あらすじ
平均「お布施」額が42万円でも、8割のお坊さんが喰えていない!? ――多死社会を迎え、葬儀の数は右肩上がりで増えていくことが予想されているのだが、お坊さんたちの存在感は低くなる一方である。葬儀業者にお葬式の主導権を奪われ、葬式の簡素化・低価格化で最大の収入源である「お布施」のデフレ化も止まらない。外圧と消費者の低価格志向は今後も止まりそうもない。迷走する仏教式葬儀はどこに向かうのか――。葬儀ビジネスと仏教界の裏側を宗教専門誌編集長がレポート。
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Posted by ブクログ
40歳を過ぎたころから、女友だちと集まったときに出るようになった話題のひとつに「墓問題」がある。
実家の墓を、これから一体どうするのか、親はどの墓に入るのか、特に姉妹の場合は、継ぐ人がいないのをいつしまうのか、親の老化を実感し始めるのと、祖父母がなくなったりするのを機に、みんな「きっとやばい」とちょっとずつ考えていて、時々愚痴に交えて情報交換をしている。
ビル型納骨堂の説明を聞いたら、●●万円で、4人までは入れるって聞いた、とか。
4人って、誰と誰が入るんだ?
でも、墓の前に葬式がある。
うちの実母は、父方のお墓(地方)には入りたくないので、自分の実家の菩提寺(都内)で永年供養にしてほしいとずっと言っていて、はいはいと聞き流してたんだけど、待って、その場合そのお寺さんにお葬式頼めるんだっけ?そもそも母の実家はそこだとして、うちは?うちは………
知らないことしかない。
祖母は、家の近所に葬式ホールができたときの、オープン記念キャンペーンで葬式のお見積りをしたと言っていた。あのとき、祖母の周りでは「みんな行った」と言ってたらしいけど、あの世代は、自分の親族のお葬式をあげるのに「無駄に高くされた」(だから自分は安く抑えたい)という意識も強かったんじゃないかなと、ちょっと思っている。
この本は、お寺を取り巻く現状を、主に収入の観点から紐解くもので、結果「お葬式ビジネス」についてかなり詳しく書かれている。
ひと通り読んだところで、社会の変化はあるけれども、「お寺の衰退はある程度自業自得なのでは?」という感想だ。
「明朗で安い」というのを消費者が望んでいる、と何度も書かれているけれども、安いに越したことはないけれども求めているのは「明朗さ」なんだよな。
買いたたこうとは思ってないけど、家族が亡くなって、弱っているところに、「これくらいの戒名はつけないと」って高額なものをねじ込んでくるのはいい加減にしてくれ、っていう話でしかない。
地域のネットワークがなくなって、「お布施はお気持ち」が通用しなくなった、というのも大きいけれども…。
これも、「うまくいっていない人には、安くするとかいい面もある」っていうものの、逆に言えば「うまくいってるときは、いっぱい出せよ」ってことでしょう?
地域コミュニティが確立して、共同体として運用してるところじゃないと、この理屈はなかなか無理じゃない?
全体的に、既存の保守的な人たちが、仏教や宗教を高尚なものにしようとしすぎている感じもする。
人を集めて、色々新しいことをしている人たちを「あれはPRであって、布教ではない」と批判しているというのもあったけれども、日本の仏教だって、「民衆に分かりやすくキャッチーにして、信者を増やした」ところだってあるじゃん。もうちょっと今の時代に合わせて発信すべきなのでは?
宗教が要らないとは思わない。
親が亡くなったら、お葬式は出したいし、そこには僧侶を呼ぶだろう。
日本人の、曖昧でいろいろ取り込む、変な宗教観のなかで、お寺が残っていく道が全くないことはないんじゃないか。
今と同じだけの数のお寺が残るのは難しいかもしれないけれども、どこかで軟着陸する方法はあるんじゃないかなとも思う。