【感想・ネタバレ】五瓣の椿のレビュー

あらすじ

「この世には御定法で罰することのできない罪がある」最愛の父が死んだ夜、自分が父の実子ではなく不義の子なのを知ったおしのは、淫蕩な母とその相手の男たちを、自らの手で裁く事を決心する。おしのは、母を殺し、母の男たちの胸につぎつぎに銀のかんざしを打ちこみ、その枕もとに赤い山椿の花びらを残してゆく……。ミステリー仕立で、法と人間の掟の問題を鋭くついた異色の長編。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

NHKのドラマを観て、父の本棚から拝借して再読し ました。 昭和39年9月25日発行

物語は天保五年、亀戸にあるむさし屋の寮が焼け落ち たところから始まります。 焼け跡から見つかった性別すら判別できない遺体は3 人。 そこで命を落としたとされるむさし屋の娘おしのが、 父を裏切り続けた母の不貞の相手たちの胸に銀の釵を 突き刺し、赤い山椿の花びらを残します。

序盤では、病の床に伏す父の命の炎がいよいよ消えか けている時に、何とか母を父の許へ!と奔走するおし のの焦燥感に引き込まれ、読者はこれから始まるおし のの復讐劇の動機を共有することになります。 しかし、この物語は決して復讐劇ではありません。

「この世には御定法では罰することのできない罪があ る、ということでございます。」 おしのが与力に宛てた文です。 山本周五郎の本は他にも沢山読みましたが、この本が 異色のはこの一文が軸となっているからでしょうか。

見つからなければ、捕まらなければ、法に触れなけれ ば、何をしてもいい? そんなわけありません。 ひとのみちにあらず、と書いて不倫。 かつて、これを文化だとかほざいた阿呆がいました。 法律では裁けない罪を目の当たりにした時、人はどう したら良いか、許すことの苦しみと許さないことの苦 しみについて、深く考えさせられる1冊です。

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2013年05月11日

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