【感想・ネタバレ】靖国問題のレビュー

あらすじ

21世紀に入ってもなお「問題」であり続ける〈靖国〉。「A級戦犯合祀」「政教分離」「首相参拝」などの諸点については今も多くの意見が対立し、その議論は数々の激しい「思い」を引き起こす。だがそうした「思い」に共感するだけでは、あるいは「政治的決着」を図ろうとするだけでは、問題の本質的解決にはつながらない。本書では靖国を具体的な歴史の場に置き直しながら、それが「国家」の装置としてどのような機能と役割を担ってきたのかを明らかにし、怜悧な論理と哲学的思考によって解決の地平を示す。決定的論考。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

靖国問題について、①遺族感情 ②戦争責任 ③宗教性 ④文化 ⑤追悼施設 という観点からわかりやすく説明されている。
今までは、靖国神社を、国のために戦ってくれた人への感謝を表する場だと考えていたのだけれども、それ自体に政治的な問題があるのだとわかりはっとさせられた。追悼施設ではなく、顕彰施設。人々の悲しみを喜びへと変えてしまったこと。個々人が靖国に賛成するか否かという問題ではなく、この神社はいまだに天皇主義が色濃く残った場なのだ。それをよすがとする者もいれば拒否反応を示す者がいるのも納得できる。
戦後処理がもともと曖昧に終わってきた日本では、この問題が収束することはないのだろう。しかし、多くの政治的問題を孕むことは明らかに理解することができた。
公式参拝を正当化するのは無理だ。

靖国神社は政治性がありすぎて、純粋に平和を願って参拝するのにはなんだが気後れしてしまう。
第二の靖国とならない、追悼施設をつくってほしい。でも無理なんだろうな。

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2017年12月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

靖国「問題」を宗教、外交、政治、文化などの観点からそれがなぜ問題なのか?を論じているのですが、15年戦争以前の台湾征伐、朝鮮の暴徒制圧の際に犠牲になった人が合祀されていることが問題だとする指摘は初めて認識し、なるほどと思います。そういう背景もありながら、中国韓国がA級戦犯のみを合祀から外すことを要求しているのは、著者が指摘しているように、両国がこれだけで収めようとする政治的メッセージだとも思います。靖国の存在そのものが、両国、台湾などにとって「日本帝国主義の象徴」だということを改めて痛感しました。そして新たな追悼施設の建設により解決するという案についてもそれが「平和のために死んだ」という顕彰施設である限り第2の靖国になるだけであるという著者の指摘にも成る程と思いました。全くこの問題は出口が全く見えないのですね。

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2013年08月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 第1章。靖国神社は死者の〈追悼〉を〈顕彰〉に、〈愛する人を失った悲しみ〉を〈愛する人を天皇に捧げた喜び〉にすり替える装置である。
 第2章。「A級戦犯」分祀論は、近代日本の戦争の歴史をアジア・太平洋戦争の戦争責任問題のみに矮小化する。
 第3章。政教分離に立つ限り靖国神社の国家護持はありえず、靖国神社の「非宗教化」は国家神道(=神道非宗教説)の再来にほかならない。
 第4章。自国の戦没者のみを選別的に祀るのは日本の文化伝統でも何でもなく(中世・近世においては「敵」も追悼していた)、国家の政治的意思にすぎない。

 以上は論として筋が通っており、概ね首肯しうるが、第5章が決定的におかしい。非戦・平和の意思と戦争責任を明示した公的追悼施設といえども、施設の性格を決定するのはその時の「政治」であり、「第二の靖国」となる潜在的危険があるとするならば、いかに日本が「非軍事化」して戦争被害者への戦争責任を果たそうとも、「国家」単位での戦没者追悼は必ず有害であり、追悼行為は完全な個人行為に限定すべしという結論とならねばならない。しかし、著者は「政治的現実」の改変後の国家の追悼を否定していない。別の個所で、国家による戦没者顕彰が日本特殊の現象でも近代国家特有の現象でもないと明示している以上、いかに完全な平和主義国家であっても、それが国家である限り「揺り戻し」はありうると想定されなければならない。著者のそれまでの議論に忠実に従えば、原理的レベルで国家(やそれに類した集団・共同体)の追悼を否定するしかない。

 なお、「すでに法制度上は国家の機関ではなく一宗教法人にすぎない靖国神社を政治的に廃止することはできない。自由社会においては信教の自由は最重要の権利のひとつとして保障されなければならない」と述べているが、憲法の改変により天皇制が廃止されるならば、靖国神社は自壊するほかないので、「政治的に廃止する」ことは可能であることも付け加えておこう。

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2018年08月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

日ごろ話題になる「靖国問題」はどのようなものかを知るために読んでみた。
政治色が強いとされる靖国問題も、「誰のためのものか」「どうして靖国神社ができたのか」を知る必要がある中で、戦争を知らない自分は何に基づいて判断すればよいかわからなかった。
また、首相が参拝することによる他国の批判がなぜ生ずるのかもわからなかった。
「国への批判を避けるため」に作られた靖国神社に参拝するのは、日本国民として戦死者に対する道徳的な行動の面があるのだろう。一方で、他国の人にとって自国民を大勢殺した首謀者が奉られている神社への参拝は冒涜に感じるのは理解できる。また、戦争の正当化がされることもまま理解できる。

結局、魂はどこかに宿るって考えが僕にはないからしっくり理解できないのだろうな。墓参りとか、行ったことないし。

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2011年10月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 靖国神社がどのような面で問題になっているのかを論じた本。

 この問題について、詳しい背景は省略するが、靖国神社が戦死者を顕彰することで国民を戦争に向かわせる”超”宗教的な存在であったこと、A級戦犯の「分祀」について不可という見解は古来の神道ではそうはなっていないこと、といった点は勉強になった。

 ただ、結論が
「一、政教分離を徹底することによって、「国家機関」としての靖国神社を名実ともに廃止すること。首相や天皇の参拝など国家と神社の癒着を完全に絶つこと。

一、靖国神社の信教の自由を保障するのは当然であるが、合祀取り下げを求める内外の遺族の要求には靖国神社が応じること。それぞれの仕方で追悼したいという遺族の権利を、自らの信教の自由の名のもとに侵害することは許されない。

一、近代日本のすべての対外戦争を正戦であったと考える特異な歴史観(遊就館の展示がそれを表現している)は、自由な言論によって克服されるべきである。

一、「第二の靖国」の出現を防ぐためには、憲法の「不戦の誓い」を担保する脱軍事化に向けた普段の努力が必要である」
というものなのは、平々凡々の領域を出ていないように思った。頷ける点はいくつかあるけど…

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2011年06月18日

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