【感想・ネタバレ】東京の下層社会のレビュー

あらすじ

スラムの惨状、もらい子殺し、娼妓に対する搾取、女工の凄惨な労働と虐待……。駆け足の近代化と富国強兵を国是とする日本の近代は、社会経済的な弱者―極貧階層を生み出した。張りぼての繁栄の陰で、「落伍者」「怠け者」として切り捨てられた都市の下層民の実態を探り、日本人の弱者への認識の未熟さと社会観の歪みを焙り出す。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

スラムの生活については、まぁそんなに驚くことはなかったけど、女工や花街の生活の悲惨さは、中々現代のイメージからは想像に難いだろうな。

教科書では、工場制手工業はポジティブな意味合いで表現されていたと思うが、そこに江戸時代までの家長制度が持ち込まれ、それこそ悲惨な状況に陥っていたとは知らなかった。

明治から昭和初期の下層民の生活について知るにはいい本。また読み返したい。

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2013年08月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

明治維新は我が国において「革命的」なできごととしてしばしば喧伝される。大局的には欧米列強に比肩する歴史的転換点であろう。この歴史的事実が放つ光が大きければ大きいほど、まばゆい光に隠されて見えなくなることも多いのではないだろうか。

『東京の下層社会』はタイトル通り、革命的なできごとが放つ光に隠されて、あまり語る者の多くない場所を手燭の光を灯すようにしてかき集めた当時の社会ルポである。この分野の記録はそう多くないだけに、記録的価値は高い。著者は先人の手になる記録を参照しながら検証を進めているが、その記録が貧民窟(スラム)に暮らす人々に紛れ、実体験をもとに描かれたものだけに今読んでも臨場感はいや増すのである。歴史は一般に勝者、権力者の視点で書かれ、いわば勝ち組にスポットが当てられる。そうした人たちは実際にはごく一握りの人々であり、しかし、歴史はその陰に数多存在する市井の人々が積み重ねてきたものであろう。

日陰に隠れ、闇に紛れ、ともすればそのまま葬り去られる運命にもある世界を描き出した価値は高い。貧民窟の剣呑な人びとのなかにわが身を投じて、そこで暮らした体験によって記録を残すという仕事がどれほど大変で生半可な者にはできないことであるかは、本書を読めばたちどころにわかる。権力者が、社会の底辺にうごめいているこれらの「貧民」を一顧だにしないのは、明治の世も令和の世もあまり変わり映えがしないが、一時の景気がしぼんで以降、日本も再び貧困層が増えたとしばしば聞こえてくるようになった。一方でその状況が改善したという話は全く聞こえない。すなわち明治の世の無策っぷりが、今もまた繰り返されていることの証左ではなかろうか。

後半で描かれるのは当時の女工や娼婦であり、当時の女性が生きていくことがどれほど大変なことであったかが偲ばれる。さすがに当時と比較すれば、現代は男女格差は大幅に縮小されたであろうが、それは縮小であり「平等」を意味しない。「女性活躍」をスローガンのように叫び、結果として女性閣僚などといいながら都合よく使い捨てていた者がつい先ごろまで権力者だったことを思えば、男女平等というユートピアは夢の彼方に霞んでしまう。「女性活躍」も今はたちの悪いプロパガンダにしか聞こえない。

このような今を生きる我々にとって、本書は権力者によって貧民層に蹴落とされたときの生きるバイブルとなるだろう。権力者を目指す一部の者はともかく、権力者になどなり得ない大多数の人たちにとって、『東京の下層社会』はまさに生きた教科書であり、サバイバル・マニュアルである。

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2020年09月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

貧困層の生活について。後半は娼婦について書かれていて幅広いジャンルの貧困について書かれているかと思い込んでいたため割とざっくりしているんだなと思った。

昔はありとあらゆる概念がなく余裕もないので貧困層を切り捨てるのは当たり前のことなんだと思った。倫理観もなく人権もない。ようやく栄養学というものを知った程度。この状態から今の現代社会までよく進めたと感心するし少しづつ世の中は良くなっているんだなと思った。

他の国ではある残飯屋も昔日本にあったのは納得できる。ただ近親相姦や強姦が日常茶飯事で親子が夫婦になることもあったと書いてあるけど本来の夫婦は離婚するということなのか戸籍がめちゃくちゃなのかそもそもないのかよく分からなかった。深掘りして知りたいところだった。

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2022年05月25日

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