【感想・ネタバレ】楽園の瑕のレビュー

あらすじ

大ベストセラー『震える牛』『ガラパゴス』に連なる樫山順子シリーズ最新刊!

北海道警から山梨県警に異動した樫山順子は、大規模農場開発に怪しい動きを嗅ぎつけた。地元政治家らの間で暗躍するのは、かつて規制緩和の名のもと経済を壊した男。中国の強欲投資家も加わった資本主義の魔手から、樫山は山岳の楽園を守れるか。

(底本 2025年6月発売作品)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

過疎地域の活性化に向け、大規模農場とリゾート開発を展開しようというプロジェクトの実態を暴く社会派推理小説。
バブル崩壊後、不良債権隠しという裏の仕事で伝説の金融ブローカーとして名を馳せた古賀は、裏稼業に嫌気がさし、現在は山梨県の山間部・大菅村で隠居生活をしていた。
近くの北甲州町で、大規模農場とリゾート開発のプロジェクトが計画されていることを知った古賀は、計画の主導者が兵頭であることから懸念を覚える。
兵頭は元経済財政政策担当相。
新自由主義の名のもとに規制改革や不良債権処理を強引に推し進め、いくつもの銀行を潰して、外資系企業に叩き売った男だ。
古賀は、自ら、金のため、不良債権隠しという悪事に加担し日本の衰退に手を貸したことへの贖罪と兵頭への不信感から、計画には裏があると直感し、真相解明に立ち上がる。
この小説は女性キャリアの刑事部長・樫山を中心に贈収賄事件捜査から事件の核心を暴き出す警察の内部を描いた作品でもある。
樫山と古賀のつながり、樫山と優秀なスタッフの活動で次第に実態が暴露されていくところが読ませどころだ。
古賀の命を張った行動と、警察の強力な捜査のタイアップで、事態が収束する場面は痛快感があった。
また、古賀の内縁の妻だった村田佐知子との再会、昔、古賀を追いかけた池内記者との協働が真相解明に重要な役割を果たしたり、警察の捜査システムが垣間見れたりするところも、小説に彩りを添えている。
地方創生という政府のかけ声の下、多くの自治体が補助金獲得に向かったが、具体的に何をすればいいかわからず、大手のコンサルに頼り、金が東京に還元してしまったのは現実にあったことだ。国家戦略特区制度を使い、法人に農地利用を認める仕組みが波紋を呼んだのもそうだ。
中国系外資企業の暗躍、オンラインカジノの流行、外国半導体企業の工場誘致など現在の様々な社会情勢も組み入れ、よく練られた内容になっている。
それにしても、兵頭のモデルであろう竹中平蔵氏がもし、この本を読んだら、どんな顔をするのか、見てみたい気がする。

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2025年08月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

警察キャリアの樫山順子シリーズ第二弾。

と銘打っているものの、『不発弾』『イグジット』で暗躍する金融コンサルタントの古賀の物語でもあり、その関係者も多数登場する。
事件は地方創生の美談の殻を被った悪徳スキームで、農地を集めた後、農地転用ではなく半導体工場建築に転売しようというもの。
半導体などの大手大工場はカンフル剤にはなるものの、弊害も多く、ましてや撤退した場合の反動の過疎化は半端ではない。
自分も近くの三重の亀山の液晶工場の例を知っているだけに、恐ろしくなりました。
なので半導体工場誘致ではない隠れ蓑を使うという話はありえそうでした。
また、兵頭や磯田のモデルがあからさまなのに苦笑してしまいました。

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2025年08月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

樫山刑事の続編(覇王の轍)と思って読んでいたら理子(サドンデス)が登場し、さらに栗山氏はどう見ても他の小説で活躍した人らしく調べたら「イグジット」だった。
今回は半導体工場が日本で建設されているビジネスをうまくネタにして、そこに目をつけた(おそらくイグジットでの登場人物)が暗躍。
これを暴くのが樫山順子警部という設定。理子はあまりストーリーには影響はなかった。
早速イグジットを読むことにしました。

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2025年10月26日

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