あらすじ
七月七日の午後七時、新進作家、坂井正夫が青酸カリによる服毒死を遂げた。遺書はなかったが、世を儚んでの自殺として処理された。坂井に編集雑務を頼んでいた医学書系の出版社に勤める中田秋子は、彼の部屋で偶然行きあわせた遠賀野律子の存在が気になり、独自に調査を始める。一方、ルポライターの津久見伸助は、同人誌仲間だった坂井の死を記事にするよう雑誌社から依頼され、調べを進める内に、坂井がようやくの思いで発表にこぎつけた受賞後第一作が、さる有名作家の短編の盗作である疑惑が持ち上がり、坂井と確執のあった編集者、柳沢邦夫を追及していく。著者が絶対の自信を持って読者に仕掛ける超絶のトリック。記念すべきデビュー長編の改稿決定版!
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Posted by ブクログ
坂井正夫の謎の死をきっかけに、編集者中田秋子とルポライター津久見紳助の2人を軸に展開されるミステリー作品。しかし、細かな点に注目するが、それぞれの話に違和感、ズレを感じる。そこが謎を解くカギとなる。本作において現代の立場から見ると、本作の叙述トリックはよく見られるパターンであるが、この小説は、今から50年ほど前の作品で、当時としては珍しかったという。
Posted by ブクログ
写真と電話のトリックは良く分からず、、、ではあったが、気にせず読み進める。
2人がどこで交差するのかワクワクした。
そうかー。序盤で気付けたのか。
とは思うけど、気付かず読んだ方が面白く読めた。
Posted by ブクログ
"坂井正夫"が実は2人いることや、中田秋子と津久見伸助が、それぞれ別の坂井正夫について捜査しており、時期も1年ズレているというトリックがあった。
読んでいる間にちょこちょこ違和感を感じた気もするが、このトリックには全然気づかなかった。
しかも1年後の坂井正夫は中田秋子が殺していたというのも驚き。
しかし、最後の真相までの捜査の様子はそれほどサクサク読めるほど熱中できず、最後のトリックも驚きはしたものの、結構大胆だなぁ〜という感じでまぁまぁだった。
あと秋子の殺害の動機が、父の名誉を守るためっていうのが納得できなかった。先の坂井正夫が好きだからじゃないのー!?笑 ってなった。
でもこの本の大元が最初に出版された1972年にはこのような叙述トリックものはまだなかったそうなので、それらの先駆けになっているのならばそれはすごいことだ。
Posted by ブクログ
しっかり読んでいたはずなのにしっかり騙された、もう一回読み直してみたいなと思った、でも、結末はなるほどという感じでそこまでぐさっとくるくらい面白かったわけではないかなとは感じてしまった、でもこういう結末がどうなるのか考えながら読むのは楽しい!
Posted by ブクログ
この作品は,1973年に発表された「新人賞殺人事件」が改訂され,2006年に創元社から出版された。「第四部 真相」という扉が挟まれ,あからさますぎる伏線が削除されたりしているが,基本的なプロットは1973年に作られたもの。1973年に,これほど完成度の高い叙述トリックの作品が作られていたのは驚き。
創元推理文庫版の解説は,叙述トリックの名手、折原一が書いている。折原一の解説を読むと,折原一がいかに,中町信の作品を敬愛しているか,よく分かる。折原一の作品にも,影響を与えていそう。
この作品は,折原一の初期の作品にもあったように,二人の人物の視点が交互に描かれている。その二人は,中田秋子という女性の視点と,津久見伸助の二人の人物。この二人は,それぞれ「坂井正夫」という人物の自殺の真相を解明すべく動いていく。
この作品のメイントリックは,坂井正夫という名前の人物が二人いて,二人とも推理小説を書いていたという点にある。そして,中田秋子の章と津久見伸助の章は同一年でなく,中田秋子の章は津久見伸助の1年前の出来事だった。折原一の作品を多数読んでからこの作品を読んだので,この部分にはそこまで驚けなかったが,中田秋子の章における隆広という子どもの誘拐事件,津久見伸助の章に出てくる柳沢邦夫という男の存在が,それぞれ読み応えがあり,メイントリックと噛み合っているように思えた。驚きという点からだけ見ると,そこまでではないが,完成度は非常に高い作品だと思う。★4で。
Posted by ブクログ
交換手?…いつの時代?と思いながら読み進める。
『なにかが狂っている』で、時系列にズレがあるんだろうとだと予想できて…
あーそういうことかと納得。
全体に出来事の上っ面を解説している
のぺーっとした作品に感じた。
エピローグの【昭和48年】に昭和48年っ!?
と、一番のびっくりどころでした。
Posted by ブクログ
青酸カリをあおり投身自殺を図った推理作家。死の前に発表した作品は自殺を仄めかした内容であっただけでなく、ある大御所作家の作品を模倣したものだった。
坂井の知人だった編集者の中田秋子とルポライターの津久見伸助は、それぞれに坂井を殺害する動機を持つ者を調べ上げていく。二人が目星をつけた人物にはアリバイがあるため、それを突き崩すために奔走する。だが読み進めるうちに、中田と津久見がそれぞれに知る坂田は、同姓同名の別人だという事実が発覚する……。
序盤の「遠賀野律子」に関する記述で違和感を覚え、それを抱いたまま終盤でその意味を理解する。著者中町信氏の経歴故に、叙述トリック作品は大方読破したという読者であっても未読の作品かもしれない。一昔前の上質なミステリー特有の空気感もハマる。
Posted by ブクログ
面白かったし、トリックもいい感じだったけど、なんだかあんまり熱中して読めなかったー
秋子と津久見が違う時間軸じゃないかとそこは驚きたが同姓同名の坂井正夫と言うトリックに驚いた。