あらすじ
日中両国でいまも書きつがれ,読みつがれている“三国志”の物語.その原点である正史『三国志』をひもとき,曹操,劉備,孫権らそれぞれの伝記の史実のなかに,英雄たちの真の姿を読む.『三国志』と『三国志演義』の両方を訳した第一人者が,平明な語り口で歴史の醍醐味と物語のおもしろさを存分に語る.解説=井波陵一
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第1回では三国時代の概要と、正史三国志の著者陳寿についてが述べられている。陳寿と、後に注をつける裴松之の対照的な人生が印象的。
第2回では曹操の人物像にフォーカスして、魏の歴史が書かれている。悪玉として描かれることの多い曹操だが、その知略や大胆さはやはりカリスマ性がある傑出した人物。
第3回では、劉備と諸葛亮を中心とした蜀の歴史が扱われている。人望のある劉備と諸葛亮との出会い。特に、荊州と益州の獲得など三国志の中でも重要な局面を詳しく説明している。戦略などをかなぐり捨て、義弟関羽の弔い合戦に臨む劉備の人間くささがいい。
第4回では、孫権と彼を支えた重臣たちがクローズアップされている。若き主君を支える古参勢力、という構図が呉の特徴。周瑜、魯粛、呂蒙、陸遜と続く優秀な軍事責任者の存在も魅力的。一度は共闘した孫権と劉備が対立を深めるところに、乱世の世知辛さを感じる。その間を奔走した魯粛の存在の大きさは計り知れない。
ページ数が限られているので三国の猛将たちを事細かに説明しているわけではないが、荊州をめぐる三国の攻防など、要所が抑えられているのでとても読みやすい。
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陳寿の描く正史「三国志」の原文と書き下し文に解説が付いて、英雄たちの姿を読みます。「正史、三国志と陳寿の伝記」「魏書」「蜀書」「呉書」の順で授業のように進みます。原文が出る度に貴重な資料を読める喜びはありますが、私には難しく解説を読むことになります。陳寿の人となりが知れたり、複雑な性格をもつ英雄曹操が、個人の名をもって詩をつくった中国最初の詩人で詩の紹介もあるなど、興味深い話もありました。三国志は読み始めなので、順を追って色々な小説を読んでいきたいです。
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正史「三国志」の解説書。原文、書き下しに解説を付け加える。4章立てで、全体と陳寿の紹介、魏、蜀、呉の順である。正史の本文だけでなく裴松之の注について随時参照する。分量的に半半程度か。こちらはかなり色々なことに触れている。この注によって正史自体が面白くなっていると言えるのだろう。ただ全く新しく知る話という訳ではない。
なお帯などから、「三国志演義」についても同じように解説するのかと思えばそうではない。ほとんど触れられない。この長さでそこまでは無理であろう。
付録の他の三国志関連の解説・随筆に対する著者による紹介が力が入っている。思わず注文。