に回復し、本当に自分を愛してくれたのは幸太の方だったのだと思い知る。
読んでいて涙が出てくるほど悲しい物語だが、何度も災害に遭いそこから立ち上がる江戸の人々を実際に見ているようなリアルな描写で、日本人はずっと自然災害と共に生きてきたのだという連綿とした繋がりを感じる。どんなにつらい時もじっと辛抱してひたむきに生きるおせんの姿がいつまでも心に残る。
Posted by ブクログ
「柳橋物語」
読み始めて何となく知ってるようなストーリー。。と思ったら、
昔、宝塚歌劇で見た「川霧の橋」の原作だった!
でも幸さんは本当に死んじゃってるのね。。
どこかで生きてるんじゃないか。って最後まで期待したんだけど。。。
切ない。。
「むかしも今も」
最後は鈍くさくてもまっとうに生きた者が幸せになれる。
実際はそうじゃなくても、物語のなかだけでもそうであってくれるとホッとする。
山本一力さんの本のレビューで山本周五郎の作風に似ている。とあったので手を出してみたが、
レビュー通り私好みかも。。
これからも読んでいきたい作家さん1人増えました!