【感想・ネタバレ】夫が痴漢で逮捕されました 性犯罪と「加害者家族」のレビュー

あらすじ

ある日突然、日常が崩壊する!
一家離散、ネット私刑、そして自死――
社会から排除される「加害者家族」の“生き地獄”と再生に迫る。


痴漢、盗撮、レイプ、子どもへの性加害……
連日報道される性暴力事件の卑劣な加害者たち。
彼らにも「家族」がいる。

あらゆる犯罪の中でもとくに白眼視されがちな
「性犯罪の加害者家族」の悲惨な“生き地獄”とは?
家族が償うべき「罪」はあるのか?
3000人以上の性加害者、1000人以上の加害者家族に向き合ってきた専門家がその実態に迫る。
あなたも決して他人事ではない!


第1章 ある日突然、家族が性犯罪で逮捕された
・「加害者の家族というのは、幸せになっちゃいけないんです」
・ケース①:痴漢を繰り返した元高校球児
・ケース②:妊娠中に夫が盗撮で逮捕、それでも別れない妻
・ケース③:「優等生」の息子が女子生徒の着替えを盗撮
・ケース④:小6の娘が妊娠、相手は中2の兄 ……ほか

第2章 加害者家族の「生き地獄」
・刑事手続で家族がすべきこと
・裁判での経験がトラウマに
・母親に責任を押しつける「子育て自己責任論」
・夫の痴漢はセックスレスが原因?
・加害者家族が怯える「世間」とは何か ……ほか

第3章 なぜ加害者家族を支援するのか
・両親は夜逃げ、弟はうつ、姉は自死……加害者家族の末路
・加害者家族1000人へのアンケート
・複数回の逮捕でようやく治療につながる
・一番の悩みは「誰にも話せないこと」
・家族会でも排除されやすい「子どもへの性加害」 ……ほか

第4章 それでも日常は続く
・「このまま刑務所にいてほしい」家族の本音
・知らない番号からの着信に怯える日々
・家族に加害者更生の責任はあるのか
・「親が犯罪者」のレッテルは大人になっても続く
・子どもに事件をどう説明するか ……ほか

第5章 加害者家族との対話
・音信不通の息子は留置場にいた
・「育て方が悪かった」と裁判で責められる
・2度目の逮捕で実刑判決
・息子に伝えた自身の性被害経験
・わが子の婚約に抱く複雑な思い ……ほか

第6章 その「いいね」が新たな被害者を生む
・報道されるかどうかは運しだい
・文春砲の功罪
・「SNS私刑」に振り回される加害者家族
・「日本版DBS」で子どもへの性加害を防げるか
・加害者家族を知る映画 ……ほか

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

犯罪者そのものよりその家族である加害者家族について興味ありこの手の本をこれまでも読んできてまして、今年発刊されたということで手に取った本書。

タイトルにあるように加害者家族と言っても性犯罪を犯した加害者に特化した内容となっておりました。
一口に加害者家族とくくっても、犯罪の内容によって「世間」の目や扱いは違うものなのだなということがわかり。性犯罪だとお母さんやパートナー(女性)が取り調べや裁判の際などにも子育ての否定されたり性生活について聞かれたりなど、母親や妻の立場として非難を受けがちでさらに辛い思いをさせられることが多いということでした。

しかし共通する部分もかなりあり、それは加害者家族の人生が破壊されてしまうという点でした。
それには報道されるかどうかということがかなり大きいようですが、最近ではマスコミ報道でなくてもSNSに情報が回ってしまうことで破壊されてしまうことも増えているようでした。
婚約破棄や離婚、果ては自死にまで追い込まれている加害者家族の話を読むと(p21ほか)「犯罪者の家族であることはそれがもう罪だというのか」といたたまれない気持ちになりました。

一番問題なのは、家族は罪を犯していないので罪を背負うことはないし責任もないのですが(ただし未成年者の場合などは親権者の責任が問われることはあり)一緒くたにされてしまい、家族に対して誹謗中傷したり責任を取れと迫ったりする「世間」が後を絶たないということです。
これは世間もそうであるけれど本書を読んでいると警察や検察の司法の場、特に裁判では家族に監視監督を求める指導がよくされている(p133)ということもあり、そもそも法律の場での加害者とその家族の同一視的扱いが一番問題なのではないかと思いました。

(p175)「親の監督不行き届きだ」とも言われました。確かにそう言われてもしかたないですよね、(略)ただ家族だからって30代の息子の首に縄をつけて四六時中見張っているわけにもいかない…というのも本音です。

上記の内容についても、検察・裁判というものは罪を取り調べて断罪し量刑を決めるものだからそうなるのかもしれませんが、言うのは言うけど実際には司法って何にもしてくれないのだなととても感じるエピソードでした。
家族には分かっていてもどうにも対処できないところがある、そこをどうするかと考えて相談したり監視管理する仕組みがどこにもないことが本当に理不尽だと感じました。

私は個人的に司法の仕組みって信用できないと思っているので上記のようなエピソードやp70にあるような取り調べの場で警察官に夫婦生活について詳しく聞かれ挙句「旦那さんも(性欲が満たされずに)かわいそうですね」とか頓珍漢な言葉を取調官からかけられたなどのエピソードを知ると腹が立ってきます。

そもそも本書にあるように盗撮や痴漢のような性犯罪は性欲というよりストレス解消(p116)やスリルを求めたいというのが大きい犯罪だと思います。(近隣で起きた数件の教職者の盗撮犯罪はほぼこれだったらしく。どんなストレスがあっても絶対に許されないですがあまりにもブラック化している勤務状況があったことを思うとそれはそれで問題)
自分も含めてですが、そういう認識は世間はほぼないと思われます。

本書に書かれているようなことを「世間」の人が認知すること自体がまず難しいのだろうとつくづく思った読後でした。

0
2025年08月10日

「社会・政治」ランキング