あらすじ
緑の髪の舞台美術家ハンナと小説家のわたし。ティーバッグを絆に結ばれた女ふたりの交友を描き、えもいわれぬ可笑しみを湛えた表題作ほか、恋愛小説ぐるいの少女が《ボクトーキタン》を追体験する「所有者のパスワード」など全八篇。覚醒した《日本語》が火花を散らし、日常と異界の境を揺るがすスリリングな短篇集。
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Posted by ブクログ
多和田さんの自由な文体が相変わらず面白い。
「電車に乗っていると、どうして電車なんかに乗っているのだろうと思ってしまう」
出だしから笑った。
静かなトーンの話からクスッと笑える軽快な話、と多和田さんの引き出しの多さが伺える短編集。
「枕から枕へ、今夜見る夢から明日の夜見る夢へ」とあるように、多和田さんに夢の世界に誘われたかのようにふわふわした余韻が漂う。
特に『目星の花ちろめいて』『所有者のパスワード』が好き。
『目星…』は多和田さんの紡ぐ詩のような言葉遊びが心地好く、続きが気になる終わり方でもっと読んでいたくなる。
『所有者の…』の姫子が夢中で読んでいた「ボクトーキタン」(永井荷風の『濹東綺譚』らしい)が気になる。何度もニヤリとなった。