あらすじ
12年前、敬愛していた姑が失踪した。その日、何があったのか。老年を迎えつつある女性が、心の奥底にしまい続けてきた瞑い秘密を独白する「林檎曼荼羅」。別荘地で1人暮らす中年女性の家に、ある日迷い込んできた、息子のような歳の青年。彼女の心の中で次第に育ってゆく不穏な衝動を描く「ヤモリ」。いつまでも心に取り憑いて離れない、悪夢のような9編を収録。
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Posted by ブクログ
読みやすい文章とぞわっとする描写、とても自分好みでした。どう頑張っても理解できないような人間って意外と身近に潜んでるから怖い。最後の話とか好きな人が真面目な顔をして存在しない人物の話をしてるのとか狂気。果たして私は好きな人がそうしてたら受け入れられるか、、
ホラーとミステリーと狂気が絶妙に折り混ざってて好きだった。
Posted by ブクログ
私は何を読まされてるんだ…?て気持ちになる薄気味悪く官能的な短編集。結構好きだった!全部狂気を孕んでてじっとり怖い。作者は男性が嫌いなのかしら。キモい男がいっぱい出てくる。
↓特に好きな話、印象に残った話
「林檎曼荼羅」
呆けたおばあちゃんの懐かしくも心温まる思い出話なのかと思いきや衝撃的な過去…風呂場のシーン怖すぎるて!
「テンガロンハット」
イケメンでも得体の知れない人って怖い。
「普通じゃない」
苦手な人をふいに殺そうと思う主人公(えぇ…)。最後その場にいた人たちには超ホラーなのに読者はクスッと笑える展開に。
「エトワール」
前に一回別のアンソロジーに収録されてて読んでたはずなのに、詳細を忘れてて二度目の驚き、戦慄。恋敵はイマジナリー奥さん…こわっ気持ち悪〜
Posted by ブクログ
『林檎曼荼羅』
認知症を患う女性のモノローグ。部屋を片付けながら思い出す家族との想い出、敬愛していた姑との間に起こった出来事。
『レイピスト』
既婚男性と不倫する女性があるときレイプされる。2度も中絶させているにもかかわらず膣内射精にこだわる交際相手と、外出しをしたレイプ犯。
『ヤモリ』
田舎暮らしの女性の家に都会から来た若者が転がりこんできた。草刈りを条件に若者を寝泊まりさせることにした彼女には心境の変化が訪れる。
『沼毛虫』
寄生虫系怪異と庭師とお嬢さん。
『テンガロンハット』
親切ななんでも屋かと思っていたら、勝手に次々と自宅に手を加えられ…。
『TAKO』
映画館で痴漢行為を受けた女性は、幼少時にたった一度受けた性的虐待から嗜好が歪んでしまっていたことを自覚する。
『普通じゃない』
町内会の仕切り屋を殺してみようとするがなんともうまく行かない話。入れ歯。
『クモキリソウ』
交際相手と別れ一人で暮らす主人公とDV夫と離婚した登志子。「あの子たち、男の人を愛さなきゃいけない?本気で好きになるのは、絶対に男の人じゃないとダメ?」
『エトワール』
恋人の心の深い部分を占める元妻に怯える女性。
Posted by ブクログ
不倫、愛、性犯罪、そんなものを凝縮した短編集。
色んな意味で怖い。
集中しては結末にハッと肩の力が抜けたり、最後の一行にギュッと心を掴まれたり。
繰り返す悪夢みたいに重い題材が続き苦しい気持ちになる。だがブラックユーモアもあり、これはオチまでの遊びを楽しむ作品だと気付いてからは気楽に読めた。
「ヤモリ」の文章と雰囲気が好きだった。
Posted by ブクログ
沼田氏の作品を読むのも久しぶり。
はじめて氏の作品を読んだときはイヤミスという言葉すら知らず、ただただ読後の不快感に、こういうのは肌に合わないな、と感じたものです。
20年以上の時を経て、「そういうもの」と分かった上だと、それもまた一つのジャンルだと頭で理解して、心から味わうということが出来るようになった気がします。
改めて。沼田まほかる氏は、1948年大阪府生まれ。主婦、僧侶、建設コンサルタント会社経営などを経て、2004年に56歳で『九月が永遠に続けば』にて第5回ホラーサスペンス大賞を受賞し、遅咲きのデビューを果たした小説家。
その後、『ユリゴコロ』(2012)で第14回大藪春彦賞を受賞・本屋大賞ノミネートされ、「イヤミスの女王」と呼ばれたりすることも。
・・・
さて、本作『痺れる』は2010年の作品の短篇集。計9篇の短篇からなります。
殺人、(ゆがんだ)親子愛、性欲など、人間の本源的な衝動が各作品に織り込まれると同時に、それを冷静に見返す理性もが同居する主人公、というのが作品に共通するところでしょうか。
一番印象に残ったのは冒頭の作品「林檎曼荼羅」。
亡くなった義母を懐かしく思う主人公。彼女のもとに、愛息とその嫁がやってくるという設定。この主人公の独白から、どうやら愛息(孫)がその義母(祖母)に致命傷を負わせてしまったことが語られる。ただし、愛息をかばうという義母と自身の無言の結託から、主人公が義母にとどめを刺し、その遺体を少しずつ処理をしたことが分かってくる。
しかもこの本人、どうやら痴呆症を発症しているのか、思い違い・勘違いをしているようにも読め、殺人も嘘か本当か読者にも分からない。このあたりの読ませる力は凄いと思います。
主人公の、正常とそうでない世界の境界を行ったり来たりする様がリアルに描かれています。そしてその奥底に愛息を溺愛しすぎるという狂気。突き抜けすぎず、ぎりぎり一瞬あるかも、と思わせるような狂気がまた怖いところです。
あとは、浮気した相手と結婚し、彼の元嫁と張り合う「エトワール」、これも結構衝撃的な結末だった。
見たこともない元嫁と張り合う主人公奈緒子。見た目も大したことないという旦那の元嫁の正体、これがまた冷や汗が出るような結末。
その他、 「レイピスト」、「ヤモリ」、「沼毛虫」、「テンガロンハット」、「TAKO」、「普通じゃない」、「クモキリソウ」、どれも良かったと思います。
主人公が冷静に狂気を秘めているような作風は、一瞬中村文則氏を思い浮かべるところもありますね。
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ということで、2カ月ぶりの沼田作品でした。
女性目線の静かなる狂気、みたいな感じで、結構好きなタイプ。でも筆致はあくまで繊細で静謐。
寡作であるのが非常に残念であります。