あらすじ
19世紀フランスの政治思想家トクヴィル(1805―59)が、アメリカ社会全般の透徹した分析を通して広い視野で近代デモクラシーを論じた、現代の民主主義を考えるにあたって読み直すべき古典的名著。1835年に刊行された第1巻(第2巻は1840年刊)では、アメリカ社会の具体的な分析を行なう。(全4冊)
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Posted by ブクログ
1830年代にフランスの政治思想家トクヴィルが、アメリカ社会を観察するとともにその民主政治の成り立ちや統治機構の特徴を考察したもの。
著者は、当時民主政治について最も進んだアメリカを研究することで、革命の時にあったフランス(ヨーロッパ)にも訪れつつある民主政治をより有益なものする方法を知ろうとしたが、その観察眼や洞察力から導かれた鋭い考察により、現代の民主主義を考えるにあたっても読み直すべき古典的名著とされている。
この1上巻では、アメリカ建国時にまで遡ってイギリス系アメリカ人の性格、宗教観やそれが政治に与えた影響、連邦や州といった統治機構の性格や特徴などが論じられている。
興味深かったのは、著者は社会の繁栄と人間の自由に好都合で最も強力な統治制度を連邦制としつつ、一方で連邦政府の相対的な弱さ(細分化された主権)を弊害として挙げている所。
連邦制が成功するには良い法律だけでは不十分で、各州がほとんど同じ利害、起源、言語、同程度の文明段階であることと、なんといっても地理的条件の重要性を挙げ、著者の言葉によれば“連邦制の諸国が政治集権の集中した国家と長期間対等に戦いうると信じることは拒否する”としている。
この点、例えば日本で明治政府が中央集権化を図ったことは、日本の地政学や当時の時代背景から考えてもトクヴィルの主張と符合するように思える(統治制度として幕藩体制は連邦制に近いかと)。