【感想・ネタバレ】ジェイムズのレビュー

あらすじ

逃亡奴隷ジェイムズの過酷な旅路の果てに待つものとは──。「ハックルベリー・フィン」を過激な笑いと皮肉でくつがえした、前代未聞の衝撃作。全米図書賞&ピュリツァー賞受賞。
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全米図書賞&ピュリツァー賞、驚異のW受賞!
ブリティッシュ・ブック・アワード、カーネギー賞、カーカス賞受賞!
ニューヨーク・タイムス・ベストセラー1位、2024年ベストブック最多選出。
各賞を総なめにした、2024年アメリカ文学最大の話題作。

我が身を売られる運命を知り、生き延びるために逃げ出した黒人奴隷ジェイムズ。
しかし少年ハックをともないミシシッピ川をくだる彼を待ち受けるのは、あまりに過酷な旅路だった。
奴隷主たちを出し抜き、ペテン師を騙し返し、どこまでも逃げていくジェイムズの逃避行の果てに待つものとは──。
黒人奴隷ジムの目から「ハックルベリー・フィン」を語り、痛烈な笑いと皮肉で全世界に衝撃を与えた怪物的話題作。


物語は往々にして誰かの人生を破壊し、利用する。
だが、鮮やかなやり方で新たな命を与えることも出来る。この小説のように。
───西加奈子

読み始めたが最後、『ハックルベリーの冒険』を愛する私がいかに「白人」であったか、 自分を笑い飛ばして痛快になる。
───星野智幸

地獄の故郷を抜け出して、いっしょに生きよう。
この小説にそう誘われた気がした。
───三宅香帆

米文学界の巨人、エヴェレット。
容赦なくも慈悲深く、美しくも残酷で、悲劇であり茶番劇でもあるこの見事な小説は、
文学史を書き換え、長らく抑圧されてきた声を私たちに聞かせてくれる。
───エルナン・ディアズ

恐ろしくも抱腹絶倒、そして深く胸を打つ。
──アン・パチェット

この小説は読者の心をまっすぐに撃ち抜く。
──ニューヨーク・タイムズ

恐ろしく、胸をえぐり、そして笑わせる小説。
──ガーディアン

衝撃的でありながら爽快な結末。
──ワシントン・ポスト

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Posted by ブクログ

ネタバレ

私は東北人なので、奴隷たちの「わしは誰も見てねえだ」のような、いわゆる「田舎者・無知」の象徴としての東北弁に最初はかなり抵抗を覚え、なかなか読み進められなかった。
しかし読み進めるにつれ、この言葉遣いが奴隷たちの生き延びる術だと知る。(※訳者からのおことわりとして、なぜこのような言葉遣いを採用したかは巻末に記載がある)

単に拙い語彙でたどたどしく話すだけではなく、その場の主導権は常に白人に委ねることも子どもたちは学んでいく。
台所から火が上がったことに気づいた時「火事だ」と言ってはいけない。「奥様、あそこを見るだ」と言わなくてはいけない。なぜなら「問題に名前を付ける役は白人に任せないといけないから」―こんなことを五歳かそこらの子が学ばなくてはいけない。

物語が進むに連れ、ジムは頭の中にあることばを記録することを覚える。しかし鉛筆一本手に入れるのが命がけの立場なのだ。そのことによって引き起こされる悲劇。

「白人は何かの危機を生き延びた人間をしばしば大げさに称賛する。おそらくそれは、白人は普通ただ『生きる』だけであって、『生き延びる』必要がないからだろう」(P.347)

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2025年09月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

マーク・トウェインの傑作「ハックルベリー・フィンの冒険」を黒人奴隷ジムの目線から語り直した作品。
話題作ということで、まずハックルベリーを読み、その次にに本作を読み始めた。
読み始めたら、面白い!面白すぎてページを捲る手が止まらないまさにページ・ターナー。

「ハックルベリー・フィンの冒険」(村岡花子訳版)では少年ハック視点からの語りだからしょうがないとはいえ、今の感覚でも「いや、ジムはそこまでバカというか間抜けではないだろ」という場面があったが、本作品ではジェイムズ(ジム)は処世術としてブロークンな英語を使い、わざと間抜けなように振る舞っている。
ハック視点で語られたあの事件やこの事件がジェイムズの目線で再び語りなおされていく。トゥエイン版ではハックに振り回されてばかりいる感じのジェイムズが、「大人」としてハックを見守りつつ、奴隷制度のなかでなんとか妻と子を救い出して自由人となる道をさがす一人の人間として浮かび上がってくる。
この流れで、個人的にはあまりいいとは思えないトウェイン版のハッピーエンドにどう繋げていくんだろうと思っていたら、途中から別の世界線に流れていく。ラストのジェイムズの一言がかっこいい。

訳者あとがきで知ったのだが、作者は映画「アメリカン・フィクション」の原作者だった。とても腑に落ちた。

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2025年09月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「私の名前は自分のものになった」(p.377)
鉛筆とノートに、書くことを通じて、
それまでは奴隷としての呼び名が、主体性を獲得した、“奴隷“"黒ん坊"“所有されるもの・商品”“貨幣”ではない、ジェイムズとして解放される描写が鮮やかだった。

「わしはこう思うだ。規則に頼らねえと何が正しいか分からねえようならーそれから、人に説明してもらわねえと何が正しいか分からねえようならー決して正しいことなんてできねえだ。善悪の区別を神様に教えてもらわねえと分からねえなら、そんなものは一生かかっても分かりゃしねえだ」 「けど、法律では…」 「善悪と法律はなんの関係もねえだよ。法律はただ、わしが奴隷だと言っとるだけだ」 pp.107-108

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2025年09月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

今年の邦訳小説の話題作。ハックルベリーの物語を南北戦争開始時に小移動し逃亡奴隷側から正調で雄弁に語るなか、後半からは独自の展開を見せる。直前にトウェインの原作?を読んでたので、対比のイメージもできて楽しい読書だった。読みやすい一方で、全体をコンパクトにまとめた結果、原典から飛び出した後の駆け足感が強く、暴力を暴力で報復するなか、小説の完成度として少々物足りなかった。逃亡奴隷の物語は小説・映画に多く取り上げられているが、それらを超える感銘とまではいかなかった。とても良い小説とは思うけど。

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2025年09月17日

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