あらすじ
ドラマ「相棒」などの脚本家としても活躍し、『未明の砦』で大藪春彦賞を受賞。骨太の社会派サスペンスの書き手として独自の存在感を発揮する太田愛のもう一つの顔。日本推理作家協会賞候補となった「夏を刈る」、半自伝的小説「給水塔」を含む待望の第一短編集。
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Posted by ブクログ
やっぱり天才。
最初の2篇はストーリーというよりは構成でうならされる。
十月の子供たち、は、昔の戦争の話だと思って読んでいると、小道具から現代の話とわかる。
戦争が昔のことでなく、まぎれもなく"今"のことだと思い知らされる。
サイレンでは、時間軸に混乱させられつつ読み進めていくと、現在にたどり着く。
環境が、周りが変わっていく中で、自我の中での自分はなぜか変わらない。
同じ場所に留まり続けることでおぼえる無限ループ感。この世に根を張る、という事を「知っていく」ことと「知っているものが失われていく」ことを同等に描くことで、自分がいくら変わらないつもりでいても、否応なしに時間に変化を促される切なさ。
不思議な読書体験で、読み終えた時に思わず「すご…」とつぶやいていました。
その後の二篇は打って変わってドラマチックでストーリーに引き込まれ、あっという間に読んでしまいました。
やっぱりこの方天才ですね。
Posted by ブクログ
私が今まで読んだ太田愛さんの作品は重厚で社会派、それとは全く違うタイプで、
太田愛さん初の短編集。
結論、やっぱり太田愛さんすごいな〜と、
うなってしまう独特な短編集でした✨
一、遊戯室 十月の子供たち
架空の国のファンタジーかと思って読んでいたら
全然違う、ある日突然ミサイルで幸福な日常が
奪われ、親を失う子どもたちの戦争の話だった。
自国が攻撃されている事をインターネットの報道で見る子供達、そして次の話題はどこかの国のスポーツの結果… 考えさせられる重い余韻。
二、中庭 サイレン
語り手を勘違いしてしまうトリックのような文章に
混乱(?_?)
2回読んですべて合点がいく。 家族の歴史が
団地という懐かしい風景とともに穏やかに描かれていたけれど、最後でまた(?_?)
三、舞踏室 夏を刈る 四、書斎 鯉
の2編はミステリー
これも懐かしい風景のような
横溝正史シリーズのような空気感で
少し恐ろしくもある。
半自伝的小説の
五、階段 給水塔 とエッセイ
読みながら
放課後、校庭で遊ぶ自分の姿を思い起こす
なんともノスタルジックな余韻に浸る作品でした。
そして、謎めいていて、
素敵なこの本の題名について考えを巡らせる。