【感想・ネタバレ】歯車 他二篇のレビュー

あらすじ

ここに収めた三篇は、いずれも作者最晩年の代表作。『玄鶴山房』の暗澹たる世界は、作者の見た人生というものの、最も偽りのない姿であり、『歯車』には自ら死を決意した人の、死を待つ日々の心情が端的に反映されている。『或阿呆の一生』は、芥川という一人の人間が、自らの一生に下した総決算といってよい。(解説 中村真一郎)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

芥川、晩年の3篇。頭の中が忙しかった人だったのだろうなと思う。常に何かを考え(或いは何かに囚われ)、それを時に人に差し出しては、また自分の中に仕舞い込んで悶々と考え続ける。特に1つ目の引用箇所は印象的であった。この箇所は、論理的思考なるものにも幾つかの流派があり、芥川のそれは少し他人とは異なるものであったということを端的に表していると思う。彼は他者との対話の中で、自分とは異なる論理の組立て方が存在することに気が付きながらも、そちら側に渡ることができなかった。彼の最期に対する意見は種々あるだろうが、この溝こそが彼を死へと導き、また制作欲という光をも彼に与えたのだと思う。

特に印象に残った箇所は以下
・「しかし光のない暗もあるでしょう。」「光のない暗とは?」僕は黙るより外はなかった。彼もまた僕のように暗の中を歩いていた。が、暗のある以上は光もあると信じていた。僕らの論理の異るのは唯こういう一点だけだった。しかしそれは少くとも僕には越えられない溝に違いなかった(p.71)
・この往来は僅かに二、三町だった。が、その二、三町を通るうちに丁度反面だけ黒い犬は四度も僕の側を通って行った。僕は横町を曲りながら、ブラック・アンド・ホワイトのウイスキィを思い出した。のみならず今のストリントベルグのタイも黒と白だったのを思い出した。それは僕にはどうしても偶然であるとは考えられなかった。もし偶然でないとすれば、ーー僕は頭だけ歩いているように感じ、ちょっと往来に立ち止まった(p.80〜81)
・「人生は一行のボオドレエルにも若かない」(p.91)
・人生は二十九歳の彼にはもう少しも明るくはなかった。が、ヴォルテエルはこういう彼に人工の翼を供給した。彼はこの人工の翼をひろげ、易やすと空へ舞い上った。同時にまた理智の光を浴びた人生の歓びや悲しみは彼の目の下へ沈んで行った(p.102〜103)

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2026年04月03日

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